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投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ほぼ25年以上(下手すれば30年?)振りの再読でしょうか。
かつてのように、もしくはそれ以上に、ハラハラしながら読んでしまいました。ハラハラの原因は、大都市における群集心理と時代による“戦争の影の重み”がかつてよりもはるかに理解できる年に私がなったからだと思われます。
1948年のニューヨーク、<猫>と呼ばれる犯人による連続殺人が起こり、市民は恐怖でヒステリー寸前の状態に陥っていた。 警察委員長は捜査本部指揮官にクイーン警視を指名し、その息子エラリイ・クイーンにも協力を要請する。 『十日間の不思議』事件以降探偵家業から足を洗おうと考えていたエラリイは、不本意ながら<猫>事件を調べ始める・・・という話。
かつては『十日間の不思議』よりも前に読んだので、やる気のないエラリイの態度が不思議だったんだけど、今となっては納得(手ひどい失敗をしたくないというためらいが事件への興味を阻害していることがよくわかる)。
それでも、国名シリーズに比べればましなほうとはいえ、「なんかエラリイ、もったいぶってる!」と感じてしまうのは(いやいや、クイーン警視もそう思っている)、私が真相を覚えていた(というか読みながら思い出した)ためだろうか。
とはいえ、犯罪における異常心理(現在では“快楽殺人”としてひとくくりにされてしまうきらいもあり、幼少時のトラウマに原因を求めるのが一般的になってしまっているが)を、あくまで「理解しがたいが理解しないといけないもの」としてくいさがるエラリイの態度は、好ましいものに思えました。
やっぱり、時代、だなぁ。
監視カメラもない、勿論携帯電話もない、データベースとしての電子化された資料もない(それでもしっかり論理的にシリアルキラーの存在に迫れる)。 それ故のもどかしさもあるけれど、あの時代だからこそ成り立つ空気感は現代では出せないもので(インターネットはないけど、新聞が世論を形作っていく様などは時間はかかってはいるだけで、実は現代にも通じてるんだけど)。
もしこの事件を現代に持ってくるとなると、きっとジェフリー・ディーヴァーになってしまうのだろうなぁ、とこれまた納得するのでありました。
成す術もなく増える猫のしっぽ
2015/10/15 13:12
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投稿者:papanpa - この投稿者のレビュー一覧を見る
ニューヨークを恐怖に陥れた連続絞殺魔「猫」。
老若男女、皮膚の色、宗教にかかわらず、「猫」の餌食になっていた。
犯行の目撃者もなく、犯人への手がかりもなく、ただ成す術もなく増える猫のしっぽ。
苦悩するエラリーは、犯人にたどり着くことができるのか?
個人的感想
初期の作品ではパズルを完成させるように、いわゆるロジカルにミステリを解き犯人を指すという作風だったのが、今作は犯人当てより、犯行の背景を含め、全体として「読ませる」小説になってます。
はい、非常に面白かったです。ぜひ、「10日間の不思議」も新訳でお願いしたい。
泣かせるものでもある
2024/04/27 16:15
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投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
初期のパズル型とは異なる「後期クイーン問題」を代表する作品。センチメンタルになったといえばそうかもしれないが、泣かせるものでもあり、それは第二次世界大戦という歴史を背景とする変化でもあろう。
50年振りの愛読
2015/11/25 08:25
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投稿者:ダッファー61 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ミステリ(当時は推理小説というジャンル)に目覚めた頃ですから、50年前になりますかね。エラリー・クィーンはよく読みましたがもうほとんど記憶にないのではじめて読むような感触です。こういう構成は時代の波にも色褪せないですね。新訳で読みやすくなってる気がします。当時の翻訳は原語を直訳したような表現が多く、文章がゴツゴツしていてひっかかりがありました。翻訳は滑らかです。
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ニューヨークで起こった連続絞殺事件に挑む名探偵エラリイ・クイーンたちの活躍を描くミステリー。
