橋本治とは何者だったのか？ひと言では語れない偉大な作家に迫るための本

小説家・橋本治のデビュー作であり代表作の一つです。女子高生・榊原玲奈の日常を、何とも男前（!?）な一人称で描いた青春小説。女子の性欲が赤裸々に語られます。著者にはどうしてこんなに人の心理が明晰に見えているのかと、その洞察力の鋭さに驚かされることでしょう。はじめて橋本小説を手に取るのなら、間違いなくこれです。

教科書でおなじみの「枕草子」。著者はこれを『春って曙よ！』で始まる桃尻娘風のポップな語り口で現代語訳しました。読み進めるうちに、清少納言が現代に生きていたら本当にこんな人だったのかもしれない、と信じてしまうほどの説得力があります。古典文学は近づき難いものだというイメージが、完全に覆されるはずです。

作家になる前の保坂和志が企画した橋本治による恋愛講座。氏の語り口はべらんめえ調でありながら、繊細に語り進められていきます。高校生の時に好きになった同級生の少年とのあまりに切ないエピソードが目頭を熱くします。橋本氏自身、語りながら泣き出したり、一方でつねにクールだったり、彼の特異な魅力の一端を垣間見ることができる一冊です。

埴輪からオリンピックのデザインまで、独自の審美眼によって編纂された日本美術史全7巻。視覚イメージによって日本史を書く、という壮大な意図があります。母校・東京大学の駒場祭のポスターで一躍注目された橋本治は元イラストレーター。独特の文体の秘密は、彼がまずビジュアルの人であるという点に拠るのかもしれません。

『キネマ旬報』に連載された架空の映画評です。こんな映画が製作されたらいいなという希望を、監督、出演者などはすべて実名のまま、未来完了で書いたのが本書。ゴジラ対金正日、タランティーノが描く「忠臣蔵」など、天才的創意が爆発しています。橋本治が二つのものをしかるべく繋ぐ、天才だということがわかる一冊です。