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投稿者:コアラ - この投稿者のレビュー一覧を見る
“量子力学で生命の謎を解く”。そのものずばりのタイトルで,タイトル通りの書籍。量子力学という切り口で生命の謎を解き明かしていく語り口は圧巻である。高等学校の生物でATPサイクルや光合成って不思議だなと思っていた疑問が鮮やかに解き明かされる。とても読みやすく,量子力学にも生物学にも予備知識は必要ない。かといって凡百の一般向け読み物と異なり,積極的に最新の学説(著者のものらしい)も取り入れている。そのうちのいくつかは将来否定されるかもしれないけれども,勇気ある著述態度である。読者は,知らず知らずに量子生物学の第一線に立っているような気にさせられてしまう。本年度ポピュラーサイエンス読みものの一押しである。
目に見えないものを信じる根拠
2016/09/10 15:28
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投稿者:もゆ - この投稿者のレビュー一覧を見る
物理学の中に量子力学があることを最近知り、本書を読んでみました。
本書にもありますが、生命の謎は古来からあり、何故生命が誕生したのか、今だ明確な解は得られていません。確率からすれば0に近い天文学的な数字の中で、私達は"偶然"このように生きています。
生命の源の中に、量子が加わり、生命が誕生したと考えるとそこには未知の真実があるような気がします。
私たちが目に見えるものは限られていますが、ミクロな世界で起きていることは、確かに存在していて、それは、私達の生活に影響しているようです。量子力学は、理屈だけではなく、感覚によって理解するべき学問かもしれません。
量子力学で生命の謎を解く
2016/02/29 23:59
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投稿者:カルルサザッキ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ワクワクする本です。まだ若い量子生物学という分野の格好の入門書であり、生命に対する全く新しい見方を与えてくれます。読んでいる最中は目からうろこが落ちる感動に度々あわされました。近年まれにみる素晴らしい知的興奮を与えてくれる本です。
物理学と生物学の交点。スリリングかつ真摯な科学読み物。
2015/12/13 21:45
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投稿者:たまがわ - この投稿者のレビュー一覧を見る
一般向けの本なので、量子の世界の不思議な性質についてや
生物の中で起こっている複雑な働きなどについて、非常に詳しく分かりやすく説明している。
科学的に確定していない事柄については、正直にそのように断って書かれてあるなど、
読者に対しての真摯な姿勢が感じられる。
自分は難しい部分などは、飛ばし飛ばし読んだが、
理系の読者なら、更に興味深く、楽しんで読めるのではないか。
もちろん理系でなくても分かるように、手取り足取り順番に、説明されている。
以下は本書の内容。
ヨーロッパコマドリは、地磁気の方向と強さを感知できる。この能力は磁気受容と呼ばれている。
ほかの多くの生物もこの能力を持っている。
この鳥のコンパスが、量子的なメカニズムを持っているのではないか。
量子力学の世界の奇妙な性質。
生命とは何か。
植物の光合成。
匂いと、生物の嗅覚についての研究の歴史。
進化論とDNA。適応的突然変異や遺伝子の忠実な複製。
人間の意識について。
生命の起源。人工生命創造への挑戦。
これらに関する、「量子生物学」からの考察。
以下、最終章より引用。
「コマドリは北アフリカの海岸目指して飛び、そのまま大西洋を渡る。六か月前とほぼ同じルートだが、
今度は逆方向へ、再び量子もつれ状態の針を備えたコンパスに導かれて進む。
一回一回の羽ばたきは筋肉繊維の収縮によって駆動され、そのエネルギーは呼吸酵素のなかで電子と陽子が量子トンネル効果を
起こすことで供給される。何時間もかかってコマドリはスペインの海岸へたどり着き、(中略)身を休める。
いずれの木も、量子にパワーを得た光合成の産物だ。すると、匂い分子が漂ってきてコマドリの鼻孔に入り、
嗅覚受容体に捕らえられる。量子トンネル効果によって神経信号が発せられ、それが量子コヒーレント状態にある
イオンチャンネルを介して脳に伝えられる。(中略)
つかの間の交尾によってオスの精子とメスの卵細胞が合体し、オスメスそれぞれの形、構造、生化学、生理、
解剖学的特徴、さらにはさえずりをコードした量子ベースの遺伝情報が、新たな世代のコマドリにほぼ完ぺきにコピーされる。
量子トンネル効果によって生じたいくつかのエラーは、この種の将来の進化のための原材料となる。
もちろんここまでの章で強調してきたように、いま挙げたすべての性質が量子力学的であるとはいまだ断言することはできない。(後略)」
量子力学で生命現象は本当に解明できるのか
2018/05/13 16:26
