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死をみつめる目、生をみつめる目
2011/05/25 08:16
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第100回芥川賞受賞作(1988年)。自身医者でもある南木佳士(なぎけいし)はこの作品でも医療の現場を描いている。但し、主人公の和夫は医者ではなく、火山のそばの高原の病院に勤める看護士である。
そうであっても同じ医療現場で働く者としての視線が和夫にこめられている。冷静に生命を見る視線、命の終焉を見る視線。南木の作品は医者としての視線と作家としての視線を交差させることで、生きるということ死ぬということを問い続けている。
この中編には実に多くの死が描かれている。和夫の母、和夫の妻、和夫の勤める病院に入院しているマイクという宣教師。そして、最後には和夫の父である松吉の死も描かれる。
火山のそばの高原の病院に看護士として勤める和夫は幼い頃母を亡くした。その「あまりにも頼りない人の命」に興味をひかれて医学部をめざす和夫だったが、父松吉の突然の病気でそれも断念せざるを得なくなる。
そしてようやく看護士という職業を得、そこで妻となる女性と知り合い、結婚する。だが、妻もまた生まれたばかりの息子を残して短い生涯を閉じてしまう。
人は多くの人と関わりをもつ生き物だ。同時に、その関わりは死という終結で終わりを迎える。
悲しい死ばかりではない。美しいともいえる死もある。ベトナム戦争で飛行士として戦ったマイクは死について達観している。迫りくる死に彼は揺るぎない心で立ち向かおうとする。
呆けた父松吉はマイクとのみ正常な交感を交わすことができる。死を目前にした人の前で、父松吉は正しい人として描かれている。
そんな松吉が人生の最後にこだわったのが水車づくりだった。水を汲み、その水を生かす水車。そんな水車を役割を、南木は文学に込めたのかもしれない。
すべての人が和夫のそばから去っていった冬の朝。
壊れかけた水車の上に煌めくダイヤモンドダストが舞っている。それを見つめる和夫と息子。それは終焉した世界に残された新しい人の誕生のようにも見えた。
芥川賞受賞作品
2002/02/18 01:21
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:クロ - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本には、「ダイヤモンドダスト」の他に「冬への順応」「長い影」「ワカサギを釣る」の4作品が収録されている。このうち、「ダイヤモンドダスト」は第100回芥川賞を受賞したときの作品で、これだけでも読む価値はある。また、冬への順応も大学入試センター試験の現代文で使われたことのあるという作品です。
ダイヤモンドダスト
2023/04/22 19:36
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投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
作家であり、現役の内科医でもある著者にしか書けないような、経験に裏打ちされた作品がいくつも収録されている。30年近く前の作品なので、インフォームドコンセントが新しい考えとして入ってきた様子も分かる。
医者や看護士はずぶとい
2018/07/16 22:14
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投稿者:ME - この投稿者のレビュー一覧を見る
医者や看護士は人の死に立ち合うので、引きずっていては仕事ができないのだろう。ダイヤモンド・ダストは男だけの生活だが、不思議と寂しさを感じさせない。
直木賞受賞作
2020/03/23 12:02
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投稿者:レントン - この投稿者のレビュー一覧を見る
平穏な田舎生活を淡々と描いた作品。
文章は平坦で一見、退屈に思えるが、そこには人生の深みが綴られている。