絵本作家ヨシタケシンスケが描く、「大人向け」の味わい深いエッセイ集

トイレのいちばん汚くない場所ってドコ？いわゆる男女の仲ってナニ？誰もが一度は考えるものの、すぐに忘れてしまうようなアレコレについて真剣に考える、ヨシタケシンスケの頭の中を垣間見ることができるエッセイ集です。発想の柔軟性に驚かされるだけでなく、モヤモヤしたり、スッキリしたり。いろんな感情が味わえる一冊です。

『思わず考えちゃう』の続編で、前作が思いのほか売れたせいで出版社の方々に欲が出たことがタイトルの由来なのだそう。そういう生々しい裏事情をあけすけに語ってしまうところも、ヨシタケシンスケの魅力と言えます。「人間って欲が出るからおもしろい」をテーマに、著者ならではの視点から人々の営みを観察していきます。

本にまつわるものなら大抵なんでも揃う不思議な本屋さんの物語。絵本の要素が強いので子どもでも読めますが、大人にしか伝わらない小ネタも散りばめられていて、実にユニーク。「こんな本があったらいいな」をやさしいタッチで描きつつ、「こんな本があったらどうなるんだろう」も想像させてくれる思考実験的な一冊です。

著者の育児体験談をまとめた本・・・ですが、一般的な育児本より少しだけダークな内容。本書にしたためられているのは、きれいごと一切なしの父親の悲哀です。「子どもの寝顔で疲れが吹き飛ぶ」といった育児のあるあるネタを「アレはウソです」と切り捨てる、ちょっとブラックでとってもリアルなエッセイ集になっています。

ヨシタケシンスケが駆け出し作家のころに描いた作品集です。イラストのゆるさは今と大差ありませんが、まだ子ども向けに舵を切っていないころの作品なので哲学的な文章が多め。「今日もたくさんの社会人が役に立ったり立たなかったりするために職場にむかいます」など、大人じゃなきゃわからないビターな読み味が癖になります。