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投稿者:やじやじ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ネタバレあり
ちょっと気合いいりそうな本だったので
結構長い間積ん読状態にしてしまいました。
ようやく手に取って読みましたが
やはりかなり抉られる作品です。
この作品のジャンルをBLとして扱って良いのかという疑問はあります。
(むしろクライム小説として読む方がしっくりくる)
また、翻訳ものなので独特な文と内容だと思うので
日本のこのジャンルのもつ予定調和ではないので要注意です。
(わたし的にはそこは問題なかったですけれどね)
23年間知らなかった父へのガブリエルの思いがすさまじい。
どうしてそこまでと思わないでもないのですが
ぽっかりあいていた彼の心の空白に彼が気がついてしまったって
ことなのでしょう。
母は彼に何も伝えず、彼女の死で彼は父の存在を知ることになる。
その名前がまた印象的「ウリエル」
そして母が息子につけた名前が「ガブリエル」
これは母が意図してつけたと思うのですけれどね。
ガブリエルはサイコパスです。
自分が得られなかった父という存在を求めて
彼の住む土地へ移り、彼が住む家の側に住み、
ゆっくりと近づき、周到に準備して拉致監禁。
「甘さ」はどこにもありません。
肉体的にも精神的にもがしがしと色々なものを抉ってきて痛い。
そして、最後に至るまで。
もうあそこまでいったら結末は決まっているようなものなので
そこは粛々とウリエルと同じような気持ちになって受け入れてしまいます。
甘さはまったくないのですし
ただただ、監禁の末の陵辱です。
(しかも父子だ)
暴力でしかない。
それでもガブリエルは「満ち足りて」しまうのだ
それが切なくてつらい。
ガブリエルの人生に欠けていた父という存在
実際に存在していたことを知ってしまったことで
それまでの全てのキャリア(人生すべて)を捨ててしまえるまでになる心持ちが痛い。
多分知らなかったら、警官としてのまっとうな人生を歩んでいるのだろうなぁって思うとなおさらです。
精神科医の浅野が、
もう一人の息子であるフィリップと死んでしまったウリエルの気持ち
そしてガブリエルの心持ちを
ひもといて、この作品は輪になっています。
そして指輪の意味も。
甘さはまったくないのですが
それでもガブリエルがウリエルを入浴させるシーンは
嗜好的にきゅんとしてしまいましたし
指輪に関しても切ない思いを感じました。
フィリップの葛藤と共に。
巻末に掲載の掌編は事件から数年経ってします。
「Between the Devil and the Deep Blue Sea」
4年後にフィリップが浅野克哉に会いに来る
なんか・・・フィリップが朝野に対しての思いがまた可愛らしい。
でも、これは『ITW』の事件の直前・・・
フィリップの可愛らしさとこの先にちょっと気持ちが乱される掌編でした。
本編はとても力がいる(心が抉られる)作品なので
弱っているときは読めないかな・・・と。
余談ですが・・・
タイトルがもうネタバレだよねということと
表紙は・・・最初ガブリエルだと思ってちょっと???になりましたとだけ
記しておきます。
☆4.5
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投稿者:BluePerfume - この投稿者のレビュー一覧を見る
なんとも言えない不気味な雰囲気で読んでいて軽く憂鬱になりますが、海外のドラマが好きな方にはオススメです。
ITWの浅野も出ます
2021/08/23 16:44
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投稿者:向日性の未来派娘 - この投稿者のレビュー一覧を見る
設定も特殊で、個人的にはいまいちハマらなかった。
Narcissusさんのあとがきで制作の裏話や、咎井さんとのBLのスタンスや好みの違いなどが書かれていたのは面白かったです。
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投稿者:冬みかん - この投稿者のレビュー一覧を見る
BLとしてよりは犯罪小説として読んだ方が面白いかな。翻訳の宿命としてやや違和感のある言葉の使い方なのであまり入り込めなかったのが残念。
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投稿者:沢田 - この投稿者のレビュー一覧を見る
苦手な人は本当にダメかもしれない感じの話でした。
「In These Words」からGuilt|Pleasure繋がりで読みましたが、苦手なタイプのSと言うより精神異常者でした。
身体的暴力が伴うので、要注意でした。
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普段、海外の推理物、探偵小説、警察小説を読み慣れているので、世界観は違和感なく入ってくる。BLと言うよりもML寄りだが、だからこそどうしても比べてしまう。「俺」が自分の存在さえ知らなかった実の父親に対して愛情を募らせる心理状態が、父と肉体関係を結ぶ、と言う事に繋がるきっかけが最後まで解らなかった。彼はノーマルなはず。愛情が高じて、と言うにはあまりにも説得力が弱い。父への思慕が肉体関係を結ばなければならない、となるだろうか。あともう一つ、亡き妻とのエンゲージリングを無理やり抜いた際に、骨が見えるほどの傷を負わせる、と言うのにも違和感があって、傷が化膿してそのような状態にまで陥ったんだろうが、あの傷を負わせると言う事がウリエルが自分の生を手放す心境になっていく(指が腐っていくのとリンクしている)モチーフなんだろうが、結果、いろんなモチーフは散りばめられているのだが、読後は消化不良感が残ったのが正直なところ。ほぼ光の入らない監禁部屋となったあの小屋も、「俺」が今一度子宮に戻って生まれ直すための演出として必要だったのだろうが、その自分がこしらえた舞台装置の中で「俺」は何がしたかったのか…ウリエルを死なせなければならないと言う彼の決着の着け方も、父を監禁する息子の話の演出として成された感が否めなかった。面白くない訳ではないのだが、絵の完成度に比べると甘いな、と言う気がしてならんかった。
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▼あらすじ
警察官であるガブリエルには秘密があった。自宅のアパートの窓から見えるその部屋 に住む男――彼を自分のものにするために、親切な隣人を装って綿密な計画を立てていたのだ。そして真冬のある夜、ついにその計画は実行された!
