「脳と知的好奇心」に興味がある人にはぴったりの一冊
2016/05/15 11:55
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ごみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
こんなことに興味があれば、ぜひ一読を。
・母国語習得の研究から、人が誰でも持つ「自分で学ぶ力(学習力)」を考える。
・熟達者、天才と言われる人と普通の人との違いは、どこから生まれるのか。
・「生きた知識」とは何かを考える。
・「主体的な学び(アクティブラーニング)」「問題解決力」の本質からみる「よい学び」とは。
但し、How toものではありません。
時折再読したくなる一書
2019/07/14 01:29
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:岩波文庫愛好家 - この投稿者のレビュー一覧を見る
知識と記憶との判断の違いに惹かれました。両者をどこで線引きするかは結構難しいものです。また、膨大な知識を持っている人というのは、天才ではなく努力の賜物である、という事について感銘を受けました(但し一部先天的に脳の異状が見られるが故の人は除く。例えばダヴィンチやエジソンなど)。
そう思うと、東大王に出てくる人達も天才ではないという点に納得がいきます(本人たちも努力の面を言及しています)。
自分の子供たちにも努力の尊さを判らしめるようでありたいです。同時に私自身も勉学に励んでいきたいと強く感じました。
塾の先生からの推薦が本書の購入動機でしたが、かなり興味深い一書でした。
「直観」に関するロジカルな整理
2016/06/29 00:06
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:アキウ - この投稿者のレビュー一覧を見る
子どもが言語を獲得していく過程を中心に、「学ぶこと」について考察する本。
事実を覚えこむだけでなく、一方で、「知識偏重否定主義」にも異を唱えるという、非常にバランス感覚に優れた内容で、そこかしこで共感・納得しながら読みました。
特に、「直観」に関するロジカルな整理がとても腑に落ちた。新しいことを自分の「スキーマ」に当てはめて理解することと、そのスキーマをあえて崩していくことの重要さ。
自分の根底に刻み込んでおきたい姿勢であります。
本書については、今後も度々、振り返ることになるだろうなという気がいたします。
小さな子供を持つ親に勧めたい書
2016/05/06 16:56
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
小さな子供を持つ親に勧めたい書です。人が学ぶということを行う際に、何をしているのか、そして、どのように学ぶと、人それぞれの熟達した、独創的な、仕事をなすことができるのか、という示唆深い書。「人と一緒に、人を頼らず」探求人として生きていけるように、子供を育てたいと思うようになる。そのためには、enduranceとresilienceを合わせた「粘り強さ」を育てる必要がある。その粘り強さを育むのが「遊び」だが、その遊びに5原則があり、目から鱗が落ちる思いだった。
学びのシステムを解きほぐす良書
2021/09/20 17:29
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:のこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
人が何かを学ぶ過程を大変ロジカルに説明していて分かりやすかったです。
特に子供が物事を理解していく課程について、仮の(本人にとっては「仮」かどうかは微妙ですが)スキームを作って、それが違っていれば徐々に修正を加えながら全容を理解していく…という点は、著者の言語に関する書籍と併せて読むと、さらに理解が深まりました。
大人になってから新たなものを学ぶ時にも、新たな分野の職場に行った時にも、最初は自分がどこにいるのかわからないような感覚になり、しばらくすると全容が把握できて自分の不足するところや、特定の事象の置き場所についてよく理解できるようになります。
いくら説明されても、この「自分がどこにいるのかわからないような感覚」が、なぜあるのか、本書を通じてよくわかったように思います。
何事も自分のものとするには、自分の中での一定のトライ&エラーが必要であるのだと思いました。
今後もこのような形で研究成果を一般書籍に反映して頂けると嬉しいです。
学びの本質を教えてくれる一冊です!
2019/01/14 11:25
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、学びの本質を教示してくれる一冊です。著者によれば、学びとはあくなき探究のプロセスだと言います。そのプロセスの中で思考が深まり、創造性が生み出されると説きます。従来の知識蓄積型の学びから脱却して、新しい学び方を習得するためにも画期的な一冊に間違いありまえせん。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:イ! - この投稿者のレビュー一覧を見る
勉強法,学び方について書かれている.ただ単に説明だけではなく,科学的根拠に基づいているので信用できると思う.
