ミステリアスな男を愛してしまう女性必読！なぜか愛される孤独な男の哲学

宝くじに当たった河野は、会社を辞めて海が美しい敦賀でひっそりと暮らします。「ファンタジー」という役立たずの奇妙な神様や、河野に想いを寄せる2人の女性など、それぞれの登場人物が孤独を抱えながら河野と交流してきます。社会の最前線から離れた場所を舞台に、じっくりと孤独について考えさせられる長編です。

女性の心を掴むのがとても上手いけど、最後にはいつも振られてしまうニシノユキヒコ。彼は女性を本当に愛することができず、女性たちは彼の持つその空疎感に敏感です。それでも「ニシノユキヒコを愛することはとても楽しいことよ」と言わせるニシノユキヒコの魅力を、ふわっとした美しい文体で表現しています。

言わずと知れた太宰治の自伝であり、遺書でもある傑作です。無邪気さを装って周囲をあざむいた少年時代から始まり、次々と女性と関係を持って自殺未遂を繰り返しながら、薬物におぼれていく救いようのない男の半生が描かれています。堕落しながら自意識と戦い続けた男の心からの叫びは、時代を超えて人々の心に響きます。

なぜか女性に愛される著者はひとを愛することができません。愛に悩み抜いた結果、愛する感情をまったくもたないことを悟った著者の視点から描いた愛する者、愛される者の構造の考察が鋭いエッセイ集です。世間は愛を絶対的に正としすぎ、愛が生み出す軋轢や不具合に目を瞑り過ぎているのではないかと感じさせられます。

出版社に勤務する主人公は3人の女性と同時に関係を持ちながら、その中の誰とも深いつながりを持とうとしません。読み進めていくうちに、主人公は愛の概念が異なるのだということがわかってきます。主人公の死生観にもつながる愛の形は大きく深く、女性たちの求める愛の形は独占欲なのではないかと価値観が覆されます。