日本人の心に住み続ける異形の存在。「鬼」の姿に迫る本

鬼になってしまった妹を救うため、剣士となった少年・炭治郎の戦いと成長を描く大人気コミック。炭治郎の妹・禰豆子のほか、敵として物語に登場する鬼もみな、もとは人間でした。異形と化した彼らが、炭治郎の言葉で救われる場面がしばしば描かれます。敵味方を超えたやさしさが胸に迫る名作です。

妖怪といえば、京極夏彦！妖怪の大家が描き出した鬼の姿は、戦後という暗い社会に根差していました。「百鬼夜行シリーズ」のスピンオフとして発表された本作は、本編と同じく戦後の東京が舞台。「昭和の辻斬り事件」と名づけられた連続殺人事件を通して、鬼という言葉に秘められた社会の暗部に鋭く迫ります。

戦時下で道に迷い、謎の屋敷に匿われた少年の日記には、人里離れた屋敷に住む老婆や人を食うという鬼の噂など、想像を絶する奇怪な事件が記録されていました。鬼の仕業としか思えない事件を、時を超えて解決する表題作をはじめ、3編を収めたオムニバス。精緻な構成力と鬼伝説が絡み合う奇跡の一冊です。

由緒正しい正統派の鬼について知りたい方にはこちらがオススメ。古くは縄文の時代から現代に至るまで、「鬼」に隠された文化史を読み解いていきます。身近でありながら意外に知られていない鬼の発祥のほか、「鬼を祀った神社がある!?」「鬼は福をもたらす神だった!?」など、目からウロコの知識が満載です。

鬼というと無骨なイメージですが、繊細かつ耽美を旨とするBL界にも鬼を描いたものが存在します。本書は、吉原を舞台に元刀匠の美貌の男娼・紫乃と彼の初恋の人・ミハイル、そして持つ者を鬼の姿に変える妖刀が織りなす絢爛たる和風ファンタジー。世間のイメージとはかけ離れた、悲しく美しい鬼を妖艶に描き出します。