ブックキュレーター哲学読書室
「利他」とは何かを学ぶために
「利他」というのは正体のよく分からないことばで、人によって意味がまったく異なることがあります。例えば、ある人は非利己的な意志のうちに善性を見出し、またある人は余計なことをしてしまう要因と見なすといった具合です。「利他」とは何かについて考えるための本を5冊ご紹介します。【選者 : 秋元康隆(あきもと・やすたか : 1978- : 倫理学者)】
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自己犠牲とは何か 哲学的考察
田村 均(著)
西洋的な自己犠牲ではなく、日本独特の自己犠牲について論じられています。それはおおむね、組織を優先するために、自分自身を押し殺すことと定義されています。主に旧日本軍で起きた実際の出来事の分析を通じて、いかにして自己犠牲がなされたのかについて詳説されています。
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道徳感情はなぜ人を誤らせるのか 冤罪、虐殺、正しい心
管賀 江留郎(著)
浜松事件や二俣事件などの事例を取り上げ、冤罪事件が起きた背景について膨大な資料をもとに分析しています。特筆すべきは、筆者がそれらの冤罪事件が犯罪事件を解決させることを使命とした人々の利他心によって引き起こされていると結論づけている点です。
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「効果的利他主義」(effective altruism)とは、今世紀に入ってから生まれた、かなり新しい立場の倫理学説です。その呼びかけ人のひとりである、英国の哲学者マッカスキルによれば、「利他」というのは、人々の生活を向上させることなのです。そのためには、もっとも貧しい人たちに寄付することがもっとも「効果的」であることになると言うのです。
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脳科学、遺伝子学、生物学などの知見を踏まえて、利他的な行動とは何か、なぜそれが可能なのかについて、卑近な例を挙げて、分かりやすく論じられています。「利他」という言葉が一般的な意味と学術的な意味とでは異なる点についても指摘されています。
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意志の倫理学 カントに学ぶ善への勇気
秋元 康隆(著)
イマヌエル・カントの倫理学説は動機主義と言われます。非利己的で純粋な善意志からの行為のうちに倫理的価値を見出すためです。では善意志からの行為とはどのような行為であり、それはいかにして可能なのでしょうか。本書では、初学者を対象に、著者自身の生き方と絡めて、分かりやすい解説を試みました。
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哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
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