ブックキュレーター文筆業 矢内裕子
歩く山、登る山、働く山、暮らす山、祈る山――山で経験する不思議な出来事は、誰にとっても懐かしさを呼び起こす。
「山で生活することは、山の深みに届いた経験をすること」と、書いたエッセイストがいた。マタギたちの体験や言い伝え、山岳信仰の神秘など、山の持つ智慧に今こそ触れたい。
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山をよく知るマタギや村人が体験した出来事を集めた一冊。”オチ”や謎解きがあるわけではない、ただただ不思議な話には、炉端で物語を聞いているような面白さがある。「怪異譚は地域の”語り遺産”」だという著者の言葉が響く。
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岡本綺堂、太宰治、泉鏡花から柳田國男まで――文豪たちが語る山の妖異の数々は魅惑的で、やっぱり怖い。日本人にとって身近な「山」という異界を、文豪たちはどのように語ってきたのか――編者による解説も秀逸だ。
ブックキュレーター
文筆業 矢内裕子文筆家ときどき編集。東京都文京区育ち。出版社で書籍編集者として勤務後、独立。担当した本に角田光代『古本道場』、三浦しをん『三四郎はそれから門を出た』、いとうせいこう『ボタニカルライフ』など多数。著書に『落語家と楽しむ男着物』、萩尾望都さんとの共著『私の少女マンガ講義』がある。現在、橋本治さんへのインタビュー集を準備中。note:https://note.com/yanaiyuko
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