エラリイ・クイーンといえば本格ミステリ、というイメージが強かったのでこうしたシリアルキラーものの作品は意外でした。展開もロジックというよりかは、警察の粘り強い捜査や囮捜査などが中心となります。ミステリ要素として強い印象に残ったのは、バラバラに見えた被害者のミッシング・リンクが明らかになるあたりでしょうか。
動機や精神分析的な推理が今の時代から考えると、ベタに思えてしまったのが少し残念…。今回の作品の肝となる部分なので、もう一歩何か欲しかったかなあ、と読み終えて少し思いました。
そしてこの作品で印象的なのは、エラリイの苦悩。数年前に『エジプト十字架の謎』を読んだときは、エラリイは完全無欠の名探偵といった印象なのですが、この作品ではそのエラリイの苦悩が強く描かれます。
そうしたエラリイの人間的な変化もまた一つの読みどころなのかと思います。
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これも驚きのエラリークイーン。
シリアルキラーの先駆けらしい。
クイーンを順番に読んでみたくなった。
2人の作家って、やっぱり特殊だな。
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久しぶりのクイーン。ちょっと違う感じがするのは彼のせいか、私が歳をとったせいか…
彼女にそれだけの事が本当に出来たのかという疑問が私には残っている。
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「猫」と呼ばれる絞殺魔が出現し次々に絹紐で殺人を犯す、という物語の骨組みや、犯人の動機を精神分析からアプローチしていくところはサイコ・スリラーの先駆と言えますし、「なぜ被害者の年齢が若くなっていくのか?」、「なぜ既婚女性は狙われないのか?」、「なぜ電話帳に記載されている人ばかり狙うのか?」という謎が結びつく真相は鮮やかで、ミッシング・リンクものとしても秀逸です。スランプの名探偵が復活するまでを描いたドラマ的な側面もあり、非常に高い水準で纏っている作品だと思います。
ただ、全体的に冗長気味なのと、容疑者が少ないためどんでん返しが分かり易いのが残念です。
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ニューヨークを舞台に連続絞殺事件が起こる。手がかりもなく、目撃者も容疑者もまったくいない。“猫”と呼ばれる犯人が残したものは死体とその首に巻きつけたタッサーシルクの紐だけだった。前の事件で自信を無くしたエラリーは、関わり合いになりたくないと思うが、周囲の勧めもあって調査に乗り出す。
エラリーの落ち込み具合がひどく、事件解明も遅々として進まずもどかしい。
次に誰が殺されるのか、被害者の共通点がわからずパニックを引き起こすような連続殺人事件。そして殺害動機。昔の作品なのに、古さを全然感じない。
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エラリーこんなにうじうじしてたか?!って思いつつ。
最後の結論を出すところが少しモタモタして感じられたけど、気になって一気に読んでしまった。
エラリーが自身を失った事件を読んでいないので、読みたくなった。
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作者の代名詞である理詰めのロジックで勝負する物語ではなく、事件の背景にある関係者の心理分析に力点が置かれており、真相の意外性もあるし、物語としての深みを感じさせる作品であった。
(以下、物語のあらすじに触れています。)
<猫>と名付けられた犯人による連続殺人事件が5件続き、エラリイに出馬が要請され、捜査に当たるものの、さらに4件の殺人が続き、なすすべもなく、焦燥に駆られるエラリイ。一見、無差別連続殺人と思われた事件だが、エラリイの分析によって、その特徴が次第に明らかにされていき、物語の約半分ぐらいのところで、被害者間の意外なつながりがわかり、重要な容疑者が浮かび上がる。
無関係と思われた被害者がつながる条件や、女の被害者がすべて未婚だった理由はなかなか面白い。残りのページ数から判断して、このままで終わるわけがないと思い、根拠はなかったが、容疑者以外の別の犯人を想定してみた(結局はずれで、犯人は別の人物であったが)。
エラリイは、容疑者逮捕後も真相を見誤っており、ある事実を知ることで自分が間違っていたことに気づく。前提が崩れたことで、容疑者の取った行動や容疑者の過去の出来事を再検討し、心理分析を行うことで新たな動機を発見し、その動機と、犯行の実施可能性から真犯人を特定する。
