今でもまったく陳腐さはない
2017/11/22 21:24
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投稿者:koji - この投稿者のレビュー一覧を見る
初見の作家さんです。
以前読んだ京極夏彦氏の「虚実妖怪百物語」でラヴクラフト氏のクトゥルフ神話が大きく取り上げられていて興味を持ちました。
私自身は俗に言う「怖がり」ですので映画や読み物でも怪奇とかホラーは苦手なのですがラヴクラフト氏とクトゥルフ神話に関しては好奇心が恐怖心に優ったということでしょうか。
この巻では
「宇宙からの色」
The Colour out of Space
「眠りの壁の彼方」
Beyond the Wall of Sleep
「故アーサー・ジャーミンとその家系に関する事実」
Facts Concerning the Late Arthur Jermyn and His Family
「冷気」
Cool Air
「彼方より」
From Beyond
「ピックマンのモデル」
Pickman's Model
「狂気の山脈にて」
At the Mountains of Madness
の7編の小説と
「怪奇小説の執筆」
Notes on Writing Weird Fiction
というエッセイから構成されています。
どの作品もとても魅力的で滅茶苦茶面白かったです。
特に「狂気の山脈にて」傑作ではないでしょうか。
短編・中編にも関わらずどの作品もびっしりと言葉が詰め込まれているような感じで、読み進めるごとになんとも言えない緊張感・不安感と同時に期待感が募り没頭してしまいました。
ほぼ100年前の作品ですが、陳腐さは微塵も感じられず魅了されます。
ジャンルとしては怪奇小説に分類されているようですが、私はある種のSFのようにも思いました。
こうなるとこの全集は別巻も含めると9巻にもなるのですが、必ずや全巻を揃えて読み通したくて仕方なくなりました。
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投稿者:トリフィド - この投稿者のレビュー一覧を見る
クトゥルー神話の主にして20世紀最後の怪奇小説作家、H.P.ラヴク
ラフトの全集第4巻。この巻は、科学に比重の置かれた作品を中心
に構成したとのこと。以下の作品が収められている:
「宇宙からの色」
「眠りの壁の彼方」
「故アーサー・ジャーミンとその家系に関する事実」
「冷気」
「彼方より」
「ピックマンのモデル」
「狂気の山脈にて」
「資料: 怪奇小説の執筆について」
「宇宙からの色」——とある農場の庭に落下した隕石が引き起こす
怪異を描いた作品。完全なSFといっても良いほどツボにはまった作
品だ。
「狂気の山脈にて」——この巻の2/3を占める、短めの長篇といっ
て良い大作。南極大陸を訪れたミスカトニック大学調査隊は、その
奥地に巨大な山脈を発見する。さらにその麓の洞窟から、異様な形
態の生物の化石を発掘。そして恐怖が調査隊を襲う……
クトゥルー神話の重要な要素である超種族〈古のもの〉が登場する
重要な作品。「時間からの影」とならんで、地球の真の歴史を物語
る、神話大系の総括的な内容の物語である。緻密に構成されたストー
リー展開から、終盤にかけてのテンションの盛り上がりまで、読者
を物語に引きずり込まずにはおかない、まぎれもない傑作である。
わたしが最も好きなラヴクラフト作品である。ちなみに、これも完
全にSFと云って良い作品だ。
ラヴクラフトが自分の創作の手法を語った「怪奇小説の執筆につい
て」は、ラヴクラフトの創作への姿勢や怪奇小説に関する考えが窺
えて興味深い。豊富なデータを収めた巻末の作品解題も読み応えが
ある。特に「狂気の山脈にて」の執筆メモなど、たいへん興味深い
資料である。
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投稿者:451 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1~3は読んだことないが、いきなり4。なぜいきなり4なのかといえば、わさびドラ史上最悪にダサいタイトルでありながら、最高の名作「南極カチコチ大冒険」が「狂気の山脈にて」をモチーフにしているという噂であったので。
たしかに、その要素がふんだんにありますね。
そして、他の作品にくらべて「狂気の山脈にて」の完成度は群をぬいていますね。
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投稿者:オムレツ洞窟 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ラヴクラフトは二冊目です。
この第四巻も、どのお話もおどろおどろしい雰囲気がありました。
「冷気」はわりと、この巻の中では分かりやすく面白かったです。
他にじわじわとした怖さが迫ってくる「宇宙からの色」が印象に残っています。
しかし「狂気の山脈にて」は長いです。決してつまらないわけではありませんが
集中力がない私は途中からウンザリしてきました。
