カルト宗教のなかで生きる子どもたちを描いた物語とルポルタージュ

両親とともに宗教団体のコミューン「カルト村」で少女期を過ごした女性によるエッセイコミックです。淡々と描かれるカルト村での日々は、かわいらしい絵柄とは裏腹に未知の衝撃に満ちています。外界から遮断され、なかなか明らかにされなかったカルト村の実態や、そこで暮らす人々の生活を垣間見ることができる貴重なルポルタージュです。

カルトの狂信的信者の親に苦しめられた過去を持つ女性は、脱出する勇気をくれた少年を想って生きていました。「月が2つある世界」に迷い込んだ女性は、どんなことをしても再びその少年に会うことを誓いますが・・・。愛する人と巡り会うための長い物語は、カルトに巻き込まれ傷ついた魂の救済への道のりでもあります。

母子家庭で育った主人公は存在感のない少年でしたが、小学5年生のクラス替えで初めてできた友人のおかげで、彼の世界は彩り豊かなものになります。ところが母親が占いや宗教に傾倒しはじめ、そのせいで転校することに・・・。孤独で意志のなかった少年が、周囲の人々のやさしさに支えられ成長していく姿に心が温まります。

呪術研究の権威である学者が、家族で訪れたアフリカで娘を行方不明にさせてしまいます。そのショックから怪しい新興宗教に走る妻。さらに数年後、再び訪れたアフリカで、娘の行方にまつわるとんでもない真相を知り・・・。カルトブームに警鐘を鳴らす民俗学の研究書としても一級品の、エンターテイメント小説です。

乳児の頃、娘の湿疹を治してくれた「金星のめぐみ」という水をきっかけに、宗教にハマっていく両親と、娘ちひろの物語です。両親に愛され、両親の信じるものを疑いなく受け入れていたちひろでしたが、成長するにつれ、外の世界を通じて周囲と自分の違いを自覚し始めます。カルト2世の問題を扱った静かな社会派小説です。