記憶の海からうかびあがるあぶく
2021/12/15 15:47
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
向田邦子さんが不慮の飛行機事故で亡くなってから、今年(2021年)で40年になりました。この時向田さんはまだ51歳でしたから、生前の向田さんを知るほとんどの人はもうすでに向田さんの生きた年を越えたいるかもしれません。
それだけの歳月が過ぎたにもかかわらず、向田さんが残した作品は、それはドラマの脚本でありエッセイであり小説でもありますが、今でも新しい読者を生み続けています。
いわんや、古い読者は何度でも向田作品に触れようとしています。
土井晩翠作詞、滝廉太郎作曲の名曲「荒城の月」の歌詞の一節「めぐる盃 かげさして」を「眠る盃」と間違ったまま覚えていたというエピソードを綴った「眠る盃」を表題作としてまとめられたこれは、向田さんの第2エッセイ集です。
どこかの雑誌一誌に連載されたものではなく、その時々のさまざまな紙面に綴られたものです。ちなみに、「眠る盃」は1978年に東京新聞に載った作品です。
このエッセイ集には、子供たちの教科書に採用され、最近絵本にまでなった有名な「字のない葉書」や、向田さんが愛してやまなかった愛猫マミオへの恋文ともいえる短文「マハシャイ・マミオ殿」など、今読んでも、何度読んでも、ほっとするエッセイに満ちています。
私は中でも、中央線の中野駅近くでライオンを見たという「中野のライオン」とその後日譚である「新宿のライオン」がお気に入りです。
いつも覚えているわけではないのですが、読みはじめるとそうそうこういう話だったと、記憶が浮かびあがってくるのです。
向田さんのエッセイの魅力は、そんな記憶の海から浮かびあがるあぶくのそれではないでしょうか。
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投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
いつも厳しい父親が、疎開先からやせ細って帰ってきた娘に声を上げて泣く場面は、子どもの頃はわかりませんでしたが今読むと毎回泣いてしまいます。向田さんが、これからという時に若くして事故で亡くなられたことが本当に残念です。
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投稿者:ジミーぺージ - この投稿者のレビュー一覧を見る
田邦子さんのエッセイは、いつも向田さんから直接お話を
聞いている感じでワクワクします。
話の多くは、食べ物、動物、芸術が多い気がします。
食べ物は、味を覚えて家で再現できるらしいです。
これができたら遠くまで食べにいかなくてもよいので
うらやましいかぎりです。
どのエッセイも等身大の話でとても面白かった。
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「荒城の月」の「めぐる盃かげさして」の一節を「眠る盃」と覚えてしまった少女時代の回想の表題作をはじめ、なにげない日常から鮮やかな人生を切りとる珠玉の随筆集。知的ユーモアと鋭い感性を内に包んだ温かで魅力的な人柄が偲ばれる必読の書。文字が大きく読みやすく、カバーも絵の色を再現した新装版。
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リサ・ラーソンのような猫が、表紙に、、、
三角頭の猫の顔と魚の顔、、、そして胴体が、一本の線!
改装版も変わらない表紙である。
幼き日に覚えた「荒城の月」めぐる杯かげさ~して、、、、が、眠る盃と、覚え込んでしまった作者。
何でも器用にできるのに、「潰れた鶴」のように、要領が悪い。
「字の無い葉書」は、なんと父親が、文字の書けない学童疎開させた作者の妹に、返事は、〇か×を書かせる工夫は、よく考えたものだと、、、、
そして、幼き妹は、母親が、迎えに行かなかったら、生命の危険があっただろう。
旅行好き、おしゃれで、何でも自分で、洋服も作ってしまわれる。
向上心もあり、もし生存しておられたら、88歳。
黒電電話が、携帯、スマホに、、、そして、電気自動車、のぞみの新幹線、2020年の東京オリンピック等など、書いて欲しかったことが、山ほどあるけど、、、、
「中野のライオン」など、今では考えられない、規制の無かった時代の話も、今の若い人達に、伝えたかったことが沢山あったと思われる。
エッセイを久しぶり、拝読した。
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なんでもないような日常の一コマや、記憶の片隅に残っていたことを丁寧に掬い上げて、細部まで観察し、優しい視点とユーモアで包みながら、鮮やかに書き(描き)きる軽妙な筆致。スゴい。
もっと若い頃に読んでおきたかった。
読めて良かった。
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随筆とかエッセーの類は大体が詰まらないものと相場が決まっている。でも偶に買う。長編小説を読み終わった後のお口直しかの様に。
向田邦子ととは匕首が合うというのか?愉快だった。「字のない葉書」は泣いちゃった。そして「国語辞典」にこんな事が書いてある『人の読まない本を読め』と書いてある。
そだね!今度そうしよう。カーリング、銅メダルおめでとう
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黒柳徹子さんのトットチャンネルに向田邦子さんのお家に居候していたことが書かれていた。トットチャンネル読了後、なにを読もうかと、家の本棚を漁っていたら、向田邦子さんの眠る盃が目に留まった。
