ブックキュレーター文筆業 矢内裕子
”第二次団地ブーム”到来?「団地萌え」の今を知る本から、団地の歴史、空間政治学、小説、マンガまで、団地をめぐる本は熱量が凄い。
戦後、高度経済成長期に続々と作られた全国の住宅団地。モダンなライフスタイルは「団地族」と言う呼び名まで生んだ。だが時代の変遷とともに団地は高齢化し、近年では孤独死や移民の増加など様々な問題が生まれている。その一方、リノベ団地がブームになるなど、若い世代を中心に新しい波も。団地の歴史と未来は日本の戦後を考えることでもあるだろう。
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団地のふたり
藤野 千夜(著)
50歳、独身の幼馴なじみのふたりの女性。売れないイラストレーターのなっちゃんと大学の非常勤講師のノエチはいろいろあって生まれ育った団地に戻ってきた。特別な用事がなくても一緒に過ごせるのは、団地に暮らしていればこそ。藤野千夜が描写する団地暮らしのディテールも読みどころ。団地でふたりがずっと暮らせますように。
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「団地は日本社会の顔だ」と、著者は本書でくりかえす。都会の限界集落と過疎、高齢者と外国人労働者が居住者の大半を占める団地には、住んでいない排外主義者が群がってくる――団地は日本の最先端の課題がつまった空間だからだ。多国籍化する団地の未来に光をみる、著者の姿勢に共感した。
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団地の空間政治学
原 武史(著)
高度成長期に輝いていた団地、そこはまた住民自治や政治意識が育まれた空間でもあった。著者は国内外の60あまりの団地を訪れ、埋もれていた史資料を調べていく。自身も団地に生まれ育った著者が、政治思想史の観点から団地そのものを考察する試み。
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OTOMO THE COMPLETE WORKS 8
大友 克洋(著)
”日本の幽霊屋敷=団地”では異常な数の自殺があったことが気になった――と、本書の巻末で大友は語っている。団地が持つ物語空間としての魅力を存分に使って、連続不審死事件の謎、大人ではない存在――子どもと老人の戦いを描いた本作は、団地という空間のすべてが描かれたマンガなのだ。
ブックキュレーター
文筆業 矢内裕子文筆家ときどき編集。東京都文京区育ち。出版社で書籍編集者として勤務後、独立。担当した本に角田光代『古本道場』、三浦しをん『三四郎はそれから門を出た』、いとうせいこう『ボタニカルライフ』など多数。著書に『落語家と楽しむ男着物』、萩尾望都さんとの共著『私の少女マンガ講義』がある。現在、橋本治さんへのインタビュー集を準備中。note:https://note.com/yanaiyuko
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