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右翼とは何か。左翼とは何か。
歴史を追う中でそれぞれがどう変遷していったのか、
どのようにお互いが関わりあってきたのかについて解説している。
そういう点では六章までが分かりやすく良いと思った。
ただ七章の現在の状況についての説明は作者の意見も混在しているのと、
まだ変わりつつある今を説明しようとしているせいか一部納得しかねるところがあった。
ただ、今後は単なる二元論ではなく、
いろいろな軸を加えて評価して行かなければならないという見方は参考になる。
宗教は果たして右か左かという問いは個人的に新しい知見。
思想という枠内にあるのになぜこれを今まで気にしなかったのだろう。
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右翼と左翼という対立軸がたどった歴史的変遷を、分かりやすく解説した本です。
フランス革命以降、進歩史観とマルクス主義の形成とたどり、さらに冷戦後の展開までを踏まえて、右翼と左翼の対立という図式を概観しています。さらに、明治維新以降の日本における右翼と左翼の対立軸についても触れられています。
最後に著者は、戦後左翼が心情的な平和主義以上の何も提出できなかったのと同様に、右傾化が口にされる現在の日本でも、「日本は良い国だと思いたい」という現状肯定への欲求以上の意志は見られないと指摘しています。このこと自体は、大衆社会現象として構造的に論じられるべきだと考えますが、著者の議論はそうした方向には向かわず、サブカルチャーにおける「セカイ系」の流行との心理的な共振を指摘するのみに終わっています。
もっとも、著者のスタンスがあらかじめそうした議論を塞いでいるのではないかという懸念もあります。著者は、フーコーの権力分析に代表される、マイノリティの擁護などを旗印に掲げる文化左翼的な議論を「セカイ系左翼」と読んで、「知的自尊心を傷つけられやすいマイナー知識人らが求めゆく、知性の避難所」にすぎないと述べて、「こうした考えはいかに哲学的に精緻ではあれ、社会の多勢への影響力は乏しい」と難詰していますが、そうしたスタンスを取る限り、大衆社会現象そのものへの批判的な分析がおこないにくくなるような気がします。
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「尊王」のうち退けられた神秘的部分は、教育の分野で生き延びました。
小学校高学年で教えられる国史は、神武天皇以来の皇統の暗唱から始まり、古事記神話をも歴史として教えるものでした。これは後に昭和の「右翼」へとつながってゆきます。146
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昭和の「右翼」は、明治の権力者が庶民用、軍人用に創り上げたフィクションであるこの伝統(顕教)を真に受けました。
学問的エリートたちの通説だった「天皇機関説」(密教)を、天皇陛下を蒸気機関のごとく見做す不敬な学説ゆえ弾圧すべしと突き上げるまでに到ったのでした(国体明徴運動)。153
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日本国憲法は、象徴天皇制と議院内閣制を明文で規定しました。
かつての「左」の(密教的)解釈が、もはや解釈の余地なき体制として確定採用されたのでした。
戦前の権力内「右」は、反体制の「右翼」へ押しだされたのです。163
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現在、日本の「右」「左」の対決はこれまでにもまして、不完全燃焼なものとなってきています。
すなわちどちらにも「現実」から大きく飛翔してゆく「理念」が極めて乏しいからです。211
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今までの歴史や政治などの断片的な知識が全てつながったような痛快さを感じた.新書らしからぬ,豊富な図解,噛み砕いた説明.良書.
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右翼と左翼について、フランス革命から現代日本(2006年)までの流れを解説した本。
物語としてスムーズに描かれていると思う。
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右翼と左翼をきちんと区別してください。大人なんだからできるでしょ??よくわかんないです!!
