正義も悪もひっくるめて人間を描く！はじめて方にオススメの柚月裕子の小説

昭和の末、広島を舞台に暴力団同士の抗争と、それに立ち向かう刑事の姿をリアリティたっぷりに描いたハードボイルド3部作。ひりつくような緊迫感、ミステリー的な趣向も凝らし、飽きさせない構成はさすが。2018年に役所広司、松坂桃李などによって映画化され、一気に知名度を上げた話題作です。

白骨死体が持っていた珍しい将棋の駒に導かれ、刑事たちが捜査する現代パートと、将棋のプロ棋士である主人公の半生を描いた過去パートが交互に描かれるミステリー。勝負師の生きざまや壮絶な戦い、真っ当な道からはみ出した者たちが紡ぎ出す男臭い物語で、松本清張の名作『砂の器』を意識して書かれたという傑作です。

過去の贖罪のため、妻とともに四国のお遍路巡りをする元刑事・神場。旅先で過去に関わった「冤罪だったかもしれない幼女誘拐事件」と類似する事件が発生し、神場は「過去」とも「現在」とも向き合い、少しずつ事件の謎を紐解いていきます。念入りに構成されたプロットと骨太で硬派な物語で魅せる、異色の警察ミステリーです。

ホテルの一室で起きた、痴情のもつれと思われる刺殺事件。状況から見て、圧倒的に不利な被告の弁護を引き受けた弁護士・佐方に、果たして勝算は・・・？一筋縄ではいかない展開と、思いもよらない仕掛けがあちこちに施されているリーガルミステリーで、人気の「佐方貞人シリーズ」第1弾です。

元弁護士で美貌の女探偵・涼子と、その助手である貴山の活躍を描いた短編集。柚月裕子の他作品と比べるとテイストは軽く、爽快・痛快な短編が並ぶ読みやすいシリーズで、読後感もスッキリ。2023年には天海祐希、松下洸平のコンビでドラマ化もされた人気作です。読めば著者の違った一面を垣間見ることができるでしょう。