でも、いつ南極に行ってもいいようにがんばって読みました。
同じような人がいたら、文中に何回「名状しがたい」が出てくるかを期待しながら読むと楽しくなってくるかもしれません。
南極はなかなか怖いところなんですね。
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18年前に購入したもの。自分自身ひさびさにこの世界にはまっているので、読み返してみる予定。
肝心の「狂気の山脈にて」が、くどくてなかなか読み進まないなぁ…
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ラヴクラフト全集の中でもクトゥルフ入門者必読の作品が多い。特に「狂気の山脈にて」は旧支配者、ショゴスなどの基本的な設定が示されているので他の作品の理解にも役立つでしょう。
個人的には「宇宙からの色」が臨場感のある語り口でもっとも恐怖を覚えました。今まで読んだ中ではラヴクラフト作品の中でもかなり上位に位置される作品です。
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全集4の読みどころ
ラヴクラフト本人が最高とした『宇宙からの色』
『ラヴクラフト全集』の読みどころ
1930年代のパルプフィクション・ホラーの中から生まれ、みじかい活動期間でありながら、多数のフォロワーを今なお生み出しつづけている。
ラヴクラフトの面白さを、ぜひ知ってもらいたく選びました。
今すぐにでも彼の小説のガジェットを使って彼のフォロワーとなることができるのも、ハマリこめる理由の一つ。
初心者には特に、短編かつラヴクラフトらしい『ダゴン』がオススメ。
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隕石が落ちた農場でじわじわと広がっていく恐ろしい変化を描いた「宇宙からの色」や,いつも部屋を閉め切って強力な冷房をかけている風変わりな医師の正体を描いた「冷気」,そしてラヴクラフト最大の長編作「狂気の山脈にて」などが収められています。ラヴクラフトの怪奇小説は,幽霊や妖怪が出てくるような類のものではなくて,むしろ科学的なアプローチから描かれたSFっぽい感じの作品が多いなと感じていましたが,この『全集4』はまさにSFそのもの。と思ったら訳者あとがきに「科学に比重の置かれた作品を中心に構成した」と書かれていたので,あえて全集の中でも特にSFっぽい巻にしたようです。
翻訳は相変わらず重厚で,私のように軽く本を読みたいと思う者には大きな壁にぶちあたったように感じられます。しかし苦闘した甲斐はあったように思いました。特に「狂気の山脈にて」は,南極探検の話から数千万年前の文明の話になり,しかもそれを築いた種族が宇宙からやってきたということで時間的にも空間的にもものすごい広がりを持った物語になります。怖いというよりSFとして面白いと思いました。
今回の全集にもラヴクラフトの書簡が収められていて,これがまた興味深いです。ラヴクラフトは,怪奇小説を書く時は「最大の力点は微妙な暗示に置かれるべきです」と書いていて,なるほどなと思わせます。彼の作品はどれも,恐怖の実体がなかなか姿を現さず,結局最後まで何だったのかわからないこともしばしばで,作品の語り手となる登場人物も「言葉に言い表せない」とか「口にする気も起きない」とか言ってはっきりとは語ってくれないことが多いです。それまでに明らかにされた様々なヒントから,想像力をたくましくしないと何が怖いのかわからないという仕組みで,彼の怪奇小説を読むには彼の説明していることを十分に理解する言語能力と,それを組み立てて空白を補う理性的な想像力が不可欠になります。
「SFとして面白い」とか言ってる私は,想像力が足りないのかもしれません。
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「宇宙からの色」
ある農場の隕石落下がもたらした不運、始まる破滅。日常に宇宙的な恐怖が広がっていく様がお見事でした。
「眠りの壁の彼方」
狂人の見る夢をのぞき見ることで知る真実…あまりホラーな内容でもなく、ちょい肩透かし。
「故アーサー・ジャーミンとその家系に関する事実」
ラヴクラフトお得意の家系ネタ。先祖の秘密を暴こうとして自分が不幸になるパターンですね。
「冷気」
永遠の命がテーマ…なのかな?生きながらに朽ちていく身体を保持する様は狂気じみてます。
「彼方より」
トンデモ機械により、普通の人が見れないものを観測したために起こる悲劇。好奇心猫をも殺す…ですな。
「ビックマンのモデル」
実物をみてきたかのようなリアルな屍食鬼の絵を描くビックマン。それもそのはず実際に見ながら描いた物だから。
主人公の語り口がその恐怖をあおり、先が見えててもなにかゾッとするものがあります。
「狂気の山脈にて」
珍しく人類が「宇宙からきたもの」を観察する側。
南極という未開の冒険譚にクトゥルフ的な恐怖が加わってかなり面白く読めました。
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巻頭「宇宙からの色」がよかった。
怪異が続発し、原因は多分アレだ!