なんとなくわかっている言葉をきちんと把握するシリーズ。簡単に説明されていてよかったよ。
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p43 辞書的な意味
右翼と左翼はタグ付の違いで理解するのがわかりやすいと前から思っていた。単純な対比構造じゃないからね。
「左翼」=進歩、自由、平等、合理主義、下層階級、知性・啓蒙主義、国粋主義、民族主義
「右翼」=保守、秩序、階層性、非合理主義、上層階級、反知識人主義、社会主義、共産主義、無政府主義
こんな感じ。
p210 自虐史観
ここに三十年来の日本の教科書がマルクス史観の歴史家によって編纂されたせいで、反国粋主義な内容(南京虐殺、従軍慰安婦などの歴史事実が明らかになってない問題など)になっているという右翼の主張。
自虐史観は本当に自虐なのだろうか。左翼にとって天皇制や軍国主義など当時の帝国主義は対抗勢力である。当時の日本はまさに否定すべき大勢だったのだから、日本否定は別に自虐じゃあない。
右翼にとっては自虐だけど、やってる当事者の左翼にとっては自虐でもなんでもないのだ。つまり、この問題は右翼の自分勝手な喚き散らしなところも無くはないのである。
右翼、左翼、こういうところがあるからわかりづらい。あと一歩頭良くないんだよな。
p234 存在意義が狂わせる
今の日本で右翼、左翼、とも胡散臭いものになっているのはなぜか。それは、日本が安定した国家になったために、存在意義がなくなって必死にほえ続けているからなのかもしれない。
社会主義は世の中の労働者がブルジョワに搾取され劣悪な生活をしている時代じゃないと存在意義がない。
国家主義は戦争中など、敵対勢力が居て一致団結しないといけないような世の中じゃないと存在意義がない。
存在意義を失いつつあるものは何をするか。自分たちの存在意義を確立するために、ない物をでっち上げたり、人々の不安をあおって世の中を扇動しようとする。だから胡散臭くなっちゃうんだよな。
p241 宗教・民族主義の反共主義
共産主義は、宗教権威や既存の権力機構の否定・打倒を叫ぶ。だから、世界の宗教であるローマカトリックやイスラエルやアラブは共産主義を嫌っている。冷戦中もそういった宗教組織は西側に加担した。
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右翼と左翼の違いを説明できるようになった。
どうして右翼と左翼が胡散臭い物に思えるのか説明できるようになった。
今の日本で右翼と左翼はどうなるのか、なんとなくわかってきた。安倍総理は右翼だが、彼が活動できるようになってきたのは、対抗勢力の左翼(中国とか)を煽って自分たちの正当性を表現できるようにしているからだな。
今の日本人に大切なのは、彼らの誇大広告に敏感に反応しないことだ。「お前らそんなに一生懸命やるな。おせっかいだ、ボケ。」くらいの態度、自分たち民間人ですべ���賄えるという気概をもって生きていくことが大事なんだな。
そのために左翼もいらないよう生きなきゃ。中道を生きる難しさ。でもそれこそ本当の自立と自由だ。
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フランス革命。こんなに調べたんだぜ感。中盤から内容に全く興味を持てなくなってしまった。が、サブカルあたりから面白く。知らないことをサクッと学ぶための新書。右、国粋主義、民族主義、伝統的秩序。左、社会主義、共産主義、自由、平等。
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右翼-左翼が直線で定義される時代から、4次元、5次元まで定義が広がったという話。
どうしても作者がどっちよりかが気になりましたが、特に明確な引用は無く、只中国をずっと支那と書いている所が引っかかりました。
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「右翼・左翼」って何?この需要が増えているという現在。自分もそのひとり。
本書はそれに応え、その歴史から現代日本における状況までを、右でも左でもなく客観的に分かりやすく解説している。
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MX テレビの右翼番組をよく見るようになったので、右翼と左翼の基礎知識を得るために読んだ。今まで政治に全く興味がなかったので、前半は非常に有益だった。後半から失速。
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ある意味で深く心に残った本です。
子供ながらに思っていた、右翼・左翼というキーワードがフランス革命より勃発した歴史的背景や近年の考えなど、安易に解説されてます。
最近は、佐藤優さんの様に別の切り口での論者が増加して、右翼・左翼という区分がボーダレス化してきていると感じています。
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政治的勢力「右翼」と「左翼」とはいったいどのような思想を持ち、どのような歴史的背景を持つのかについて解説しています。政治思想を右あるいは左と表現するようになったのはフランス革命からだそうです。右は王政復古を、左は市民に自由を、というところからスタートしています。政治史は人類が絶対王政から市民が自由・平等を獲得する歴史と言えると思います。しかし、自由と平等は二律背反で、そこから資本主義と共産主義の対立が発生します。近代においてはこの2つの主義をそれぞれ政治的にどう実装するかの立場で右左の考え方が変わっていきます。ややこしいなあ。
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右と左って何?と改めて考えると、思い浮かぶワードがそれぞれある。
だが、なんでそもそも右と左っていうのか、それに「翼」が付いているのはなぜか。