精神病医との対話の中で語られる犯行の動機、その背景にある関係者の心理分析は読み応えのある内容であった。
また、エラリイが自分の探偵としての無力感に捉われるラストの場面も印象的であった。
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2作続けて苦い終わり方だ…と思ったら救済もあった
今作は人間ドラマ的な面とミステリのバランスがあんまり好きじゃないかも
おもしろいから読めるんだけど
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「九尾の猫」読了。エラリー・クイーンお初。で、最後かと思う。探偵と周囲の人物に個性がない。妙に詳しく語る部分と語らない部分の配分がオカシイ。粗筋だけ箇条書きにすると推理としては悪くないのだろうが、上記から読み物としてつまらない。プロットはイイが作家としての力量に劣ると読んだ。残念。
プロットやトリック、着眼点が良くても、登場人物に魅力がなかったり、書きたいところだけ書いて、書きたくない(思いつかなかった?)ところは飛ばす、という風にすると、そんな作風と思われて、折角のラストがイマイチになっちゃうんだなぁと。物書く人間として覚えておこう。
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「九尾の猫」読了。エラリー・クイーンお初。500ページ弱。二人の従兄弟が探偵と同じ名義で共著している。同作者の別の探偵ドルリー・レーン(元俳優、聴覚障害「Xの悲劇」等)と混同していた。エラリー・クイーンは父親が警視で作家。きちんと覚え直したい。ついでにドルリー・レーン物も読みたい。
141頁までの4つの謎は推察できた(というか、私は冒頭から5つめの謎があると思ってるが)。でも、一人(5つめの謎が当たっていれば二人)しか怪しくないし、そも動機が全く謎だ。うーん。
上のこの私の謎解きはある意味正しかったのだが、また大はずれでもあった。謎解き失敗で悔しくないのは提示された材料がね、で「しょうがないか」と思ったから。そも、なぜ「猫」なのか?が明かされない一番の謎だ。後から付け足しみたいに猫が補足されるけど、弱い。夜行性動物なら何でも良さそう。
269頁。それはズルくないか?確かに怪しいと思った人物だし、4つの謎が解けるっちゃ解けるが。うーん。。。でも、そうか。4つの謎が一度に解ける方法としてはこれしかないか。(5つめの謎は私の考えすぎだった)
謎解きはいいとして、探偵と周囲の人物に個性がないなぁ。後半ある一家の詳細を突然語り始める意図も分からない。単なるページ稼ぎ?犯人が捕まってからも冗長。と思ったら、動機としては納得がいくが、犯行可能か?と言う事に対して多いに疑問。
粗筋だけ箇条書きにすると推理としては悪くないが、読み物としてつまらない。
うーん、うーんと「九尾の猫」パラ見、読み返し。当時はサイコパス、シリアルキラーの発想は新しかったんだろうしなぁ。それにしたってなぁ。冗長で寸足らず。ワイン一杯分熟考予定。誰か読んだ人と語り合いたいよ。ダンナは絶対読んでくれんもんな。
うん。やっぱ、長々と述べてる割に動機(もしくは異常性)が弱い。犯人が理不尽に時々超人。用意周到なようで稚拙と犯人像が一貫しない。犯行に無理がある場面アリ。推理劇や人間劇も盛り上がったり盛り下がったり浮き沈みを繰りかえす。バランスが悪いなぁと思う。この判断に悔いなし。
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(電子書籍)とても面白かった。私にとってこれが初エラリイ・クイーンなので、これを読んで良かったと思った。
正体不明の殺人鬼『猫』によって不安にさせられ混乱する市民はまさに現在のコロナショックと重なり、それもとても興味深かった。
これが初めてなので詳細はわからないのだが、これより前に挫折を経験したらしいエラリイ。シリーズの途中でそんな一面を出されると、次より前が気になるというもの。それが少し悔しいが読むと思う。
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エラリィクイーンの作品群でも人気の作品なんでワクワクしながら読んだら……肩透かしだなぁ。
悲劇シリーズよりさらに、なんちゅーか、肩透かし感。
どんでん返しは悪くないけど(残りのページ数的にこれで終わるわけないとは思った)そのあとが後味悪い……いやまぁ、本人たちにはそれが一番なんだろうけどさ。
で、エラリィがまた暗いんだよ……ぐちぐちぐちぐち。クイーン警視に頼りながら偉そうで……うーん、好きになれない。
災厄の町も読もうかと思ったけど、もういいかな。