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同著者の「マネーロンダリング」に勝る面白さかもしれません
2010/12/29 00:03
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:rindajones - この投稿者のレビュー一覧を見る
「永遠の旅行者」て何? Perpetual Traveler の訳であるが、その訳からも判然としない。Permanent Traveler とも言われるが、それでも理解は進まない。
Wikipedia先生によれば
パーペチュアル・トラベラー(Perpetual Traveler)とは
「永遠の旅行者」を意味し、各国で、非居住者とみなされる滞在期間の間だけ滞在し、税金を国家へ合法的に払わない、もしくは納税する税金を最小にするライフスタイルのことである。Perpetual Travelerは、略してPTと呼ばれる。
要するに税金(消費税などの間接税は別)を払わない人たちで、そのスキーム(方法)は各国を「旅行」すること。原理的に最低でも年間3国を渡り歩けば良いようです。
何だ、脱税の指南書か?
全く違います。そんなものよりもっともっとエキサイティングです。ある意味、著者の「マネーロンダリング」に勝るとも劣らないほどに面白い小説でした。二日余りで一気に読ませていただいた内容は、どんな風に映像化されてもこの楽しさを超えることは出来ないでしょう(だから読書は止められない。映画も止められないけど...)。
税金(所得税、法人税、相続税、などなど)なんて「納めないで良いですよ」と言われれば多くの人が喜ぶに違いない。お国のことを真に憂える人であればこの限りではないでしょうが、それでも渋々という方が多いはずです。私としても、率先して納税したい国になって欲しいと真に願ってはいますが...。
こんな無味乾燥で嫌われ者の税金をテーマにしたフィクションは、脱税をテーマにした抱腹絶倒の現実的でない物語が大半のような気がします。それ以外は、「脱税万歳」「税効果会計のススメ」(いずれも仮称)などなどの指南本の類だと思う。
本書はそれとは全く一線を画している。壮大なヒューマンドラマとは言い過ぎだろうか。練りに練られたサスペンス、推理小説ともいえる。単なる税金の知識だけではここまでの小説は書けない。改めて著者の知識の広さと奥深さに感銘を受ける。
先のWikipedia先生によれば
PTの中には、リバタリアンである者も多く、個々の自由やプライバシー、財産を何人からも侵害されることを嫌うことが多い。
出ました「リバタリアン」、これは先日読んだ「不道徳教育」の背後にある思想です。これも著者による翻訳なので彼の思考や哲学の連なりを垣間見るようです。
法律違反はダメです(「不道徳」かどうかは別の議論)が、法律に抵触しない「脱税」は法律上では「脱税」にはならない。当たり前の言葉遊びです。本書では、PTである主人公が余りにも正義感があり過ぎるきらいは否定できないが、それは主人公の生い立ちや思想を考えると不自然ではない。味気ない法律という縦割りの糸を、確固たる信念を持って軽快に横糸でさばく主人公の行動にこそ人間らしさを感じてしまう。
余談だが本書には私の好きなミュージシャンや楽曲がいくつも登場する。Bob Marley も勿論だが、CCRの Have You Seen the Rain (邦題:雨を見たかい)の Rain がベトナム戦争で投下される「ナパーム弾」を指しているとは知らなかった。そして当時アメリカでこの曲は放送禁止になったそうです。供に国家というものに疑問を呈した出来事や人たちである。
「お国が国民を守るもの」という発言と、「国家の前にあるべきは人です」という言葉とはイコールではないと思った。「先ず己ありき」です。ニーチェをちゃんと読み返したくなりました。
この作家の小説をもっとよみたい
2020/06/23 23:03
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
「永遠の旅行者」とは、どの国の居住者にもならず、合法的にすべての納税義務から解放されたひとのことをさす。主人公の元弁護士の恭一が、まさにそうであろう。どの国にも居住地を持たず、アロハシャツ1枚でどこへでも出かける身軽さをもち、お金にもモノにも振り回されない。生き方の選択肢を複数持ち得る自由なひと。
物語として十分に面白いが、それとともに、今の時代を真に生きるためのヒントをこの小説は持っていると思う。
The perpetual traveler。
2009/05/16 07:55
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:龍. - この投稿者のレビュー一覧を見る
The perpetual traveler。
世界中のどこにも定住せず、つねに旅行をしている人は税金を支払わなくて済む。
実際、この小説を読んで税金を逃れていた人が脱税で摘発されたのは、たしか去年の話。中途半端な知識や中途半端な計画で実行すると、失敗するという典型例です。
さて、本書は莫大な遺産を無税で孫娘に相続させたいと願う老人が、元弁護士で税法に詳しい主人公に依頼するところから始まります。
元弁護士は、「永遠の旅行者」。定住せす世界中を旅するという生き方を選択しています。
物語の舞台は、ハワイから。
風景描写が細かくされているので、永遠の旅行者という生き方が魅力的に思えてきます。
そして舞台は日本へ。
国際的な法律や税法、金融知識など豊富な著者が描き出す世界は現実世界とはかけ離れているのにも関わらず、実行できそうな気分になります。
ただ、法律的な話が苦手な人にとっては、やや難解な一冊。
龍.
http://ameblo.jp/12484/
国際金融の抜け穴を巧みに使い、合法的に税金逃れをしつつも、金に目がくらむことなく人間性を保ち続ける主人公像は同じ。
2018/05/04 11:41
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
国際金融の抜け穴を巧みに使い、合法的に税金逃れをしつつも、金に目がくらむことなく人間性を保ち続ける主人公像は同じ。本作では、それに謎めいた麻生騏一郎老人と、その孫娘で幼児の衝撃的事件によって精神的傷害を負った16歳の少女・まゆが絡んでくる。物語の背景にある事件は、いずれも凄惨であり絶望的ともいえるが、事件の真相と少女・まゆを取り巻く人間関係の再生の物語としての結末に救われる。ただ、作品としては、情景描写や社会事情に関する記述が長くてなかなか本題に入らないもどかしさと、国際金融や税法に関する難しい話が続き、読み込むのに手こずった。
631・『マネーロンダリング』や、649・『タックス・ヘイブン』では、もっと推理小説の側面を強く押し出した感じに思っていたので、情緒性豊かな本作は私にはちょっと異質に感じた。前2作の方が私には向いている。