筆者は、フランス革命で誕生した表現がどういう変遷を辿って現代社会で使われているのか。革命で論じられる「自由」「平等」、自由に重きを置くか、平等に重きを置くかによっても異なる立ち位置。
右にしても左にしても、フランス革命から冷戦集結に至るまでの200年と、それ以降の現代社会における右と左は同列に語るべきものではないと言う程、理念や表現・活動が異なってきてしまっているということ。
歴史の教科書といった形ではなく、物語を読み進めるような内容なので、読んでいてい面白い。政治に関心のある方にお勧めできる一冊だと思います。
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自分自身が、誰かに右翼と左翼の違いは何?右翼とは?左翼とは?と聞かれてきちんと答えられない。そして、この本を手にした。未だにきちんと答えられない。再読が必要。
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表題の2つの用語について解説するために、概説書や入門書を資料としてまとめられたもの。元はフランス革命に遡るが、その間にも分裂などの変遷があったとか、他国との関係が変化するにつれてナショナリズムの形も変化してきたことが説明される。日本では、政治や経済の軸の対立よりも、外交・安全保障の軸の対立が強かったことや、最近は文化の軸も加わっていると整理されているのがわかりやすい。
絶対王政時代のフランスは、相次ぐ対外戦争や王侯貴族の贅沢により国家財政が破綻寸前となった。新たな大規模な課税に対して抵抗が生じたため、それに応じて三部会が招集された。三部会は全身分が一堂に会して国事を議決する国民議会へと変わり、憲法を制定、貴族・僧侶の特権を廃止、人権宣言を採択した。続いて、国王の拒否権を与えるかの是非と、国民議会を一院制にするか二院制にするかを審議した際、議長から見て右端に王党派が、左端に民主派が座った。1791年の憲法制定においては、中央派の中の左派である立憲派(のちのフイヤン派)が主導権を握り、議会の決定に対して国王は延期する権限だけが認められ、人々は自由になった。1792年の男子普通選挙によって誕生した国民公会でフイヤン派は勢力を失い、民主派であるジャコバン派ばかりとなったが、自由市場経済主義で金持ちの味方のジロンド派と、経済面の民主化を目指し中小企業や貧民が支持したモンターニュ派が対立した。やがてモンターニュ派が主導権を握り、共和制と男子普通選挙を明文化した1793年憲法を制定し、ジロンド派議員を処刑して恐怖政治を始めたが、リーダーであるロベスピエールは反撃を受けて失脚した。モンターニュ派が倒された後の議会はジロンド派の生き残りと平原派が支配し、制限選挙と二院制を採用した憲法を制定した。
フランス革命後、立憲主義=自由主義、民主主義、社会的民主主義のプロセスが世界中で実現したため、人類はそうしたプロセスをたどる必然性があると考える進歩史観が広がった(コンドルセ、サン・シモン、コント、スペンサー、ヘーゲル、マルクス)。マルクスはブルジョワも市場原理の下で競争を強いられて資本のために酷使されると考え、土地や工場、資源などの生産手段を共有とし、皆が能力に応じて働く協同体の一員となることで真の自由が得られると考えた(「共産党宣言」「ゴーダ綱領批判」)。
ジャン・ドフラーヌは、左翼を3つに分類している(「フランスの左翼」)
・自由左翼:立憲王政支持から民主共和国派まで。フイヤン派、ジロンド派、戦後のミッテラン社会党。日本の社民党、民主党左派、朝日新聞・岩波書店系ジャーナリスト。
・権力左翼:平等のため独裁と権力政治を布く。モンターニュ派、旧ソ連、戦後のフランス共産党。日本共産党。
・抵抗左翼:集会や暴動などの直接行動を起こす。過激派、バブーフ、戦後のアナーキスト、トロツキスト、毛沢東派。
19世紀末になると自由と平等の国民国家は確固たる体制となったため、問題は国内の格差不平等へと移り、ブルジョワジーとプロレタリアートの階級対立となった。マルクスとエンゲルスの「労働者階級に祖国はない」「団結せよ」のスローガンの下に、��派がインターナショナリズムを担うようになった。一方、右派は、王家への忠誠を補強するために、民族や伝統、歴史、宗教を軸とした国家を忠誠の対象とし、国家主義、民族主義を代表するようになった。その頃、ブルジョワジーたちは、世界を舞台に事業を拡大し、自国の政府を動かしてアジア・アフリカの植民地化していく帝国主義の時代が到来し、他国を敵にしたナショナリズムが高揚する背景となった。
レーニンは、先進国の労働者から植民地のプロレタリアートまでの圧倒的な多数派が権力を握れば、世界革命が起こるだろうと考えた。実際、旧ソ連や中国は、アジア・アフリカの植民地解放闘争を支援し、独立を勝ち取った国々には軍事的、経済的、技術的な援助をもたらし、その見返りとして東側共産主義陣営に組み入れた。一方、この現実に気づき、民族独立と近代的国民国家建設に目標を限定した指導者たちは、軍部と組んで開発独裁を進め、アメリカを中心とする資本主義陣営に組み入れられ、一族の私腹を肥やしてばかりいる国も多かった。
政治学者の田中愛治は、政治と経済の2つの統制の強さの軸を用いて座標を描いたモデルを用いる。日本では、小泉政権を例外とすれば、弱い経済統制を求める方向はほとんど見られず、政治軸も政権交代可能な議会制民主主義で一致していた。
政治強・経済強:一党独裁社会主義
政治弱・経済強:欧州の労働党や社民党、アメリカの民主党、日本の民主党左派などの社会民主主義
政治強・経済弱:アメリカ共和党、日本の自民党守旧派などの伝統的保守
政治弱・経済弱:リバタリアン。小泉改革の方向性
これに加えて、最近は文化的な統制(宗教、価値観、道徳観、性別)の強弱の軸が無視できなくなっている。さらに、日本では外交・安全保障の軸の対立が他の3つを凌ぐほど強かった。外交では日米同盟中心と中立またはアジア重視、軍事では米軍駐留と非武装と軍事的自立が鼎立した。
日米同盟・米軍駐留:吉田ドクトリン
日米同盟・軍事的自立:芦田均、岸信介
中立・非武装:旧社会党
中立・軍事的自立:日本共産党