風立ちぬ・美しい村 みんなのレビュー

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投稿者：けんいち　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

『風立ちぬ』は、堀辰雄の作品の中でも特に有名なもので、「サナトリウム・薄幸の美少女・献身的に尽くす婚約者」を３大要素とした「純愛」のイメージが強い小説である（もちろん、そこには、山口百恵映画の影響も大いに関わっていることだろう）。

しかし、改めて考えてみるならば、『風立ちぬ』に描かれた「純愛」、あるいはもう少し一般化するなら「恋愛」とは、どのようなものなのだろうか？　１つには、主人公の男女が、ヒロインの死を前提としたところから始まる「生活」を愉しむ以上、それはある意味で無償のものに違いなく、従って２人が生きて迎える結婚生活すら想定しない（期待できない）という意味で、まずは純粋な愛、文字通り「純愛」であるように見える。ただし、ここには、今日「純愛」と称されるベストセラー作品にみられるようなわかりやすい仕掛けはない。『世界の中心で愛を叫ぶ』のように、恋人の死を回顧する枠組みは、生前の恋愛」を謳歌する日々をロマンチックに縁取って描き出し、それは「恋愛」らしくみえる。それに対して、『風立ちぬ』は、はじめからすでにヒロインは入院しており、わかりやすいかたちで「恋愛」謳歌が描かれることはないし、死を回顧する枠組みも採用されない。

にもかかわらず、『風立ちぬ』には「恋愛」が、しかも「純愛」が描かれているようにみえるのはなぜか？　それは、この２人の主人公が、死を前提とした２人の実につつましやかな「生活」の中で、繊細でありながらしかし確かな愛情を、相互に交換＝交歓しているからという他ない。そこでは、セックスはもちろんキスすらも描かれず、まれに抱擁がある程度で、特に甘い「恋愛」の言葉が交わされるわけでもない。にもかかわらず／それゆえ、社会から隔離された２人だけの地で、外部の承認すら求めない形で、何ものかが生み出され、それが２人だけのあいだで愛おしむように大切に大切に育てられていく。そこに、わかりやすい「恋愛」はみてとれないし、社会的な祝福があるわけでもない。２人を待っているのはただ死（死別）なのだから。そうであるから、この２人は、残された生の時間を細やかに、愛おしみながら、相手を思いやり「生活」していく。これこそが、「純愛」イメージの陰で描かれた、実に地味で上品この上ない、至上の「恋愛」のかたちなのだ。

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投稿者：しらゆき　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

「美しい村」: 話の筋がこれといって無く、小説というよりは、日記を読んでいるような印象。ただ、文章がとても美しくきらびやかで、物語を読むというよりは、文章の美を愉しむという感じでした。

「風立ちぬ」: 「美しい村」の二人が主人公なのでしょうか？サナトリウムの1室で、幸福と愛に満ちた日々を送る二人は、まるで絵画のように美しく思えました。
それでも、移りゆく季節と、弱ってゆく病人の様子が、時が過ぎゆくこと、死に近づいてゆくことを確実に知らせている。
　死への過程で描く生と愛と幸福。それを、こんなにも優しく残酷で、お綺麗で生々しく描いていて、夢中で読んでしまいました。

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投稿者：ふみちゃん　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

文庫本に中村真一郎氏が「堀辰雄　人と作品」という文章を書いていて、そこで「堀辰雄の文学は、この世ならぬ、ある香りのようなもの、実在しない、素敵な夢のようなもの、現実ではあるには純粋すぎるもの、というふうに受け取られ、（中略）、つまり快い逃避の文学として理解されがちだからである。そして、従ってそのような作品を書いた作者は、（中略）、人間でない妖精のような存在だと、誤解される結果になっている」と憤る。堀氏の文章に品があることから、またフランス文学の影響を受けていることから食わず嫌いで批判している人は多いのであろう。私もその口だったかもしれないが。とにかく作品を読んでみることだ、「風立ちぬ」も「美しい村」も他の作品にはない人間味のある美意識が詰まっている。

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投稿者：はまはま　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

スタジオジブリ作品の風立ちぬを観て、原作が気になり読んでみたが1つ1つの表現が綺麗かつ分かりやすいため、頭の中ではっきりと物語が進んでいくような感じがした。

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投稿者：ヨシオ　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

ジブリがこれを基に映像化すると聞いて、読んだことがなかったので
買って読んでみました。
原作は飛行機も戦争もでてこないんですね。まあなんとなく分かっていましたが、５W1Hのwhereの部分はとても限られていて、最初はつまんないんじゃないかと思っていましたが実際は違いました。
主人公とヒロインの限られた日々での生活。僕はとてもはかなく美しく感じました。
終盤、あっけなく場面が変わっていて、もっと詳しく書いて欲しいと思いましたが、それも十分な表現方法なんですね。時の流れ・儚さがうまく表現されています。
とても良い一冊でした。

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投稿者：七無齋　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

教科書にも載るような名作。近代文学の代表的小説。作者の実体験をもとに描かれた人間模様。抒情詩的心の動きが読みどころ。

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投稿者：みみりん　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

再読です。堀辰雄の自伝的作品です。
宮崎駿監督の映画「風立ちぬ」を観たけれど、堀辰雄の風立ちぬを映画化したわけではなく、そこからアイディアを得たようである。
堀辰雄の方が、自然描写が豊かだと思う。

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投稿者：ナミ　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

２０１３年公開予定の、宮崎峻監督のアニメ映画『風立ちぬ』の主題は「いざ、生きめやも。」であり、冒頭には「堀越二郎（ゼロ戦設計者）と堀辰雄に敬意を表して。」との注釈が入れられている。そこでまず疑問に思ったのが、当然ながら堀越二郎（ゼロ戦設計者）と堀辰雄との関係である。次には、堀辰雄の小説『風立ちぬ』の主題でもある「いざ、生きめやも。」がどういう形でアニメの主題となっているのであろうかということである。ということで、取り敢えず堀辰雄の小説『風立ちぬ』を読んでみることにしたのだが・・・・・・・。
　結核に侵された婚約者に付き添う青年の目から見た恋愛小説ということになるのだろうが、婚約者同士の愛情の深さが周囲の風情を描写する美しい文章の中に織り込まれており、文学作品としては一級品なのであろうが、私好みではないのが残念。
小説『風立ちぬ』の主人公青年は堀辰雄自身であり（彼も結核療養中）、1933年に軽井沢で知り合いその冬に結核で死去する絵を描く女性は矢野綾子であり、その後堀辰雄は1937年に加藤多恵（1913年7月30日－2010年4月16日、筆名として多恵子を使用した）と知り合い結婚する。さて、アニメとの関連性であるが、主人公青年は堀越二郎（ゼロ戦設計者）に置き換えられ、結核で死去するヒロイン菜穂子（名前の由来は堀辰雄の小説『菜穂子』に因む）が矢野綾子らしいということまでは判ったが、当初の疑問に対する答えは未だに不明のまま。アニメを観てから再度考えることにしよう。

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投稿者：うりゃ。　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

ジプリ人気で読む人が増えるんだろうなと思いながら再読。
堀辰雄氏の「風立ちぬ」を原作というのは、牽強付会が過ぎるような気がする。
個人的には「美しい村」が好き。
ラストのゴミのあたりが、きれい事ではすませないくせに、なんともすっきりとしていていい。