キラキラなんて程遠い。女のダークな心を描いた柚木麻子の黒い小説

女子大生の嫉妬がぶつかり合う・・・だけど、色恋沙汰の話ではありません。文学少女でウブな真実子と、14歳で作家デビューしたすかした栞子の出会いが物語の始まり。文学ファンと気取った先輩、という立場から、真実子の才能が開花することで栞子は焦り出し・・・。最後の最後でタイトルの意味もストンと腑に落ちる、成長物語です。

ナイルパーチとは、少数で生態系を壊す凶暴な白身魚のこと。だらしないブログを書く主婦の翔子と、ブログの読者で商社でバリバリ働く栄利子。2人は意気投合しますが、翔子はしだいに栄利子の凶暴性に嫌気が差し、突き放します。一見うまくやっているように見える大人も、実はトラウマや弱さばかりだと思い知らされる一冊です。

それぞれ魅力的な5人の女性が、金持ちでイケメン、しかし自意識が高く主体性がないダメ男「伊藤くん」に振り回される――映画化・ドラマ化した短編連作集です。夢中になるほどの相手でもないはずなのにその人を振り向かせたい、その一心で大胆になっていく女性心理は必見です。

昨日まで仲良しのはずだったのに突然冷たくされる。若い時に経験することも多いですが、その気持ちの根底には自分と違う個性への猛烈な憧れと、裏返しの強い敵意があります。著者のデビュー作「フォーゲットミー、ノットブルー」から始まる連作ですが、デビュー作とは思えないほどの緻密な感情描写はさすがです。

見た目は太って美しくないのに結婚詐欺の末に男性3人を殺害したとされる容疑者と、週刊誌の女性記者の面会から始まる物語です。欲望に従い美食で癒し高めることを容疑者に勧められた記者は、仕事として実践するうちに彼女の考えに翻弄されていきます。どろりと溶け出すバターのような欲望と感情が渦巻く、濃厚な一冊です。