王者を支えた女性たちの光と影。天下人の妻を描いた物語

日本史上、最大の出世を遂げた人物といえば、草履取りから天下人に上り詰めた豊臣秀吉でしょう。本書は、彼の正室・おねねの栄光と苦悩の日々を描いた小説です。微笑ましい新婚時代を経て、王者の妻としての孤独に耐え、豊臣家の滅亡を見届ける。庶民的な健全さを失わず、毅然と生き抜く彼女の姿に胸を打たれます。

主人公の帰蝶は、「美濃のマムシ」こと斎藤道三の娘にして、戦国の風雲児・織田信長の正室というドラマティックな経歴を持ちますが、史実は謎に包まれています。本書は緻密な考証と大胆な創作で、彼女の生涯と「本能寺の変」の背景を解釈。覇道を突き進む夫を怖れつつも寄り添い続けた彼女の姿から、乱世を生きる女性の強さが感じられます。

徳川家康の正室・築山御前の半生を描いた小説です。今川氏の一門に連なる自負を持つ瀬名姫と、嫡男・信康に嫁いだ織田信長の娘・徳姫。嫁姑の視点から交互に、彼女たちのすれちがいや葛藤が丁寧に描かれます。かつては親しんだ2人の不和と軋轢は悲劇を引き起こし、数多の政略が錯綜する乱世へ。重い読後感を残す一冊です。

戦国時代の秘話を集めた短編漫画集です。表題作では、流れ者だった中村与助（後の豊臣秀吉）が、主君・松下之綱の許で菊乃という女性と出逢い、想いを通わせます。心ならずも離れたあと、天下人となった男の危機を彼女は密かに救います。織田信長に仕える前、豊臣秀吉が最初に迎えた妻と伝わる女性との、純朴な悲恋が幻想的に描かれます。

独立した武家政権を樹立し、御家人制で全国に影響を及ぼした源頼朝は、天下人の先駆けのような存在。本書は、彼の正室・北条政子を主人公に据えた小説です。尼将軍と評された彼女のたくましさや、盲目的な愛情に翻弄されて必死に生きる素顔が描かれます。策謀渦巻く鎌倉武士団の複雑な内情に、政子の孤独が浮かび上がります。