ブックキュレーター哲学読書室
〈触発〉の意味の広がりに触れる5冊
〈触発〉――何かと何かが出会い、双方に様々な一回的な変化が生じること――の重要性は、すでにスピノザ、ドゥルーズ関連文献で多く語られているかと思います。ここでは、この概念のイメージを広げてくれる本を、分野別にリストアップしています。【選者:浅野俊哉(あさの・としや:1962-:関東学院大学教授)】
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スピノザ 実践の哲学
G.ドゥルーズ(著) , 鈴木 雅大(訳)
とはいえ、〈触発〉概念の中心的な意義を確認するために欠かせないこの基本書を、哲学分野では最初に。手始めに、第4章の概念集の中から「変容(触発)」「力能」などの項目を中心に見ていき、その後、『スピノザと表現の問題』やドゥルーズの他の作業に進んでみてください。
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世界文学全集 2−09 フライデーあるいは太平洋の冥界
池澤 夏樹(個人編集) , トゥルニエ(著) , 榊原 晃三(訳) , ル・クレジオ(著) , 中地 義和(訳)
文学分野では、デフォーの『ロビンソン・クルーソー』を換骨奪胎して、自然・文明・他者などの概念を刷新する全く新しい地平を切り開いたこの本を。スピノザとライプニッツを念頭においた哲学小説であるとトゥルニエは語っています。〈触発〉という出来事の残酷なまでの豊かさとその“振動”を体験してみてください。
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生態学的視覚論 ヒトの知覚世界を探る
J.J.ギブソン(著) , 古崎 敬(ほか共訳)
科学の領域での〈触発〉と言えば、ユクスキュルの『生物から見た世界』が有名ですが、ここではアフォーダンスという概念を唱えたギブソンの基本書を挙げておきます。「対象との関係性のただ中で動的に変動する知覚や主体」という考えと〈触発〉概念との結びつきを考えるのに不可欠の一書です。
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バートルビー 偶然性について
ジョルジョ・アガンベン(著) , 高桑 和巳(訳)
『バートルビー』の主人公ほど、忘れ難い印象を刻む人物はなかなかいません。文学も含む広い思想分野ではこの本を。「触発すること、されること」の一歩手前を考えるための好著です。本書のアガンベンのバートルビー論は、『批評と臨床』におけるドゥルーズの分析と対比すると、興味深い論点がいくつも出てきます。
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スピノザ〈触発の思考〉
浅野 俊哉(著)
触発概念の「広がり」の確認という意味で、政治思想分野では拙著を。スピノザの触発は、超越性を排したオープンエンドな接続・分離の側面から世界を捉える見方の一つですが、この思想を、彼と縁のある様々な思想家の思想と対峙させた場合、そこにどんな「化学変化=〈触発〉」が起きるかを確認していく試みです。
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哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
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