「三悪」の久秀は理想の武将だった？再評価の進む松永久秀を知るための本

膨大な文献を丹念に読み解き、松永久秀の生涯を追った一冊。将軍殺害、主君殺害、大仏焼討ちの「三悪」は後世の創作であるとし、将軍殺害の真犯人、主君の死因、大仏殿の出火状況を、文献の記述を基に描いています。信長に対する久秀の謀叛が織田政権の脆弱性を露呈し、本能寺の変を導いたとする説は鳥肌モノです。

同時代史料から読み取れる松永久秀の動向を客観的に紐解く、歴史書的な一冊。松永久秀といえば、後世に創作されたエピソードとして、名器「平蜘蛛茶釜」とともに爆死した話が有名ですが、本書では茶の湯を介した堺とのつながりもわかります。図解やカラー写真も多く、松永久秀の生涯を辿る入門書としてもオススメです。

17人の著者による論文・評論集。久秀に関する各方面の専門家による最新の研究結果が掲載されていて、読み応えたっぷり。数寄者として知られる久秀ですが、天守を中心とした城郭建築の第一人者としての顔も。久秀の多聞山城の高矢倉を参考に織田信長は安土城の天守を築いたとも言われています。城マニアにもオススメできる一冊です。

タイトルの「じんかん」は「人間」、「人と人が織りなす間。つまりはこの世」を意味します。惨劇を生き延びた少年時代の久秀は、寺に保護され知識と教養を学び、三好元長の知遇を得ます。元長の「人間解放」の理想を受け継いだ久秀が、なぜ「三悪」を行うに至ったか？大胆に解釈された久秀の新たな側面に震えること必至です。

「こんなはずではなかった・・・」時流を読み誤り、あるいは味方に背かれ、苦渋の決断をした男たちの無念を描いた短編集です。松永久秀のほか、明智光秀、伊達政宗、長谷川平蔵、勝海舟が取り上げられています。松永久秀は新解釈というよりも、「現実でもそうだったのかもしれない」と同情してしまう内容です。