ジャンル別にオススメ！はじめての恩田陸

「ファンタジー系」のオススメはこちら。「常野」から来たという不思議な能力を持つ人々をめぐる連作短編集です。能力を悪用することなく、穏やさを大事にしている彼らは、時に利用され、排除されながらも、強くやさしく生きていきます。哀しさ、やさしさ、なつかしさなど、読者の感情を静かに刺激してくれる物語です。

「エンタメ系」で読んでほしいのが本書です。上海が舞台のドタバタ劇で、25人と3匹の個性的なキャラクターが登場します。全員がバラバラに動いていたはずが、偶然のすれ違いによって物語が交差していきます。意図せずお互いを巻き込み合いながら、クライマックスに向かって一堂に集結していく展開が圧巻です。

「ミステリー系」でオススメしたいのがこの小説です。兄・太郎の古道具屋を手伝う散多は、物に触れるとそこに宿る記憶が見える能力の持ち主。古いタイルから亡くなった両親の姿を見た散多は、同じタイルを探すうち廃ビルで目撃された少女の噂を耳に。再開発が予定された土地を舞台に、ひと夏の冒険を描いたミステリーです。

「青春系」を読みたい方にはこちらがオススメ。大阪で代々続く商家に生まれた梯結子の、朝ドラのような一代記の青春編です。結子は誰もが解決策を見つけられずに放置している小さな問題を、冷静な観察力と情報収集力で大胆に発想転換し、問題解決に導いてしまいます。こんな友達がそばにいたらいいのに！と、心から思ってしまうはずです。

「ホラー系」で推薦したいのは本書。アジアの西の果てにある白く巨大な遺跡。中に入った人間が消えるという「人間消失のルール」を解明するため、やってきた4人の男たち。卓越した記憶力と精悍な姿で女言葉を繰り出す不思議な主人公・神原も見もの。恐怖が忍び寄るようなホラー描写と神原の魅力とのギャップが癖になるはずです。