科学の産物の悲哀、断絶
2023/07/27 16:50
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投稿者:ブラウン - この投稿者のレビュー一覧を見る
フランケンシュタインの名を聞けば、誰しも有名な怪物のビジュアルを思い浮かべるだろう。実はそれは科学者の方の名で――。
というのはさておき、科学に魅せられたフランケンシュタインは生命を創造する。造物主の設計通りの生物はただ一点、醜いという不測の欠陥のため拒絶されてしまう。フランケンシュタインからのみではない。世の中の人という人から怪物は拒絶される。人と怪物の断絶は、やがて悲劇へと転落していく。
人と怪物を隔てるものは何だろうか。容姿か、精神か、もっと根源的なものか。フランケンシュタインは怪物の精神を邪悪と評する。邪悪さが外見ににじみ出ているとうそぶく。怪物は痛々しいほどに人との触れ合いを求めて努力したという。もし最初にこの二人が、特に親同然のフランケンシュタインが怪物をよく見定めてさえいれば……そんなもしもに思いを馳せずにはいられない。
怪物の外見はグロテスクながら、一貫して発露される切なさ。スイスを始めとした、畏敬の念を覚えるほど美しいヨーロッパの風景描写の中で進む物語である。
ただ、どうしても言わせてほしい。
フランケンシュタインよ、科学者なら怪物を完成させるまでにもっと実験を刻め。
後で恐れるくらいなら安全装置くらい用意しろ。
外見より事象を観察しろ。
実験成功をもっと喜べ。
予算どうやって引っ張ってきた。
物語のダイナミズムは人物の動機にあると考える身としては、どうしても科学者としての彼の在り方に首をかしげてしまう。
知ってても読んでなかった名作
2020/11/05 17:08
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投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
映像化などで誰しも知ってる名作だけど読んだことがなかったので。海外文学特有の回りくどさがちょっとあったけど、フランケンの旅の話や人となりも非常に興味深く、怪物が出てこなくても1つの作品になりそうなくらいの冒険家。怪物の話は思ってたよりも狂気と悲しさが混在しててとても考えさせられた。
近い将来は・・・
2016/05/07 04:20
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投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る
何となくの話は知りつつも、読んだことはなかったので読みました。悲しい話で読後感は決して良くなかったですが、一気に引き込まれて読んでしまいました。最初と最後は、フランケンシュタインの語りではないところで、話が中和されてたのかなぁとも思いました。しかし、そのうちこれが本当の話になってしまうときが来るのでしょうか?
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新潮文庫のStar Classicsの1冊として出た新訳版。
既存の翻訳は確か創元で読んだと思うのだが、新訳になってじゃあ何が変わったか……というと、正直なところ、最初に読んだのは遙か昔過ぎて覚えていないw 近年の流れとして、所謂『翻訳調』の訳文を書く人は少なくなったので、多分こなれたんだろうなぁ、と想像するのみ。
ただ、創元版はホラー小説の古典という雰囲気をたたえていたが、今回の新潮文庫版は怪物の苦悩、求めても求めても得られない寂寞とした寂しさに翻訳の重点が置かれているような印象を受けた。この訳だと、主人公のフランケンシュタインより、彼が作り出した怪物に親しみを感じる読者も多いのではないだろうか。
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読み易くて楽しんだが原文と比較してかなりの付け足しがされている翻訳である。字が大きめとはいえ他社の物に比べて数十ページも増えないだろうと思っていたが数ページ程原文と比較して納得した。ただしそれが悪いとは言わない。芹澤氏のフランケンシュタインはこうであるという翻訳だろう。フランケンシュタインという小説を楽しむ上での不都合は感じなかった。同様の訳ばかり出ても仕方がないのでこれはこれでよい。ただし付け足しが多い故に研究目的での使用には向かない。
(追記)
全文を比較したがちょっと足しすぎである。文章も軟らかくて親切なようだが固く冷たい原文とは異質のものに感じられた。何らかの意図が有って故のことであろうが残念ながらそれは見えず、ただ付け足しの多い訳であるようにしか感じ無かった。同時に他の訳も比較したが光文社新訳文庫版は非常にライトで新潮社版とは逆に少々細部が削除されていた。創元推理文庫版と角川文庫版の新訳は程よい訳であると感じた。これから読む人にはこの両者どちらかをお薦めする。
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人造人間を造り出したヴィクター・フランケンシュタイン。自ら造り出した生物のおぞましさに逃げ出す。フランケンシュタイン。逃亡した怪物。殺害されたヴィクターの幼い弟ウィリアム。容疑をかけられて死刑にされた小間使いのジュスティーヌ。犯人は怪物と確信するがどうにも出来ないヴィクター。ヴィクターの前に現れた怪物。怪物の語る逃亡後の迫害。森の中の小屋で知ったド・ラセーの家族。貧しくても幸せな家族に憧れた怪物。幸せの破局。ヴィクターに女の怪物を作るように言う怪物。女の怪物を作るが途中で破壊するヴィクター。怪物の激怒。ヴィクターとの結婚の夜に殺された新妻エリザベス。北極海でのヴィクターと怪物の対決。
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読後はスッキリではない。
想像を拒絶するような孤独を通して、誰かに理解されたい、受け入れてほしい性(さが)を描く。燃え尽きることのない嫉妬も。
また、生命創造の倫理、人の社会性の発展・成長、差別の実相、犯罪への転落心理などのテーマにも肉薄していた。
まぎれもない名作古典だ。
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ドラマ『ペニー・ドレッドフル』のロリー・キニア演じる癒されることのない哀しみの運命を背負った怪物に惹かれ、今まで映画やドラマでしか知らなかった「フランケンシュタイン」を手に取りました。なんとも素晴らしい作品で、今まで読んでなかったことを悔やまれるほど。これが18世紀に著者が20歳そこそこで書かれたというんだから驚き以外の何物でもない。しかし、しかしですね、これは怪物が可哀想。創造者は勝手だよ!人間って勝手だよ!息を吹き込む前にもう少し考えられなかったのかい!
