紙の本
ミステリーファン必見!
2019/02/01 22:23
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
米澤穂信のミステリー小説である。ミステリーというと、殺人事件と相場が立ちそうであるが、米澤の小説では必ずしも殺人とは限らない。神山高校古典部のシリーズでは、内容は所謂青春モノであるが、至る所に探偵風味の味付けが為されている。これはミステリーである。
本書の主題は、古書店で伯父の手伝いをする主人公のストーリーだが、来店客からの依頼があった。特定の作家の古い書を探して欲しいというものであった。それを報酬が良かったので、店主の伯父に内緒で引き受けてしまった。
古い時代の作家で、しかもそれほど作品を世に出していない作家なので、作業は困難を極めた。当時の知人や出版社を探し、尋ね歩く。米澤の作品にはこの種の探偵業に類似した作業が多い。普通であれば、書を探す過程での諸事を描くことでストーリーが進んでいくのだが、米澤の場合はそうではない。
古書店での店番などはそれほど多忙であることはないし、想像もつく。そこで古書探しの依頼が来ることも、そろそろミステリーのスタートかと思わせる。そして調査作業は難航する。ここまでは通常の小説である。ここからの展開がその場の設定を打ち破る。松本清張もその種の展開の意外性に特徴のある作家であったと思う。
ミステリーファンには是非お読みいただきたい。探偵でもなく、刑事でも主人公がどんな経験をするのか。ゆっくりと味わっていただきたい一冊である。
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青春ものではない米澤先生
2014/06/23 08:41
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:papanpa - この投稿者のレビュー一覧を見る
米澤先生のお得意の「青春もの」ではないので、レビューでは否定的な感想や後味悪いと書かれていることも多く、購入をためらっていたのですが、大変面白かったです。個人的には「儚い羊たち~」より良かった(あれは短編集だから比較はできないでしょうけど)。感想は人それぞれ、本は自分で読んでみないとわからないと痛感。後味悪くなど決してありません、お勧めです。星4.5。
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小説を探す話
2018/05/31 19:26
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たあまる - この投稿者のレビュー一覧を見る
米澤穂信『追想五断章』を読みました。
小説を探す話なので、作中に小説が出てきます。
それが、昔のミステリー風読み物みたいで、独特の雰囲気がありました。
依頼されて小説を探すのは、古書店のアルバイト店員。
『ビブリア古書堂』シリーズを思わせる舞台設定です。
作品とは関係ないけど、信州松本が出てきて、ああまた松本に行きたいなあと思ってしまいました。
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重めの読後感
2021/06/15 02:32
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゆかの - この投稿者のレビュー一覧を見る
ページ数はそんなに多くないのに、ずっしりしていてどっと疲れた、でもそれが心地よい。
叶黒白の書いた物語は、誰かを不幸にしたのかもしれないし彼自身を救ったのかもしれない。
作中のリドルストーリーには一応の結末がありましたが、本編自体には明確な未来は記されていない、どうか彼ら彼女らが少しでも希望のある日々を過ごせていますように。
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リドル・ストーリー、初めて聞いた。謎は、一つの解答が示されてこそ楽しめるのだよ…と思う私には、向かない、な。
結末は入れ替わっているだろう前提で、暗号とかになっていたりしないかしらとぐるぐるしてみたりしたのだけれど、もっと素直に、そしてちゃんと、文章を読むべきだった…。
舞台が、今、ではなく、あの時代、だったのは、芳光を描くためだったのかなぁ。
そして、「わたしの夢」の最後に記載されていた『木霊』が何のことかわからなくて、疑問符が浮かんだまま終わってしまった。クラスの文集の名前だろうか。
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そこはかとなく退廃的で郷愁的な。
好みのエッセンスが散りばめられていて、「儚い羊たちの祝宴」に続いて素敵な一冊。
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別に恐ろしい展開でもないのにぞくっとする。恐くなる。でも先が気になる。米澤先生の作品は中毒性が高い!中でも今作は作中に登場する結末のない物語、リドルストーリーが話と切り離しても面白く、さらに結末のないはずの物語に用意された結末の存在が興味を引き、より中毒性を高めている。この先を読まずにはいられない魅力と、しかし読むのをためらってしまうゾクゾク感が本格ミステリーと言われる所以なのだろう
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謎ヒロインはいつものことだけど、今作はいいかんじ。登場人物達のその後が語られず、余韻のある結末でした。
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このミステリーがすごい! 2010年版 第4位。
古本屋に居候する主人公が探して欲しいと依頼されたリドルストーリーに秘められた話とは。
