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日常のなかの叙情を求めて。はじめて触れるペーター・ハントケの文学
20世紀後半から21世紀初頭の中央ヨーロッパ文学を代表する作家の1人とされ、2019年にはノーベル文学賞を受賞したペーター・ハントケ。40年以上にわたる作家活動で変わらない特徴は、日常を仔細に観察し、人の心の動きを余分な音のない静かな文体で記述すること。ここでは数多くのハントケの作品のなかから、手に取りやすいものを紹介します。
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幸せではないが、もういい
ペーター・ハントケ(原著) , 元吉 瑞枝(訳)
ハントケが作家として名を知られるようになった矢先の1971年11月、長年うつに苦しんでいた母マリアが51歳で自らの命を絶ちました。その翌年の1月から2月にかけて、母の生涯と苦悩を回顧して一気に書き上げたのがこの本です。戦中・戦後に結婚や出産、育児が重なった女性共通の厳しい運命に、胸を打たれます。
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左ききの女
ペーター・ハントケ(著) , 池田 香代子(訳)
海外長期出張から帰ってきたばかりの夫ブルーノに30歳のマリアンネが突然申し出た別居。彼女と8歳の息子シュテファンとの2人きりの静かな生活が飄々と描かれます。ハントケがベストセラー作家だった1976年に、フランクフルト近郊の保養地にこもって書き上げた作品で、2年後に自らの脚本・監督で映画化しています。
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反復
ペーター・ハントケ(原著) , 阿部 卓也(訳)
ハントケが作家として一番油の乗り切った1986年に、構想から10年をかけて完成させた半自伝的長編小説です。過去を物語ることは同じことの繰り返しではなく、自らを見いだし再出発すること。ハントケの叙情的な世界に浸りたい方にオススメします。原書の豊かな語彙を日本語に変える、並ならぬ努力のうかがえる翻訳です。
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ドン・フアン 本人が語る
ペーター・ハントケ(著) , 阿部 卓也(訳) , 宗宮 朋子(訳)
舞台はパリ近郊。5月の庭でドン・フアンが7日間にわたって、過去に知り合った世界のさまざまな女性について回想する話です。若き日にはパリに住み数多くの女性と関わったハントケが、還暦をすぎてから書き上げた女性との交流に関する省察。生々しい表現は一切なく、形而上学的とも言える独特の魅力があります。
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アランフエスの麗しき日々 夏のダイアローグ
ペーター・ハントケ(著) , 阿部 卓也(訳)
ハントケの創作活動は小説にとどまらず、舞台や映画脚本も積極的に手掛け、自らメガホンを取ることも幾度かありました。この本は、もう若いとは言えない年齢の1組の男女が、「男と女の関係」という普遍的なテーマについて語り合う対話劇。戯曲に慣れない方にも読みやすい作品で、ハントケ入門にもオススメです。
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