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なんとなくぼんやりとは知っているつもりだったフランケンシュタインが、実は全然知らなかった。だいたい著作が女性だったとは。
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恐らく多くの人が、本書のタイトルと、フランケンシュタイン博士が作り出した怪物のイメージは持っていると思う。
しかしそれは、フランケンシュタイン原作から得たイメージでは無く、人間によって作り出された、継ぎ接ぎだらけの怪物というイメージなのではないだろうか。
少なくとも私は、そうだった。
改めて本書を読んでわかったことは、フランケンシュタインとは藤子不二雄先生が書いたユーモラスな怪物ではない。
古典的な怪奇物語であるということ。
決して明るい物語でもない。
でも、そういえばフランケンシュタインって何だ?と思ってしまった人は、一度は読んでおくべきだと思いました。
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映画なら見なかったと思いますが、18世紀末に生まれ、19世紀初頭
20歳の美女が書いたという小説ならば興味ひかないわけはありません
ところが、暑さも忘れるほどゾッとする怪奇な恐怖話ではないこと
むしろ、これは現代にも当てはまる事情ではないかと、そこに背筋が凍りましたね
フランケンシュタイン青年科学者が人間に似た生命体を完成させる
それが怪物くん、フランケンシュタインが作った名無しの権兵衛
解説にある通り、わたしも怪物の名前がフランケンシュタインと思っておりました
でも、フランケンシュタインが生んだようなもんだから、フランケンシュタインでいいんじゃないか
それはさておき、作品の生命体があまりにもおぞましいので
(そこは詳しくは描写されていないので、想像で各自イメージする)
製作者は拒否してしまう、つまり、捨ててしまう
ちょっと待って!仮にも人間に似た生命体だよ
書き損じの小説や、作りかけの工作じゃないんだから・・・
怪物くん見た目はひどい(おそましい)が
掘り起こせば感性に溢れ、知性と情けを知る御仁
あるきっかけで人間としての教養を積んでしまう
それではと
人間社会で受け入れてもらいたいのがあだとなり
本人の意向とは裏腹に恐れられ
ますます孤立してしまう悲しさ
生みの親にも嫌われ、誰も振り向かない、認めてもらえない
そうなったときどうなるか?
失意のどん底、復讐の魔物となるのか
少々饒舌なところもありますが、三重構造の良さ
語りて
フランケンシュタイン
怪物くん
それぞれの真に迫ったモノローグがグイグイと迫ってきます
怪物とは「超現代科学技術のもう取り返しがつかない行方か!」
との思いを強くしました
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読書会の課題として読んだのだが、とても面白かった。400ページ強をすらすら読めた。
解説にもある通りいろんな読解ができる本だと思うけど、わたしが強く感じたのは、ヴィクター家(とくにエリザベスや父親、ジュスティーユ)の高貴さや気高さ、強さだった。どんな苦境でも、けっして否定に陥らずに現実と向き合う姿に、ぐっときた。
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孤独な怪物が抱える、癒しようのない哀しみ。最後まで"怪物"としか称されず、名前すら与えられなかった者の痛烈な哀しみ。 (訳者あとがきより)
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映画は何度か作られてますが、
原作はなかなか読む機会が無く初めて読みました。
フランケンシュタインが完成前から醜いと言いながら、
命を与え、恐怖と嫌悪感では好き好んで醜く生まれたわけではない怪物が哀れ。
また、仲間(伴侶)を作る約束をしておきながら完成直前に破壊。
フランケンシュタインの身勝手さはこちらの方が怪物。
殺人を犯してからは怪物にも同情出来なくなりましたが、
怪物よりフランケンシュタインの方が怪物に思えます。
200年前の作品なので表現には古さを感じました。
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筆者の旅行体験を元に描いた背景描写が細かく壮大で読み応えがあった。博士と怪物の相入れないジレンマが心苦しかったけれど、どちらも“人間性”を感じるところが多々あって200年前に書かれたとはいえ(翻訳済みですが)読みやすかった。周りの登場人物たちの慈愛が怪物の孤独を更に強調され切なかった。。