ブックキュレーター三牧聖子
三牧聖子の推薦する名著5冊
三牧聖子の「推薦図書」はこの5冊! ※こちらの推薦文は、クーリエ・ジャポン読者のために寄稿いただいたものを転載したものです。
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日本でも世界でもリベラルの旗色が悪い。しかしリベラリズムは歴史的に、革命や男女平等、福祉国家の発展など、様々な世界史的な発展を促してきた。市場主義や個人主義の行き過ぎへの反省から、不平等の是正を目指す社民主義や、マイノリティのエンパワーメントを目指す「寛容リベラリズム」が生み出された。この自己修復力ゆえに、リベラリズムの時代は簡単には終わらないと著者は明言する。
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第二次世界大戦から75年以上経つが、自国の犠牲者を称える「国民の物語」から各国は抜け出せず、歴史をめぐる軋轢を生んでいる。グラック教授と日中韓、インドネシア、カナダ、アメリカなど多様な出自の学生の対話は、自国中心の歴史観をどう乗り越えるかに関するヒントに富む。「私たちに変える責任があるのは過去ではない。未来なのだ」という教授の言葉通り、歴史を学ぶことは未来を切り開く行為なのだ。
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敗戦後、幣原喜重郎内閣は、敗戦の原因と実相を調査する旨を閣議決定し、戦争調査会が始動した。日本が自立的に戦争原因を追究した貴重な試みだ。様々な政治的な制約もある中、調査会は懸命に資料を収集し、戦争原因や戦争責任について率直な議論を行った。不都合な事実もすべてかき集めて公表し、後世に判断を委ねようとした戦争調査会の試みは、公文書管理のずさんさが問われる昨今、さらなる意義を帯びている。
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自分を否定して人生を送るのはつらいが、自分を丸ごと愛するのも難しい。「分人主義」は、このジレンマにこう答える。唯一無二の「本当の自分」などいない。家庭や職場、友人、SNS空間、対人関係ごとに見せる複数の顔すべてが「本当の自分」であり、1つでも愛せる「分人」がいれば生きていける、と。ヴァーチャル空間やアバターの発展を受け、今日も進化し続ける「分人主義」の不変のエッセンスを収めたベストセラー。
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陰謀論は一部のパラノイアのものではない。2020年大統領選直後の米国では、共和党支持者の6割以上が根拠のない前大統領トランプの「不正選挙」の訴えに同調した。陰謀論は現実に私たちに迫る危機なのだ。陰謀論には様々なバリエーションがあるが、その中核的な要素には共通したパターンがあると著者はいう。国内外の様々な陰謀論を読み解く本書は、陰謀論からどう自分や社会を守るのかを探る実践の書でもある。
ブックキュレーター
三牧聖子高崎経済大学経済学部准教授。アメリカ外交・平和運動研究。1981年生まれ、2012年東京大学大学院総合文化研究科より博士号取得。著書に『戦争違法化運動の時代―「危機の20年」のアメリカ国際関係思想―』など。
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