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投稿者:病身の孤独な読者 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書はタイトル通りに、量子力学の知見が生命現象にどのように関連しているのかを、詳細に描いた作品である。学術的には挑戦的な書籍と思われる。おそらく、酵素の機能に関しては化学的にも共通了解としてあるみたいだが、その他の研究事例は定かでないというのが評者の感想である。確かに、物語としては斬新でありかつ面白い。しかし、その真偽の定かは今後の研究によるとだけしか言えない。
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量子生物学、とても刺激的です。酵素の働き、光合成の効率、遺伝子のコピー、磁気感覚器官まで、量子力学を使うことで説明できるようになった。いろんな例を素人にも分かる言葉で説明されています。
生物と無生物との違い、自己複製するだけでなく、熱力学的な無秩序に打ち勝ち、自己持続性を保つ生物。量子力学を用いないと解明できないというシュレディンガーに同意できました。
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難しくて一気に読めない
一気に読まないから内容がいまいち入ってこない。
テーマは面白かったし、この本を読んでいる間にいろいろ関連しているニュースにアクセスできて
「おお、このニュースってこの事じゃん」などあり、楽しい数ヶ月間でした。
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量子力学が生命にかかわっている証拠は挙がりつつある。なかなかエキサイティング。また、改めて量子の不気味さを認識した。生物が眠るのも、デコヒーレンス化した脳のキュビットをコヒーレンスに戻すためなのかも…と想像。
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非常に分かりやすい比喩を用いて量子生命学について書かれている。とは言っても内容を理解するのは結構大変で、集中して読みながら、不明なところは他の本やネットで調べていかないとついていけない。もっともそれは私が文系だからかもしれない。 これからさき、何度か読み直すとより理解が進んでいくような気がする。
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難しかったが科学読み物として面白かった。生物学に量子力学が関わるというのは今まで自分になかった視点で、分子生物学の理解に厚みを持たせてくれた。適応的遺伝子変異と量子トンネル効果による遺伝子変異については、一つの仮説として面白いと思った。つまり、遺伝子がたくさん使われる環境ではDNAがRNAに多く転写され、その際に量子トンネル効果が起こりやすくそれによる変異が起こりやすくなる。それが環境に適応する変異を生み出すと。コマドリの磁場感覚についてはこの本のメインと言えるが、量子もつれ状態にあるラジカルが磁場の影響を受けやすいことを利用し磁場を感知するということであった。意識・心、生命誕生の章は今ひとつであったが、そこはまだ未解決な部分が大きいということだろう。
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量子力学を使って生命現象の謎を解き明かす量子生物学という
新しい研究分野に無知な私でも、ある一線を超える、
より深いところへ連れて行ってもらえた。
古典的なニュートン力学から熱力学、量子力学、さらに生物学との融合。
未知なる真理の大海原の果てにある生命の本質に、
人類はいつの日かたどり着けると思わせてくれる素晴らしい一冊。
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生物の仕組みを量子力学の観点から理解しようとする、量子生物学を研究する筆者が、量子生物学とは何なのか、その最新の研究成果と未来への展望、そして、生と死は量子力学の概念で説明できるのか?という問題への考察へと至る。
本書で「不気味」と称されるとおり、量子力学は理解しがたい概念だ。
しかし、本書は、現実世界におきかえた分かりやすい例を頻繁に用い、大変分かりやすく説明していると感じた。
こういう本は、難解でつっかえつっかえ読むか、読後に内容が薄いと感じられるものが多い印象だったが、本書は読みやすく、内容も決して薄いとは思わなかった。
主に移動中の電車の中でKindleを使って読んでいたが、次に本を開くのが楽しみなほど引き込まれた。
量子生物学という単語を始めて聞いたが、とても刺激的で面白い研究分野だ。
そして、それが仮説の段階でなく、すでに実験で確かめられている事実も多いという点に驚いた。
例えば、ヨーロッパコマドリが地磁気を感知して移動する方向を決めたり、植物が光合成で作られたエネルギーを利用するのに、量子の世界の反応が利用されているのは確かとのこと。
量子の世界の反応は、周囲の粒子の無秩序なふるまいにより、容易に壊されてしまう。
通常、量子力学の実験室では、他の粒子が入り込まないようにしたり、温度を極端に下げたりすることで、極力それを防ぐ。
しかし、生物の体の中は、それとは対照的に、乱雑で、暖かい。
そんな中で、どうやって生物が量子の反応を使うことができるのか。
なんと、その乱雑な環境自体を利用することで、量子の反応が壊れないようにしているという。
(船の例えで、熟練した船乗りは、荒波や暴風自体をコントロールして、船を操縦する。なかなか正確に理解するのは難しかった・・・)
驚愕である。
なぜそんな精緻な仕組みが自然にできたのか?
