稀代のストーリーテラー！恩田陸、初期の名作選

恩田陸の記念すべきデビュー作です。「サヨコ伝説」に翻弄される高校生たちを描いた、ホラーありミステリーありの盛りだくさんなファンタジー。文化祭のくだりは、その迫力と緊張感、圧力に息苦しさを覚えるほどで強烈なインパクトがあり、ファンの間でも特に有名なシーンです。本書を読んで、恩田陸の虜になった人が続出しました。

時代や権力に振り回されながらもしっかり生きようとする、超能力のような不思議な力を持った常野一族を綴った連作集です。『遠野物語』の雰囲気があり、不思議なリアルさがある常野の世界にどっぷりと浸れます。恩田陸の代表作に挙げる人も多い傑作です。

芸能一家に生まれた若手女優と無名の女子大生。この2人の天才が舞台のオーデションで争うという演劇の世界を描いた青春群像劇で、マンガ『ガラスの仮面』へのオマージュを著者本人が語っている知る人ぞ知る一冊です。『蜜蜂と遠雷』の演劇版ともいえる内容で、こちらも間違いなく名作です。

1人にひと晩だけ貸し出されるという稀覯本（きこうぼん）『三月は深き紅の淵を』をめぐる4つの話を収めた作品集です。ミステリアスで幻想的で、つかみどころのない恩田ワールドが展開されています。のちの作品にも登場する人物がいたり、作中小説の章名と同じタイトルの物語が書かれるなど、他作品ともいろいろなつながりがある一冊です。

全寮制の学園を舞台に、不思議で不穏で不気味で独特な世界感を醸し出しているお話です。『三月は深き紅の淵を』に続くシリーズという位置づけですが、こちらから読んだ方がいいのでは？という議論も起こっています。ひと言では言い表せないジャンルレスな魅力が詰まった、恩田陸を語るうえで外せない一冊です。