なぜ映画は人を惹きつけるのか？映画館や映画業界が描かれた小説

老舗の映画会社に入社した、同期6人の人生模様を描いた連作小説です。閉鎖する地方映画館で再会した彼らは、思い出の作品を鑑賞しながら各々の半生を回顧します。旧態依然とした映画業界の因習を前に、性格も動機も価値観も異なる人々が奔走する姿が胸に迫ります。悩める社会人のお仕事小説としても、質の高い良作です。

地方都市のシネコンを舞台にした連作短編集です。学生や主婦、フリーターなど、異なる部署のアルバイト視点で、クリスマス・イブの多忙な一日を描いています。世代も立場も違い、複雑な事情を抱えつつも連携する人々の心情が繊細に活写されます。フィルムからデジタルに転換する映像媒体への愛着と哀愁も感じられる一冊です。

映画館の趨勢と名画への郷愁に、家族の再生劇を重ねたハートウォーミングストーリー。大手企業を退職した女性が映画雑誌の編集部に転職し、傾きかけた会社を立て直すべく奮闘します。映画好きな彼女の父親が書くブログと、謎のブロガーとの小気味よい応酬は読み応え満点！映画と映画館を愛する人々の、人間賛歌の物語です。

銀座のミニシアターを巡る、老若男女の群像劇を描いたオムニバス短編集。ある監督の追悼上映に集まった6人の観客。監督の肉親のほか、元映画館スタッフや映画の夢を諦めた者など、想い出の作品の断片的な情景を前に、個々の回想が交錯していきます。傷心を抱えつつも人生を歩む、ほろ苦いノスタルジーに共感できる一冊です。

戦前に実在した沖縄・西表島の映画館を題材に、時代に翻弄された人々の苦難と情熱を描いた長編小説です。昭和初期の西表島には、詐欺同然に強制就労させられる炭坑夫たちがいました。緑の牢獄と言われる過酷な環境下で、必死に生き延びる彼らを支えたのは映画でした。人生の希望にもなり得る映画の素晴らしさを訴えた力作です。