多作で有名な作家・五木寛之。埋もれがちな若き日の秀作群

ジャズの魅力満載の一冊です。ある日、黒人ピアニストのジョニーと出会ったジュンイチは、演奏を通じてジャズの理解を深めてゆきます。ベトナム戦争から帰国して再会したジョニーの変わりはてた様子にジュンイチは驚き・・・。人間の奥深くに問いかける心の葛藤や戦争の悲惨さを表現した物語で、芸術の奥深さに触れることができる一冊です。

ソ連とフィンランドの間に広がるカレリア地方が舞台となった、北欧の魅力に触れることができる一冊です。ヘルシンキの街で冬木が出会ったのは、アイノという名の娘でした。自社の再起をかけて工芸品のデザインをコピーするために訪れたはずが、いつの間にかアイノに惹かれてゆく冬木。異国での甘く切ない恋物語が描かれています。

現代社会で忙しく働く人々が抱く哀愁や虚無感を恋物語で綴った、五木寛之らしさが光る小説です。大手レコード会社部長の井沢信介とテレビ局のインタビュアー・直子、彼女の妹・亜由美は、交通事故がきっかけで出会います。巧みな時代描写によって恋愛感情のもつれが描かれていて、自分の生き方を見つめ直したくなるような一冊です。

上下巻からなるスケールの大きい、国際色豊かな純愛小説です。時代設定は明治、ロシア戦争直前から始まる物語で、芸妓の染乃とロシア人士官イワーノフの切なくて悲しい純愛が描かれています。人間の卑劣さや気高さを織り込んだ読み応えのある小説で、著者の根底にあるデラシネ思想を読み取ることができるでしょう。

五木寛之の人柄に触れることができる大ベストセラーとなったエッセイ集です。五木文学全体に流れるデラシネ思想や虚無感、にじみ出る情念のようなものがどこから湧き出てくるのかを、このエッセイを読むことでわかるようになるかもしれません。『あの若い時代にもどってみたいなどとは、二度と思わない』など、衝撃的な言葉が並びます。