生き難さを感じている子どもに読ませたい。さらっと読了できて心温まる物語

スイスの美しい架空の村を舞台に、ハイジが悩みながら成長していく人格形成の物語。ダイジェストではなく原作を読むことで新たな発見があり、ハイジを取り巻く大人たちの再生の物語でもあることに気づかされます。『図説 アルプスの少女ハイジ』も併せて読むと、時代背景や地理がよく理解できるようになります。

夢や願いを叶えてゆく過程に矛盾や安易さを感じず、随所に巧みな工夫を凝らして描いているため、若い読者を最後までぐいぐい牽引してゆきます。昔の暮らしには便利さはなくとも想像力の育みやすさがあり、そういう人間らしい営みのなかでの方が「今」を生き抜く力は身につきやすいのかもしれない、と感じさせてくれる一冊です。

思春期にはさまざまな欲求や願望が急速に高まるのに、それらを満たす知恵も力も手段も足りていません。この本の登場人物たちも、自殺、不登校、援助交際など、いろいろな問題を抱えています。読者は等身大の主人公を応援したり、他者とのやり取りを体感することで解決の糸口を模索するようになるでしょう。読後感が爽快な現代児童文学の傑作です。

16才のアウレリアは母親を亡くし、再婚した父親とはぎくしゃくして家に居場所がありません。息苦しさを感じた彼女は、ふいにポーランドの片田舎でひとり暮らしをしている祖母の家を訪ねます。祖母の温かい人柄や質素な暮らしぶりが生き生きと描写され、アウレリアだけでなく読者をもやさしく迎え入れてくれるでしょう。

不登校になった中学生のまいは、慌ただしい都会の家を離れて厳格な祖母の家で魔女修行をすることになりました。自然豊かな田舎で昔ながらの規則正しい生活を送るうちに、まいの心にも変化が表れます。クライマックスにはあっと驚く小さな仕掛けもあって、イギリス風のウィットを感じる仕上がりになっています。