ブックキュレーター港の人 編集者 井上有紀
響きあう言葉とこころ。往復書簡の本。
やりとりしあう手紙から生まれた本には特有の魅力と存在感があります。手紙というものが、相手の心や自分の心をさぐりながら書かれるものだからかもしれません。書かれた言葉を受け取り、書かれた言葉で返す・・・相手への思いやりや敬意の上に、共通の思い出や問いかけが重ねられていくのです。読み終えた後も、交感の余韻が静かに残ります。
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言葉をもみほぐす
赤坂 憲雄(著) , 藤原 辰史(著) , 新井 卓(写真)
タイトルに「もみほぐす」とあるが、内容はマッサージというより、むしろ格闘。ふたりの穏やかな人柄を映す語調だが、内容は厳しい。震災や政治など話題そのものも厳しく、それら巨大な動きにたいする無力感を述べるふたりの言葉も厳しい。安直な道は選ばないという、ふたりの哀しみと覚悟が伝わってくる。
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急に具合が悪くなる
宮野 真生子(著) , 磯野 真穂(著)
癌をかかえた哲学者が、自分の死が遠くないことを自覚したとき、ほぼ同世代の人類学者に発案して始められた言葉のやりとり。10往復の手紙が交わされたのは約2ヵ月間、本の刊行前に哲学者はこの世を去った。生と死をともに実践しながら交わされた手紙。友情と知性とユーモア、そして、思いがけなく大きな希望が輝く本。
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旅の仲間 澁澤龍彦|堀内誠一往復書簡
澁澤 龍彦(著) , 堀内 誠一(著) , 巖谷 國士(編)
年賀状、旅先からの絵葉書や絵入りのエアメールなど89通の手紙を収録。仏文学者・澁澤と画家・堀内の親しい交流は1960年代に始まったが、ふたりは奇しくも同じ年、1987年に病によって亡くなった。行き届いた編集によって、ふたりの書簡が、それぞれの家族、編者、そして読者へと友情の美しい波紋を広げていく。
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路傍の反骨、歌の始まり 姜信子×中川五郎往復書簡
姜 信子(著) , 中川 五郎(著)
バラッド、説経祭文、石牟礼道子、ボブ・ディラン、ブラックパワーサリュート・・・話題は、時代も国境も越えてゆくけれど、ふたりの心はつねに虐げられた人々へと向かう。権力に抗う声、抗うこともできず圧殺された声に耳を傾ける。同志として励まし合う作家とフォークシンガーの言葉に力を与えられるパワフルな一冊。
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あとは切手を、一枚貼るだけ
小川 洋子(著) , 堀江 敏幸(著)
卓越したふたりの作家が手紙のやりとりを模して共作した小説。見知らぬ男女が交わした手紙を盗み読むように読み進めると、書かれた手紙と読まれた手紙のなかでいくつもの淡いイメージが溶け合い、その渦の中から悲しい物語が浮かび上がる。切手を貼るという行為はどこか儀式めいていて、手紙は暗喩に満ちている。
ブックキュレーター
港の人 編集者 井上有紀鎌倉の由比ガ浜にある出版社「港の人」勤務の編集者。手がけた本は、『目であるく、かたちをきく、さわってみる。』(マーシャ・ブラウン)、『きのこ文学名作選』(飯沢耕太郎編)、『胞子文学名作選』(田中美穂編)、『世界 ポエマ・ナイヴネ』(チェスワフ・ミウォシュ)、『90度のまなざし』(合田佐和子)など。海を見ながら自転車で通勤する時間が、毎日のいちばんの贅沢です。本棚の隅っこにあるような本もふくめて、一冊一冊大切に紹介します。ホームページhttps://www.minatonohito.jp
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