ブックキュレーター作家 高嶋哲夫
「理系作家」の秘密資料~日本のこれからを知る基礎となる5冊
ひとつの小説を書くのに、僕の場合、かなりの冊数を参考文献とする。最近は語りたいことばかり増えてしまい、読むのは作品の資料となるものばかりだ。そこで、それらの中でも「これは」というものを選んでみた。いずれも問題を分かりやすく知る、または深く知るのに最適の一冊とおすすめできる。
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『電王』では、名人とAIの将棋対戦を題材に「天才の苦悩」を描きたかった。本書はAIの歴史的変遷を分かりやすく、AIにできること、できないこと、将来できそうなことを概観できる。いずれ世の中は今よりも目に見えない才能が重視される。たとえば「優しさ」が才能として認められる。そんな世界であってほしい。
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『沖縄コンフィデンシャル』という、軍用地を巡る警察ミステリーのシリーズを書くために読んだ一冊。沖縄を巡る日米関係史を元アメリカ海兵隊の文官が語る視点が面白い。近世以降の歴史、太平洋戦争、そして戦後の占領。その地理的特性から沖縄は何度も日本の犠牲になってきた。そのことを一人でも多くの人に知ってほしい。
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NY同時多発テロを象徴として、世界中をテロリズムの恐怖が襲っている。テロには私たちも一定の覚悟が必要だ。『官邸襲撃』は傭兵集団が東京の首相官邸を占拠する物語。対抗するのは一人の女性SP。つまり警官だ。本書では、我が国でテロが起きる可能性は充分にあるし、警察組織がどのように対策を立てているかが分かる。
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核軍縮が叫ばれる中、現実として日本を取り巻く国が核保有している。個人的には核保有反対だが、のんびりしていられないのは事実だ。本書は日本が核保有するのに越えなければならないハードルの高さ、リスクの大きさを教えてくれる。『日本核武装』ではその問題を考えたかった。小川さんには作品の解説もしていただいた。
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水害の世紀 日本列島で何が起こっているのか
森野 美徳(監修) , 日経コンストラクション(編)
少し古い本だが、世界規模で起こる水害を記録している。2018年は西日本豪雨の発生で、故郷・岡山で甚大な浸水被害が出た。『東京大洪水』および近作『ハリケーン』では、災害発生の仕組みを紐解きたかった。単純だが、水害に限らず自然災害で一番大切なのはとにかく「逃げる」ことだ。
ブックキュレーター
作家 高嶋哲夫1949年岡山県玉野市生まれ。慶應義塾大学工学部卒。同大学院修士課程を経て、日本原子力研究所研究員となる。1979年、日本原子力学会技術賞受賞。カリフォルニア大学に留学し、帰国後作家に転身。『帰国』で第24回北日本文学賞、『メルトダウン』で第1回小説現代推理新人賞、『イントゥルーダー』で第16回サントリーミステリー大賞・読者賞をダブル受賞。2007年、松竹映画・米ユニバーサルピクチャーズ初の共同制作で『ミッドナイトイーグル』が映画化。2010年『風をつかまえて』が青少年読書感想文全国コンクール課題図書(高等学校の部)に選定。2017年『福島第二原発の奇跡』でエネルギーフォーラム賞優秀賞を受賞。
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