ガブリエルが思いを遂げた2週間、その小屋で何があったのか!?
精神分析医・浅野が手がけた一つのプロファイルがここに明らかになる…!
英語圏、中国語圏などで話題のクライムBLノベル、日本語初翻訳。
日本語版には、日本を舞台に浅野が登場する短編を特別収録。
***
『In These Words2』と同時に購入しましたが、中身をチラ見するとどうにも嫌な予感……。
私はバッドエンドものの作品は覚悟した上で読みたい派なので調べてみたら…案の定、私が最も苦手とする死ネタを扱うお話だと知り、それから手が出しづらく読むのがかなり後回しになっていました。
でも読みました。覚悟して。…全体を通しての率直な感想を申しますと、「これで萌えられる人がいるのか?」というものでした。
勿論、いる事は分かっているのですが…すみません、これほどまでに共感も理解も出来ないBL小説を読むのは自分にとって初めてなものでして…。
執着攻め、近親相姦、監禁、拘束、暴力、レイプ、愛なし、バッドエンド。
これら全てのワードが大好物だと仰る方なら多分、萌えられるのでしょう。
この作品は最初から最後まで見事なほど愛がなく(攻めの一方的な愛はありますが)、どのシーンも非常に痛ましく、時には顔を顰めてしまうほどです。
Narcissusさんはこういう狂った攻めや死ネタを含むお話が好きなんでしょうか…。
知ってる人は知ってると思うのですが、同作者さんの『the Bride』という同人誌もやはり警察が拉致、監禁して受けを自殺させるといった暗い内容でした。
今回の話もそれにちょっと似てるなぁ…と。だから何だって話ですが…。
あまりにも痛ましく、残酷で、夢も無いので、何だかBL小説を読んでいるというより、犯罪者の手記でも読んでいるような感じでした。
そんな中でも印象的なのはやはりウリエル(父親)が毒を飲んだ後でガブリエルの左手の薬指に指輪を嵌めたシーンと、車の助手席に乗せた父親の亡骸に泣きながらガブリエルが語りかけるシーンですかね…。
淡々としているんですが胸に広がる苦々しさと、やり切れなさに何とも言えずとにかく気持ちが沈みました。
でも、元はと言えばウリエルが浮気をしたのが原因ですし、自業自得というか、どちらにも同情出来なくてモヤモヤします……。
ラストがそれなりに明るい雰囲気だったのがこの作品の唯一の救いでしょうか。
特別収録されたという日本を舞台にした短編。これがあるのと無いのじゃ読後感も大分違うと思います。これが無かったらおそらく最悪でした。
日本に生まれて良かったです…。
正直、★2つにしようか迷ったのですが、挿絵が21ページと吃驚するぐらい多く、数ページごとに挿絵があるような状態で単純に感動したので★1つはおまけで…。
まぁ、どの挿絵も痛ましさに拍車をかけてるだけなんですが…(笑)
でも、やっぱり咎���先生のイラストは重厚感があって素敵ですね。このイラストが拝めただけでも読んだ価値はあったかなぁ…?と思います。
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『In These Words』でお馴染み、Guilt|Pleasureの小説。
失ってからその存在の尊さを改めて感じてしまう失望感の中で、人の精神はどんな風に自己を確立していけるのか。
23年間の人生の中で全くの空白だった『父親』という存在を知ったとき、警察官である主人公の心はどんな風に変化を遂げたんだろうなって。
欲しいと思った愛情や温もりや想いを一つずつ無くしてきた主人公にとって、最後の綱でもあった父親との一週間は、冷たく凍る世界であり、熱く滾る時間でもあり、父親の存在が無かった23年間を埋めてくれる温もりでもあったわけで。
近親相姦とダークな物語が平気という方は読んでみる価値はあるかと。
決してヌルイBLとしての物語ではなく、そういう要素が含まれた犯罪心理学的小説と思って読むほうが適しているんじゃないでしょうか。
終わりは衝撃的でもありますし。
飢餓的なほど相手を求める想い。
読み終えた時、自分の中にどんな風にその物語の存在が残るかは、もしかしたら自分の経験してきた『想い』の嵩に比例するのかもしれません。