筆者は、量子が生物の存在そのものに対して決定的な影響を与えていることを、確信している。
生きている、とはどういうことか。
それは、量子の世界の反応を利用できているかどうか。
周囲の環境の乱雑さに逆らい、量子の世界の秩序だった反応を自分の体内に作り出し、自己永続性を獲得しているのが、生命の条件だという。
生物の中に量子の働きを見つける研究の成果とは裏腹に、ゼロから生物を作り出す研究の未来は、絶望的に思える。
本書の中で、資材置き場に嵐が来て、偶然飛行機が組み上がるくらいの難易度、というような例えが出てきたが、まさにそんな感じだろう。
生物の生成に必要な元素で満たした液体に電気をかけると、「失敗した料理の焦げ臭いドロドロ」に似た有機物が生成できたのも、世界的には画期的な成果だったという。
一番原始的な生物でさえ人間の手で作り出すことができないのは、不思議な感じがする反面、どこか不可能な「壁」を感じるのが正直なところ。
私のような人間にすれば、神の意志を感じざるをえない。
しかし、人間がその仕組みを解明し、ゼロから人工生命を作り出したら、それ自体何という興奮であろうか。
人間がそこにどれだけ肉薄できるのか、本当に楽しみだ。
何にせよ、生きているだけでどれほどの奇跡なのかというのは、計り知れない。
それを再認識できた。
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量子力学は一般的に絶対零度で立ち現れる筈だが動植物の生命活動に量子化学が大きく関わってくる事を示唆する驚愕の著書。
生物の細胞内はドロドロの生暖かい状況であり直観的には熱力学的支配と考えられる。19世紀までは生命体は複雑な反応を行う化学工場と考えられていた。ただ余りにも複雑な反応を統制している厳選がわからなかった事を「死」とは何を意味するのかは熱力学ではわからない。
シュレディンガーは1943年に生命とは量子力学に依存しているに違いないと予言していた。賢いな。
様々な研究、基礎知識が散りばめられており、生命の維持は熱力学のマクロのノイズを利用し量子反応のコヒーレンスを維持しているらしく、またそのノイズをうまく生かすには我々の体温が最適な状態であるという驚愕の事実を伝え、様々な示唆と謎を残したままこの本は終了する。
ファイマン先生の仰るとおり「作れないものは理解した事にはならない」のだろうし、これからも注目していきたい分野。個人的にはKindleでも購入しても良いと思える良書中の良書
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量子もつれ
いったん一緒になった粒子同士は、互いにどれだけ遠くに引き離されても、原理的にずっと結びついている(同じ量子状態の一部をなしている)為に瞬時にコミュニケーションが取れる。これを非局所的に結びついているという。
量子の世界で、粒子が同時に二つの事をし、壁をすり抜けたり、不気味なつながりを持ったりと奇妙な振る舞いができるのは、誰にも見られていない時だけ。ひとたび観測されると、身の回りに見える物体と同じように振る舞うようになる。
ハキリアリは体重の30倍の重さを運ぶ事ができ、アギトアリは顎を0.13ミリ秒で速度ゼロから時速230キロまで加速させる。F1カーの4万倍早い。電気ウナギは600ボルトの電気を発生させる。
人間の死の前後で体重を計ると、魂の重さは約21グラム。
シュレーディンガーの波動方程式は、特定の瞬間における電子の正確な位置を示すのではなく、もし観測した場合にその電子がそれぞれの位置に見つかる確率を表すもの。
生化学反応は本来あまりに遅い。だが、我々の細胞の中にある酵素は、細胞内の何兆個という生体分子を絶えず何兆個という別の生体分子へ変換する事で我々を生かし続ける「代謝」というプロセスを1兆倍加速させている。
