ブックキュレーターみすず書房 営業部 河波雄大
戦争の苦しみから生まれた、喪失を生き抜くための言葉
強制収容所、軍の野営地、亡命先など、さまざまな「戦争」が生む苦しみの場において、やむにやまれず書き記された言葉は、暴力や強制からの「自由」を言葉によって獲得しようという強い気持ちが刻まれています。そうして生まれた本には、国や時代の違いを超えて、書き手の死後も私たちを勇気づけ、ときには慰め再生させる力を持っています。
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ウィーンの心理学者フランクルは、ナチスドイツの強制収容所を自ら体験し、生き抜いた記録を『夜と霧』に記しました。極限状態のなかでフランクルは「精神」が肉体を支えていることを目の当たりにします。そして生涯にわたり、「生の意味」を自覚して行動することの重要性を説きました。深い苦しみと向き合う力となる一冊。
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石原吉郎詩文集
石原 吉郎(著)
戦後、シベリア収容所で苛酷な労働と飢餓を体験した詩人、石原吉郎の代表作を収めた作品集。冒頭に「詩の定義」という小文があり、詩は沈黙を語るためのことば、「沈黙するための」ことばであると書かれています。誰にも語りたくない体験をしたとき、言葉は何の役に立つのか。その一つの答えがここに記されています。
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ハイファに戻って
G.カナファーニー(著) , G.カナファーニー(著) , 奴田原 睦明(訳) , 黒田 寿郎(訳)
パレスチナ生まれの作家、ガッサーン・カナファーニーの短編選集。12歳で虐殺事件から逃れるため難民となってシリアに渡り、生涯にわたってパレスチナ解放のために書き続けた著者は、36歳の若さで爆殺されました。郷土を失い、難民として生きるというのはどんな気持ちなのか。忘れられないリアリティを読者に刻む一冊。
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仏の教えビーイング・ピース ほほえみが人を生かす
ティク・ナット・ハン(著) , 棚橋 一晃(訳)
「マインドフルネス」の提唱者として知られる禅僧ティク・ナット・ハンがアメリカ人に向けて語った言葉の筆記録。独裁政権によって祖国ベトナムを追われ、亡命先のフランスで長く暮らした著者は「行動する仏教」を説き、被災者や難民の支援に長年取り組んできました。特定の宗派を超えた平和への行動指針が記された一冊。
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ローマの哲人皇帝として知られるマルクス・アウレーリウスが度重なる戦争の遠征中に、断片的に書きとめていた日記。読書と瞑想がなにより好きだった皇帝は、疫病、災害、侵略などの対応に忙殺され、また幼い子をつぎつぎに喪うといった悲しみのなかでも「書く」ことで自分を律していた。神谷美恵子の簡潔な訳文も魅力です。
ブックキュレーター
みすず書房 営業部 河波雄大1981年福岡生まれ。みすず書房営業部。大学卒業後、製紙メーカー勤務を経て、出版社で営業を10年続けています。好きな本のジャンルはエッセイ、ノンフィクション、思想哲学書など。良書とみなさんの心を繋ぐ送電線としての役目を果たせるようにと願いつつ、日々面白い本に痺れながら流通・宣伝業務に当たっています。座右の書は自社本ですが、ウィリアム・マッカスキル『〈効果的な利他主義〉宣言!』。
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