生まれたときから父親の愛情を受けて育った弟と、その父親の愛情を全く知らずに育った兄。
父親を想う兄弟の愛情にどれだけの違いがあるのか量ることは難しいけれど、普遍的な父親という存在から飛び立とうとしていた弟も、不変的な存在として父親を求めた兄と同様に、『父親』という存在から離れられなくなってしまったことを思えば、「血の繋がり」というものが形として見えてくるんじゃないかなと感じます。
『In These Words』の主人公、浅野克哉がNY時代にプロファイルした事件の一つで、少しだけ浅野も登場します。
数年後、兄のその後は出てきませんが、弟は日本に戻って大学の講師をしている浅野に再会します。
その時の彼を垣間見て、弟があの事件から己自身の『人生』という場所に生還して行こうとしているのが解ります。
そのきっかけは、月日なのか、兄のその後だったのか、はたまた浅野の存在だったのかは解りません。
そこを想像するのも読後の楽しみかもしれませんね。
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海外ミステリーもしくはサスペンス映画のような印象のBL。バッドエンド、ガチ親子が苦手なら価格が価格なので注意が必要です。ちなみにバドエンは、BLに関してはどうも苦手。昔の耽美は大体がそうだったので、その後遺症です。
イラストがてんこ盛りでどれも目を奪われる迫力。生々しく圧倒されます。
「In These Words」のリンク作。浅野が初めて扱った事件の顛末が描かれています。
警察官のガブリエルが追い求めていたのは、ウリエルという40代の投資会社に勤める男。人生の殆どを彼の存在を知らずに過ごしたガブリエルは、ウリエルを手に入れることで自らの孤独な人生に終止符を打とうと綿密な計画を立てます。
ストーリーは超好みのサスペンス仕立てで、監禁陵辱に近親相姦と壮絶ななりに煽られました。アメリカの犯罪もの警察ものの映画やドラマのあのノリなので、力が入るし、かなりしんどい…報われない気持ちと利己的な愛情がせめぎあって、ほんとに悲しい気持ちに。
しかし、ガブリエルもウリエルも共感できないキャラでしたね…振り向かない相手を振り向かせようとする悲壮な熱意には、さすがに胸が痛くなりましたが。
逆に肯定しがたい主人公だからこそ、突き放して冷静で公平な視点で受け止めることができたかもしれません。
最後に事件のプロファイラーとして浅野が登場します。凄くいい役回りで有能さが際立っていました。重苦しい展開の中で、フィリップとの後日談は安堵させられるものがあります。
翻訳物はやっぱり訳し方で面白味も左右されてしまうので、どう読み解くかがむずかしいですね。
好き嫌いが分かれそうな作品です。
おまけの設定集は創作の苦労が垣間見えて、とてもよかったです。
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私が近親BL好きになったきっかけの一冊です。
暗い雰囲気もラブラブしてない感じも大好きです。ぶっ刺さる人にはぶっ刺さると思います。
一生大好きです!
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父子ものって設定って知って購入したのでこの作者さまがたの他の作品は未読です。
日本の商業BL的な甘さは一切ない、息子から父への執着と愛憎のクライムサスペンス。クリミナルマインド的な世界観とガブリエルの執着ぶりは好みで話もおもしろかった!
けど文章がなんというかノベライズ的というか、元作品や元映像ありきのように感じて、映画みたいでありはするものの言葉を選ばずに言うなら同人誌のような所もあってもっと掘り下げが欲しかったな〜って所感。わりと淡々と進んでた。
ガブリエルとウリエルが迎える結末は納得はできるもののもっと心理描写とかの厚みが欲しかった…。最後にガブリエルがウリエルに語りかけるシーンは胸に詰まるくらい印象深かったです。好きですこのふたり。
ただガブリエルとウリエルのラスト後の浅野というキャラクターの話はこの本しか著者の本を知らない自分からしたら完全な蛇足でした。なので満足感はいまひとつかな。本編のふたりはとにかく好きだけど。