ブックキュレーター港の人 編集者 井上有紀
猫とおじさん
世の中に「猫本」は多数あれど、おじさん、いえ、ある程度年齢のいった男性による猫本は、ひときわ味が濃く、業も深いように思えてなりません。偏見でしょうか、猫への執着が格段に違うように思えます。猫に振り回される男性の姿を楽しんでいるうちに、人間の滑稽さが愛おしく思えてくるから不思議。そして猫は常に美しく気高いのです。
- 10
- お気に入り
- 1824
- 閲覧数
-
内田百間集成 9 ノラや
内田 百間(著)
表題作「ノラや」は、いい年した作家がいなくなった猫を思って泣きじゃくる姿を見せつけて、あまたの猫好きの涙を誘い、猫好きでない人を唖然とさせてきた、猫文学の金字塔的存在。思いのたけをそのまま書いて、それが文学として成立してしまうのだから、骨の髄まで作家というべきか。百閒の猫作品が満載のお得な一冊。
-
猫の本 藤田嗣治画文集
藤田 嗣治(著)
画集としては小型だけれど、この一冊のなかに、いったい何匹の猫がいるのか。猫という生きものはフジタの絵のためにいるのではないかと錯覚するほどの、表現の正確さと多彩さ。視線をこらし、目で猫を撫で回してしまわずにはにはいられない。フジタによる猫についての文章の引用も散りばめられて、繰り返し楽しめる本。
-
空とぶ猫
北村 太郎(著)
詩人・北村太郎のファンならば、生涯にわたる作品のそこここに猫がいることを知っているはず。飼い猫だけでなく通りすがりの猫たちにも、細やかな観察眼を向ける詩人。猫が好き、というより、猫が必要、という気持ちが伝わってくる。猫も人も、生きて、そして死んでゆく。詩人の眼差しは、限りなく優しい。
-
リリーと呼べばニャアと鳴いて寄ってくる、でも掴まえようとすると逃げる、それがたまらない、という重症の(あるいは、典型的な?)猫好き男、庄造と前妻と今の妻。情愛と嫉妬が入り乱れ、関西弁の会話の弾み具合も楽しく、ほとんどスラップスティック・コメディ。谷崎も楽しみながら書いたに違いないと思わされる一作。
ブックキュレーター
港の人 編集者 井上有紀鎌倉の由比ガ浜にある出版社「港の人」勤務の編集者。手がけた本は、『目であるく、かたちをきく、さわってみる。』(マーシャ・ブラウン)、『きのこ文学名作選』(飯沢耕太郎編)、『胞子文学名作選』(田中美穂編)、『世界 ポエマ・ナイヴネ』(チェスワフ・ミウォシュ)、『90度のまなざし』(合田佐和子)など。海を見ながら自転車で通勤する時間が、毎日のいちばんの贅沢です。本棚の隅っこにあるような本もふくめて、一冊一冊大切に紹介します。ホームページhttps://www.minatonohito.jp
ブックツリーとは?
ブックツリーは、本に精通したブックキュレーターが独自のテーマで集めた数千の本を、あなたの"関心・興味"や"気分"に沿って紹介するサービスです。
会員登録を行い、丸善・ジュンク堂・文教堂を含む提携書店やhontoでの購入、ほしい本・Myブックツリーに追加等を行うことで、思いがけない本が次々と提案されます。
Facebook、Twitterから人気・話題のブックツリーをチェックしませんか?
テーマ募集中!
こんなテーマでブックツリーを作ってほしいというあなたのリクエストを募集中です。あなたのリクエスト通りのブックツリーが現れるかも?
テーマ応募フォーム
こんなテーマでブックツリーを作ってほしいというあなたのリクエストを入力してください。
ご応募ありがとうございました。
このテーマにおける、あなたの”6冊目の本”は?
※投稿された内容は、このページの「みんなのコメント」に掲載されます。
コメントを入力するにはログインが必要です

