ブックキュレーターコラムニスト 泉麻人
散歩好きのSさんに贈る一冊
東京散歩の楽しさをググッと豊かにするような本を選んでみました。5冊に絞りこむのはけっこう難しい作業でしたが、まぁいまはこんな感じ。そう、東京23区外──多摩地区をじっくり歩いた当方の新刊もよろしく。
※本ブックツリーの内容は、執筆時点(2018年11月7日)の情報に基づいております。
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街歩きの元祖といえば、銀座。銀ぶら、なんて言葉は大正時代に生まれたもので、なんでも言い出しっぺは慶応の学生と聞く。これは銀座八丁をブロック分けして、気ままに路地歩きをするようなリズムで渋古い店と文人、芸人・・・にまつわる逸話が紹介される。筆者と同世代なので「ぎんざNOW」のコアな話なども楽しい。
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新宿のヤミ市と色街、そして歌舞伎町の歓楽街誕生の経緯がていねいにルポされている。個人的にとりわけ興味深かったのは、昭和40年代頃の娯楽映画によく出てくる、回転式展望レストランがウリのラシントン・パレスや“L”の字看板を掲げたクラブ・リーの歴史がよくわかったこと。
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多摩を舞台にした小説というと大岡昇平の『武蔵野夫人』が有名だが、『たまらん坂』をはじめとする黒井千次の武蔵野短編集は、執筆された80年代初めの生活風景がよく取りこまれている。多摩蘭坂の他、お鷹の道、浅(せん)間(げん)山、高幡不動・・・僕が『東京23区外さんぽ』で訪れた土地も多々登場する。
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大正時代初めに書かれた「日和下駄」は、いま読んでも“東京散歩の教科書”として充分通用する。こんな時代から、荷風は表からそれて裏道を好んでいたのだ、と感心する。夕暮れの浅草から乗合自動車(バス)に乗って玉の井の色街へ行く経路を細かく描写した「寺じまの記」は何度読んでもグッとくる。
ブックキュレーター
コラムニスト 泉麻人1956年東京生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、編集者を経てコラムニストに。街歩きの達人として知られ、東京に関する著作を多く著す。特に東京23区は、『東京23区物語』(1985年)、『新・東京23区物語』(2001年)、『大東京23区散歩』(2014年)と長年にわたりテーマとする、著者の真骨頂といえる。著書、近著に『東京いつもの喫茶店』(平凡社)、『東京いい道、しぶい道』(中公新書ラクレ)、『大東京のらりくらりバス遊覧』(東京新聞)など。昆虫、バス、昭和歌謡、喫茶店など多彩なテーマで多くの著作を著す。『東京23区外さんぽ』では、自然あふれる多摩地区の取材中、昆虫採集に興じた場面も。
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