無骨でまっすぐな目線に励まされる！はじめての西加奈子の小説

何よりもまずオススメしたいのがこちらの短編集。どの作品もテンポがよく、ところどころでくすりと笑ってしまうようなユーモアと、人間ののびやかな生命力を感じられる一冊です。特に表題作は、西加奈子作品のエッセンスが濃縮していてグッときます。

主人公は、自分が「ぶす」であることを成長とともに周囲に知らされていく「きりこ」。自由にのびのびとふるまっていた幼少期から一転して心を閉じ、やがて立ち上がっていくきりこの姿が、飼い猫ラムセス2世の視点で語られます。自分であることを徹底的に大切にするきりこの姿に、胸を打たれる人も多いはずです。

さまざまな環境で生きる「女の子」たちが、「おじさん」の何気ない一言で救われる8つの物語を収録した短編集です。思い悩むときに感じる孤独や、さびしさ、誰にもいえない心の中の冷たい場所を、さまざまな言葉が照らしてくれます。ページをめくると、あなたを救う「魔法の言葉」に出会えるかもしれません。

見た目はぱっとせず人に騙されやすいけど純粋で温かい人柄の肉子ちゃんと、その娘キクりん。正反対の親子による、他の誰でもない「自分」として生きることへの圧倒的な肯定感を感じさせる長編小説です。テンポのよいユーモアあふれる会話にも注目してください。

世界情勢や災害に巻き込まれて苦しむ人がいる一方で、幸せでいる自分への罪悪感を感じながら生きる主人公が、自分として生きることについて向き合う一冊です。さまざまな矛盾、葛藤を抱え自問自答し、周囲の人々との触れ合いながら、答えを見いだしていく主人公にぜひ寄り添って読んでみてください。