投稿元:
レビューを見る
<目次>
はじめに
第1章 記憶と知識
第2章 知識のメカニズムを創る~子どもの言語から学ぶ
第3章 乗り越えなければならない壁から誤ったスキーマの克服
第4章 学びを極める~熟達するとはどのようなことか
第5章 熟達による脳の変化
第6章 「生きた知識」を生む知識観
第7章 超一流の達人となる
終章 探究人を育てる
<内容>
専門は認知心理学のようだが、子どもの言語獲得のあたりが得意らしく、最初はそんな話から始まる。途中から羽生棋士の話が入ってくるが、思ったよりも子供寄りの本だった。
投稿元:
レビューを見る
子供が母国語を覚える過程とケバブを通じて、正しい「学び」という行為を語る作品。
人が言語を習得するときには、単純に単語の意味を記憶するだけではなく、新しい単語を覚えると同時に、単語同士のつながりや使い方をシステム化しているそうだ。そして構築されたシステムにより、言葉を補うための知識である「スキーマ」を養って行く。
スキーマは行間に隠された言葉の意味を推測し、知識の吸収を助ける役割を果たすが、その逆に固定観念による思い込みを助長する原因にもなり得る。したがって一度覚えた事柄であっても、必要に応じてそのシステムをバージョンアップする事が、いわゆる熟達者になるための学び方なのである。
結局の所、ケバブのように断片を集めただけの知識は使えませんよ、という話なのだが、じゃあ正しい学び方とは何なのか、わかったようなわからないような、面白かったような面白くないような… 熟達には程遠い自分にとっては、ケバブの断片が増えたような作品でした。
投稿元:
レビューを見る
やたらと物理の例が取り上げられているので、もともと物理出かなと思って調べてみたけど、そうではなかった。同時進行で朝永先生の「物理学とは何だろうか」を再読していたので重なる話が多かった。自分の中ではセレンディピティ(この使い方は違うな)。私自身、慣性の法則(「かんせいのほうそく」と打っても一発で慣性と出て来ない。一般の認識はそんなものなのか。)を毎年中3に説明しているけれど、そこまで理解していないかなあと思いながら読んだ。確かに実感と合わない難しい考え方ではあるのだけれど。本書を新聞広告で見て、書店で確認して、買おうかどうしようか迷ったあげく、買うことにした決め手はFB。最近、本のまとめ買いをした日にFBに写真をアップすることが多い。見栄というか、ちょっとよく見せようと思ったのだろうなと思う。他人ごとのようだけど。まあ、子どもの言語習得に至る過程や実験の話はおもしろくはあるのだが、結論がある程度見えていたので、読まなくてもよかったかなあ・・・そんな中、羽生善治さんのことばはヒットした。「ひらめきやセンスも大切ですが、苦しまないで努力を続けられるということが何よりも大事な才能だと思いますね。」私自身常々「努力できるのが才能なんだ」と言っていたので、思わずひざを打った。(この使い方は正しい?ことばって難しい。読んである程度理解していると思っても、自分で使うのはなかなか自信が持てない。そういえば、よく政治家とかでも使い方を間違ってお叱りを受けているなあ。)
投稿元:
レビューを見る
とりあえず購入。スキーマとかの話が出てくる。なんか学生の時の教職科目で似たような話があったなと思い浮かぶ。
投稿元:
レビューを見る
多くの研究者が「学び」を扱っているが、例えば佐伯(1975) http://booklog.jp/users/ikthr/archives/1/4491002770 があり、そこでは「認知科学」の枠組みの中で、学習のプロセスに着目し、「わかる」ということを詳細に検討することで「学び」の構造を説明していた。他方、本書では同じ「認知科学」における「言語能力の獲得」や、脳科学の枠組みで「音楽家」の脳を分析した事例に挙げ、「熟達」の過程を検討することで「学び」を扱っている。
著者は科学も外国語学習も、熟達していくうえで重要なこととして、「誤った知識を修正」し、「スキーマを修正」(p.93)することと協調している。学ぶ側の年齢を問わず、誤ったスキーマを修正する役割が、学校・大学や家庭に求められていると思った。
また熟達の具体的な説明として、「そのスキルに特化した記憶」(p.124)が脳内に貯蔵され、かつシステム化され、結果的に素早く再現できること述べている。換言すれば「身体化した手続きの記憶」(p.136)である。この熟達を経て、臨機応変の行動ができるようになり、創造性を身につけることができることが、軽重はあるが「学び」のプロセスであると理解した。
投稿元:
レビューを見る
個人的に良書。英語教育を例にとって説明しているくだりは学びの本質をついていてとても分かり易い。多くの事を知ることも重要だが、一つの事を突き詰めていくことも新たな学びをつくる。才能も学びが作る、新たな考え方を吹き込んでくれる1冊。
投稿元:
レビューを見る
著者は言語発達、認知発達、言語心理学の専門家。「学び」とは何かについて「認知科学」の視点から論じた好著。記憶と知識、誤ったスキーマの克服、熟達とは何か、直観はどこからくるのか、「生きた知識」とは、などなど。
最近流行りの「主体的な学び」について、その中身があまり真剣に議論されていないことを著者は批判しつつ、「探求人」となるヒントを与えてくれる。
外国語の学習やスポーツの練習などにも役立ちそうな一冊。
投稿元:
レビューを見る
知識と記憶、知識のシステムを創る、乗り越えなければならない壁、熟達による脳の変化、生きた知識を生む知識観、超一流の達人になる、探求人を育てる、の8章。
知識のドネルケバブ・モデル的エピステモロジー(認識)からの脱却。スキーマ(学習に用いられる思い込み的概念認知)の修正と探求を楽しみとすることによる熟達。
ドネルケバブは、実際の役には立たない知識の集積の例えだが、知識をぺたぺたと表面に貼り付けた竹輪のようなものと説明されて、焼いて削っている場面ではなく、焼く前の仕込み段階の様子だと思っても、やはり個人的にはイメージしづらかった。あえて専門用語でもない概念語を用いて、かえって難解になっているように感じた。
単なる記憶の集積では生きた学びにつながらないという点は同意するが、ではこの本を読んでよい学びが可能かとなると、そのような方法論の本ではないという結論なのだろう。
wear=着るという認知では英語学習のスキーマが誤っている(帽子もズボンも化粧もwearの対象になる一方、動作としての着るはput onと表現することの理解が妨げられている)など、言語学習や文化の理解などには特有のスキーマのための誤りを認知し修正することが必要という点は興味深かった。
16-77