と察しがつくんだけど、
気づいたときには手遅れ……ってヤツで。
あらゆるものが少しずつ汚染され、
なす術のない人の心も蝕まれてゆく、と。
「狂気の山脈にて」は、
E.A.ポオ「アーサー・ゴードン・ピム」へのオマージュ的作品。
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ラヴクラフト全集1巻を読み終わった時、ラヴクラフト氏の作品は、情景を推理小説が如く性格に描いているにもかかわらず、肝心な恐怖をもたらすそのものについては曖昧にしか書かれていないという話の構成であると感じた。つまり、都市伝説のように嘘にきまっているが、もしかして・・・と思わせる一人称的恐怖感があった。
現在のところ3巻とこの4巻を読み終わったが、その認識を変える必要がある。3巻もそうだが特にこの4巻では、もう個人の幻覚や幻聴として片付けられないほどに、異型の者達を描写しているのである。科学的に判別不能な物質が出てきたり、公式な記録として異世界人らしきものが見つかったと記録されていたりである。
私の中で、ラヴクラフト氏の作品が、自分の身に振りかかるかもしれない怖い話から、SFホラー小説にシフトしてしまった。拍子抜けした部分もあったが、そもそも1巻から架空の都市が出てきたり、後にクトゥルー神話としてまとめられるということを考えると私の第一印象が間違っていただけのことではある。
さて、いざ異型の者達を描写するとなるとそのディテールの細かさは驚かされるばかりで、想像力をフル動員して読み進める必要がある。「見たことのないような」とか、「この世のものをは思えない」という表現に逃げること無く書ききっているラヴクラフト氏の表現力は尊敬するしかない。しかも随所に上記の「この世のものと思えないような」と言った様な表現をここぞというところで使うことにより、物語の語り手が人間の手にあまる自体に遭遇しているという事がひしひしと伝わってくる。
100%フィクションであるとわかりながらも、実際に起こったことのように読みながら感じる。レビューに拍子抜けしたと書いたが、今現在はよりラヴクラフト氏の作品に引き込まれるようになったと思う。
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第4巻。
資料として『怪奇小説の執筆について』を収録。
この巻では矢張り『狂気の山脈にて』が読み応えがある。一番長いというのも理由のひとつだが、怪奇冒険小説としても素晴らしいクォリティ。飛行機で山を越えた途端に広がる打ち捨てられた都市の姿は想像するととても美しく感じる。本当にあればいいのに……。難を言うなら、あまり『南極』という極限の地で起きていることのように思えないことだろうか。
短編では、ラヴクラフトが何度も使った『家系』『先祖』をモチーフにした『故アーサー・ジャーミンとその家系に関する事実』が良かった。昔読んだときはピンと来なかったんだけどな。歳をとって読み返すと好みも変わっているのだろうか。というか、4巻はイマイチ印象に残っていないようだ……。
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久しぶりにラブクラフト全集の続き。これは当たりの巻。
訳者による解説にも書かれているが、「ピックマンのモデル」以外は、科学的な話というか、分析がキーとなる話になっており、出てくる物質の名前が古いのを除いて、全く現代でも通用するような話ばかりだ。
名作「インスマウスの影」を彷彿とさせつつ、得体のしれない謎の物質(生物?)の恐怖「宇宙からの色」、何故か体を冷やし続けないといけない「冷気」と、南極に氷漬けになっていた宇宙からの生物をめぐる「狂気の山脈にて」そして超名作で怪談風の「ピックマンのモデル」など、硬い文章ながら、読書なれしていない人でもゆっくり読めば映画のように脳内で映像化されてくるはず。
3巻が地味な印象だっただけに、この4巻はさらに素晴らしく感じる。ホラーというよりも、SFとして読んでも面白い。
なお、ラブクラフトの作品は、書き出しは訳がわからないことが多いので、最初の3~4ページは2回位読むのがコツ。本書に収められた作品も例にもれない。
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「故アーサー・ジャーミンとその系譜」が印象的。主人公が自分の系譜を調べていくと実は……な展開を持つラヴクラフト作品は複数あるが、これもその例の一つ。
「狂気の山脈にて」は冒険風味を味わえる作品。「ピックマンのモデル」は描写が要を得ていて面白く、「宇宙からの色」は科学的な(?)律儀さが現れていて楽しい。個人的に比較的好みが多い巻か。
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"きみはこの惑星でのわたしの唯一の友だったーーこの寝椅子に横たわる忌わしいもののなかに、わたしを感じとって見つけだしてくれた唯一の魂だった。また会うことがあるだろうーーおそらくオリオン座の三つ星の輝く霧のなかか、先史時代のアジアの荒涼とした大地か、記憶にのこらない今晩の夢か、太陽系が消滅している遥かな未来の他の実体で。"[p.71_眠りの壁の彼方]
「宇宙からの色」
「眠りの壁の彼方」
「故アーサー・ジャーミンとその家系に関する事実」
「冷気」
「彼方より」
「ピックマンのモデル」
「狂気の山脈にて」
「資料:怪奇小説の執筆について」
「作品解題」大瀧啓裕