ブックキュレーター哲学読書室
『ドローンの哲学』からさらに思考を広げるために
『ドローンの哲学』は単に軍用ドローンについての考察には尽きない。AI、ビッグ・データ、自律型ロボット等のホットなテーマばかりか、「身体」と「技術」の関わりをめぐる新たな生権力論の可能性ももつだろう。そこから思考を広げるためのいくつかの道筋を。【選者:渡名喜庸哲(となき・ようてつ:1980-:慶應義塾大学准教授)】
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ドローンの哲学 遠隔テクノロジーと〈無人化〉する戦争
グレゴワール・シャマユー(著) , 渡名喜 庸哲(訳)
「軍用ドローン」の登場は「ヴァーチャル戦争」や「監視社会」の新たな一頁にはとどまらない。「遠隔テクノロジー」によって、「戦争」はもとより、「倫理」「心理」「法」「権力」に関する従来の考え方や「意味」の変容を追跡する本書は、「目の前にある技術」についての哲学的な考察への糸口になるはずだ。
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時代おくれの人間 新装版 上 第二次産業革命時代における人間の魂
ギュンター・アンダース(著) , 青木 隆嘉(訳)
広島訪問記(『橋の上の男』)や原爆パイロットのC・イーザリーとの書簡(『ヒロシマわが罪と罰』)の著者アンダースは、距離が遠くなるほど良心・憎悪の感情が低下する事態に気づいていただけでない。そのとき「人間」が「時代おくれ」に、「不要」になることを見抜いていた。「無人化」を考察するための哲学的古典。
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臨床医学の誕生
ミシェル・フーコー(著) , 神谷 美恵子(訳)
ドローンと「監視社会」というテーマからは『監獄の誕生』が思いつくが、ただし、シャマユーは前著『卑しい体』(邦訳はまもなく明石書店より公刊)以来、フーコー型の生権力論を乗り越えようとする試みを一貫させている。「身体」「技術」「権力」の関係を新たに考察するためにこそ、もう一度フーコーに戻ることも必要だろう。
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カンギレム 生を問う哲学者の全貌
ドミニック・ルクール(著) , 沢崎 壮宏(訳) , 竹中 利彦(訳) , 三宅 岳史(訳)
フランスの科学哲学者カンギレムはシャマユーの師ルクールのそのまた師にあたり、シャマユーの知的系譜としてはこの路線が一番重要だろう。ルクールは近年の「ポスト・ヒューマン」をめぐるフランスでの哲学的議論の第一人者だが、日本ではあまり紹介されない。同じクセジュ文庫の『科学哲学』とともに読まれるべきだろう。
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テレビのエコーグラフィー デリダ〈哲学〉を語る
ジャック・デリダ(著) , ベルナール・スティグレール(著) , 原 宏之(訳)
ドローンがまさに示しているように、遠隔テクノロジーによって、「幽霊」は仮想世界から「現実」世界に現れることが可能になったのではないか。本書でスティグレールとともに語られるデリダの幽霊論(あるいは幽霊存在論)は、遠隔テクノロジーの問題を哲学的に考える一つのヒントになるだろう。
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哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
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