不謹慎かも知れないが…戦後の貧しい生活の話は面白い。
水着がないから自分で作ったらプールで染料がでてきてしまったり…
なんでも買えば良い今ではこんな話は生まれない。
いんだか、悪いんだか。
読者と向田邦子さんとの交流も暖かい。
「子どもの時分、ツルチックというジュースを昔飲んだことが忘れられない。ただ母も誰も覚えていないという」と書けば、電話がかかってきたり、手紙が送られてきたり…
「製品化しようとして、販促品として作成したツルチックと書かれたトランプがあるがいるか?」と電話が。数日後、なんてことはないトランプが送られてきた。差出人には谷川俊太郎とあった。
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マンガ「書店員波山個間子」でこの本が紹介されていたので購入
「字のない葉書」に涙…いやぁこれは泣くって…
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エッセイの名手。鹿児島旅行のエッセイが好き。幼少期の思い出の強さを表現した最後の一文のうまさ、すごい。中野のライオンの話も印象的。教科書でおなじみ、字のない手紙も収蔵。
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電話は固定してるのが当たり前であった時代、平成という時代も、携帯もパソコンも見ることはなかった向田邦子さん(1929~1981)の「父の詫び状」に続く二冊目のエッセイです。「眠る盃」、2016.1発行。一人暮らしで猫と一緒に暮らす粋で上品な独身女性の生き方を楽しく拝見しました。眠る盃、噛み癖、夜の体操、字のない葉書、抽出しの中、恩人、鹿児島感傷旅行など、とても面白かったです。
向田邦子 著「眠る盃 新装版」、2016.1発行。第1部のエッセイはお馴染みのエッセイ集ですが、第2部の男性鑑賞法や第3部については、感心が薄いのでさらっと流しました。やはり、眠る盃、噛み癖、字のない葉書、Bの二号さん、抽出しの中、恩人、うしろ姿、鹿児島感傷旅行など、読んでて、さすが向田さんのエッセイだと感じます。
独り暮らしで猫と一緒の独身女性だった向田邦子さん(1929~1981 享年51、没後40年)、2冊目の随筆集「眠る盃」、1979.10刊行、2016.1新装版、再読です。眠る盃、噛み癖、字のない葉書、猫自慢、鹿児島感傷旅行・・・、何度読んでも素晴らしいです。
♪~春高楼の花の宴 めぐる盃かげさして 千代の松が枝わけ出でし むかしの光いまいずこ~♪ 24歳で早逝した天才滝廉太郎(1879~1903)の名曲「荒城の月」、大好きな曲です。電話は固定されたものが当たり前、携帯はなく、パソコンも普及していなかった時代をさっそうと生き抜けた向田邦子さんの名調子、「父の詫び状」に続くエッセイ、「眠る盃」2016.1発行。知的ユーモアと鋭い感性、温かで魅力的な人柄が詰まった55編のエッセイです。「向田邦子は突然あらわれて、ほとんど名人である」(山本夏彦)よくわかります!
向田邦子さんの「眠る盃」(2016.1)、何度か再読しています。著者の2冊目の随筆集。今回、私のベスト10を選びました。(ページ順に:)潰れた鶴、眠る盃、夜の体操、字のない葉書、能州の景、Bの二号さん、猫自慢、抽出しの中、恩人、鹿児島感傷旅行。
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大好きな向田邦子さんの「眠る盃」を久しぶりに手に取る。
冒頭に「潰れた鶴」という話がある。ずいぶん若い頃に初めて読んで以降、頭の片隅にずっと残っている。仕事中ふと蘇っては、自分のことだと戒めになるのだ。
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ちょっと前に読んだ
なんだかんだ初っ端の「潰れた鶴」が一番刺さったしすきだな
そして今さらだけど「字のない葉書」は実体験だったのか…かつて教科書で読み、数年越しにTwitterで再び目にして、自分の中に確かに眠ってた記憶が呼び起こされて、ここまで来た 辿り着けてよかったな
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『父の詫び状』に続く、二冊目のエッセイ集。
非の打ちどころのない名作エッセイ集である『父の詫び状』に比べると、古い文章や雑誌向けに書かれた男性批評シリーズみたいのも載っており、クオリティはいささか落ちる。
しかしそれでも研ぎ澄まされた文章と、あくまで謙虚な姿勢で自分の経験を鮮やかに語る語り口は見事である。
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絵本『字のないはがき』がどうも私の中でしっくり来なくて、あらためて向田邦子さんの原作が読みたくなり購入した本です。
なにげない日常が文章によってかけがえのない日常になっている気がしました。
祖父のことを書いた文章の最後の一文が、祖父の名前で締めくくられているところが好き。
他にもたくさん好きな部分があって、思わず書き留めたものも。
以前読んだ『父の詫び状』でも、この本でも飛行機についての記述があることに少しドキリとしてしまう。
全て私が生まれる前に書かれた文章。
ちょっと時代を感じる表現はあるけれど、古くさくない感性、ユーモア、そして謙虚な姿勢。
うまく言えないけど、読んで良かった。そう思える一冊。