リドルストーリーとは謎物語、読者に委ねて結末を書いていない小説のこと。
真相がよくわからないのはすっきりしない。
ビブリア古書堂のような雰囲気だが、こちらのほうが古い。
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単行本の方はすでに既読だったので、ストーリーを知った上で読んだのですが、それでも面白い。
表紙は文庫版の方が好みですね。葉山響さんの解説が丁寧でよかった。
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読了。物語冒頭にぽんと置かれた序章「私の記憶」を読み返し、感傷に浸っているところ。題名がいいよね。綺麗で淡々とした文章と、構成の妙、作者の器用さに唸りつつ、登場人物達の諦観や苦悩にやるせなさを感じた。私自身はこのやるせなさは不快ではなく、"物語が存在しない"凡人の物語として、自分だったらどうしたかをあれこれと考えさせられた。最後の主人公の選択もせつないが嫌いではない。
ただ、もう少し長くても良かったかなと。主人公の内心や心変わりをもっと味わいたかった。作中作となっている五編のリドルストーリー(結末が読者に委ねられた物語)が、"不安な童話"を読んでいるようで面白かっただけに、この作中作を追っている主人公がこれを読んでどう思ったか、影響を受けたかも気になるところだ。
ストーリーは、伯父の古書店に居候中の青年が、ある女性からその父が昔書いたという五つの短編の処在を探すよう依頼され、追い求めるうちにある一つの事件の真相をたどることになるというもの。そして短編五作はリドルストーリーでありながらも、結末の一文が提示されるというトリッキーな展開。ネットやケータイが普及していない時代を舞台に設定しているところも、人と人の会話を引き出す調査モノとして効いている。
全体のトリックそのものは途中で気付いてしまったが(多分作者もそれは承知と思う)、この作品はトリックに取り組むより、五編のリドルストーリーを一つ一つ味わった上で、この五編を追い求めるうちに浮かび上がる大きな物語を楽しめばよいのだなと思う。
---- 追記
米澤穂信『追想五断章』刊行記念インタビュー
http://renzaburo.jp/shinkan_list/temaemiso/090826_book01.html
これを読んだ。主人公の描写が少ないのは、わざとだった。自分の物語を持たず、そして他者の物語に関与しようとしてできなかった者の物語。うーーーん。そうなのか……
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5つの短編小説を探す依頼を受けた青年が、作者である男の半生を追う。それぞれに全く無関係そうなストーリーの筈のその物語は、男の半生の欠片が散りばめられていた。
どこかしら後味の悪さを残す5つのリドルストーリーは、男が巻き込まれたとある事件が大きな影を落としており終始陰鬱な雰囲気が漂う。男の半生を追いながら、青年は自身の両親との距離や思いを自問自答し、苦悩する。
リドルストーリーとして独立した物語を随所に挟みながらも、本筋の物語へと終息させていく手腕は見事の一言。
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【読了】米澤穂信「追想五断章」 8月3冊目
8月の3冊目は米澤穂信の「追想五断章」。「氷菓」のアニメ化をきっかけとして読み始めた米澤作品も、この作品によって文庫化された作品は全て読了というくらいに、ちょっと米澤穂信という人の書く作品が気に入ってしまっている。
さて物語は、古書店に居候する主人公が、ある女性から死んだ父親の書いた5つのリドル・ストーリーを探して欲しいと依頼されるところから始まる。リドルストーリーという言葉を初めて知ったのだけれども、小説の一形態で、あえて終末を書かない形式をいうらしい。日本人作家で有名なのは芥川の「藪の中」だとか。
実際に話が進行していく中で、5つの断章、リドルストーリーが登場するのだけども、これがそれぞれの話として読んでもなかなかよくできている。ショートショートの範疇に収まっているので、全体の流れを切る事もなく、実に効果的なアクセントとして機能している。それでいて全体的に繋がる効果も有しているのだから、よく考えられたものだと感心してしまう。
惜しいと思うのは、音楽に例えれば、とても技巧的なアレンジを駆使していてとても興味深いのだけど、肝心のメロディがちょっと弱いという状態になっている気がするということか。要素、要素がちゃんと絡み合う様は見事なのだけど、歌抜きのトラックを聴いているような感覚。
この地味な淡々とした感じが魅力ともいえるし、小説ならではの作品とも言えるのだけども、善くも悪くもキャッチーさに欠けるところが、少し誰にでもオススメというわけではなく、この作品の良さをわかる段階にいる人を選ぶ必要があるかなと感じた。とはいえ、ハマる人はすごくハマるスルメ作品なのは間違いなく、読み返すたびに新たな発見があるのではないかと思う。
以下、好きなフレーズ
173P”斯く有ったということと斯く有って欲しいということ、あまつさえ斯く有れば面白いということすら混同した連中が、僕を悪鬼だと公然と指弾した。”
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タイトルの小細工には薄々気付いていたが、最後まで読んだとき、冒頭の作文の意味がわかり、巧みなストーリー展開に舌を巻いた。
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五つのリドル・ストーリーとそれに隠された謎、最後に明かされる真実など一つ一つの要素はとても魅力的なのですが、最後まで読んで全体的に平坦になってしまった気がします。
オチが先に出てしまっているので、インパクトに欠けるのもマイナス点。