クマは犬の7倍以上の嗅覚を持ち、20キロ離れた場所にある動物の死骸を嗅ぎ取る。蛾は10キロ離れた交尾相手を見つける。
ゲーデルの不完全性定理
複雑な論理体系には必ず根本的な限界があり、その法則を適用させて作る事のできる真の命題の中には、もともとそれを作る時に使ったのと同じ法則では証明できないものがある。
イオンチャンネル
脳の中で情報を運ぶ活動電位(神経信号)の伝達に携わる、神経情報処理の中心的役割。長さは1.2ナノメートル(10億分の1メートル)、幅はその半分以下なので、イオンは一列になってしか通れないが、1秒間に1億個出入りしている。また、選択性が高く、カルシウムを細胞内に入れる役割を果たしているイオンチャンネルは、たとえカルシウムイオンより小さいナトリウムイオンでも、1万個あたり1個ほどしか通さない。
イオンはチャンネルを通過する際に、非局在化して広がり、粒子というよりもコヒーレントな波動になる。また、極めて高い振動数で振動するので共鳴が起こり、周囲のタンパク質にエネルギーが移動する為、イオンの運動エネルギーを半分ほどに下げ、冷却される事でデコヒーレンスが食い止められ、イオンの非局在量子状態が維持されて、チャンネルを通した量子輸送が促進される。
エネルギーと質量を等号で結びつけるアインシュタインの方程式E=MC2 は、エネルギーと物質が互いに交換可能である事を明らかにした。
科学三大謎
宇宙の起源、生命の起源、意識の起源
これらは量子力学で解明できるかもしれない。
スタンリーミラーは、瓶の中に、水、気体、メタン、水素、アンモニア、水蒸気を入れ、その中で電気スパークを発生させたところ、タンパク質の構成部品であるアミノ酸がかなりの量生成された。
北欧のコマドリは、量子もつれ状態の針を備えたコンパスに導かれて大西洋を渡る。一回毎の羽ばたきは、筋肉繊維の収縮によって駆動され、そのエネルギーは呼吸酵素の中で電子と陽子が量子トンネル効果を起こす事で供給される。匂い分子が漂い、コマドリの鼻孔内の嗅覚受容体に捕らえられ、量子トンネル効果によって神経信号が発せられ、それが量子コヒーレント状態にあるイオンチャンネルを介して脳に伝えられ、近くに柑橘類の花が咲いている事を知る。
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量子力学から生物学の謎を解くという取り組みは大変に興味深い。
仮説であると断っている部分も多いが、妥当性は決して低くないと思う。
学術的な良心に基づいた、この分野の入門書だ。日本人でも量子生物学の研究者はいるのだろうか。
2014年に原著が出ているが、2013年までの論文が引用されている。引用文献リストも末尾に付されている。
量子力学と言っても、トンネル効果、波動の重ね合わせ、量子もつれ、スピン、そして、コヒーレント状態など基本的な概念の適用で説明される事象ばかりであり、それらの概念も本書で丁寧に説明されている。渡り鳥などの磁気コンパスや光合成、魚や昆虫などの鋭い嗅覚、遺伝子の忠実な複製、遺伝子の突然変異への疑問などの解明(7章まで)は成功していると思うが、8章・心、9章・生命の起源はあくまでもアイデアに過ぎないが面白さはあった。
個人的には、生物学では生命の始まる可能性が限りなく0に近いという説明が多く難問であったのが、量子力学的観点(量子コンピュータの設計概念の元になっている、重ね合わせの原理)の適用(第9章 生命の起源)で、見事、筋道が通ったことに特に驚きを感じた。
生物学的なマクロのスケールにミクロのスケールの量子力学が適用されうるかについては、適度なノイズが必要、という仮説の提示があった。