ブックキュレーター哲学読書室
現代イギリスの文化と不平等を明視する
先進諸国が多文化社会へと変容していくなか、文化と不平等の関係を扱う文化研究への関心は高まる一方です。イギリスの21世紀の研究動向を中心に、最新の文化研究から見える社会のいまをご紹介いたします。【選者:相澤真一(あいざわ・しんいち:1979-:中京大学現代社会学部准教授)、磯直樹(いそ・なおき:1979-:日本学術振興会特別研究員)】
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文化・階級・卓越化
トニー・ベネット(著) , 知念 渉(訳) , 相澤 真一(訳) , マイク・サヴィジ(著) , エリザベス・シルヴァ(著) , アラン・ワード(著) , モデスト・ガヨ=カル(著) , デイヴィッド・ライト(著) , 磯 直樹(訳) , 香川 めい(訳) , 森田 次朗(訳)
「社会学の古典」である『ディスタンクシオン』を批判的に継承し、社会調査で現代イギリス社会を実証的に分析した書籍です。文化的な嗜好・趣味に関する包括的な調査をおこなっているだけでなく、グローバリゼーションや社会階級の変化も視野に入れており、現代イギリス社会を捉える貴重なデータと示唆にあふれています。
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いきなり『文化・階級・卓越化』を手に取るのは(いろいろな意味で)「重い」と思いますので、現代イギリス社会に関心のある方にお薦めなのがこちらです。「40年後の『ハマータウンの野郎ども』」として、現在のイギリス社会で排除されている気分に陥っている白人労働者階級の状況を彼らの声とともにあばいています。
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文化資本 クリエイティブ・ブリテンの盛衰
ロバート・ヒューイソン(著) , 小林 真理(訳)
『文化・階級・卓越化』の調査がおこなわれたのとほぼ同時期、ブレア政権期からロンドンオリンピックまでの頃、イギリスでは「クリエイティブ」な文化政策がおこなわれていました。本書は、社会インフラとしての「文化資本」に着目して、このような施策が結果的に文化の不平等を維持してしまうことを指摘しています。
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近現代イギリス移民の歴史 寛容と排除に揺れた二〇〇年の歩み
パニコス・パナイー(著) , 浜井 祐三子(訳) , 溝上 宏美(訳)
現代イギリスにおける移民、エスニシティ、多文化主義、レイシズムをめぐる社会的・文化的問題は、近年になって生じた問題であるかのように語られることが多いです。しかしながら、1945年を転換点としつつ、19世紀の移民の歴史にまでさかのぼって学ぶ必要があることを本書は教えてくれます。
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『ディスタンクシオン』や『文化・階級・卓越化』では、関係性を図示できる統計手法として、フランスで発展した対応分析が重視されています。専門的な内容ではありますが、本書はこの分析手法をわかりやすく紹介した入門書です。日本語版はフリーソフトRで検算する方法も解説されていて、まさに基礎から学べる一冊です。
ブックキュレーター
哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
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