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紙の本
面白いだけに怖い
2002/07/31 22:39
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:MFTR - この投稿者のレビュー一覧を見る
塩野七生さんの話しは、丹念に資料にあたっているためか非常にリアルである。そのため、いかにも事実のように読めてしまう部分が多い。しかし、物語として面白いのはそれだけ登場人物に色がついているからであり、その色は著者によってつけられたものである。この点で歴史的事実と創作が混同されかねない。この点さえ留意しておけば、この本は買いである。面白い。
紙の本
コンスタンティノープルの陥落
2001/07/31 20:19
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:hiro - この投稿者のレビュー一覧を見る
塩野氏の作品を、私はいつも小説としてよりもノンフィクション、あるいは歴史の教科書として読んでいることが多い。氏の小説の主たる舞台であるイタリアで実際に暮らし、源資料と言える書物を渉猟して書くその姿勢に、大いに信頼がおけるからだ。その例に漏れず、この「コンスタンティノープルの陥落」も、その時代のその場所に生きた人間の息吹が感じられる歴史の教科書となり得ていると思う。
とかく受験指導が主となりがちな中学・高校の歴史教育の中では、中世から近世にかけてのこの地域の歴史は、世界史の中でもサッと通り過ぎることが多いのではないだろうか(私の場合はそうだった)。歴史を学ぶのは好きな方の私も、ローマ帝国の偉業については聞きかじっていても、その最後についてはあまり考えたことがなかったものである。そんな私自身の“世界史”の穴を埋めてくれたのが、この作品だった。
氏のこの作品に続く「ロードス島攻防記」「レパントの海戦」、あるいはベネチア共和国の歴史を綴った「海の都の物語」を読むだけで、中世から近世にかけてのヨーロッパの歴史がかなり概観できると思う。その意味で、氏の作品は私にとっての歴史教科書だ。
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結末がわかっていても
2019/11/25 20:20
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
結末がわかっていても、どうなることかと思いながら読み進めました。感傷的でなく、乾いた感じの描き方で好きです。
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結末がわかる面白さ
2018/06/30 23:07
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ねったいぎょ - この投稿者のレビュー一覧を見る
コンスタンティノープルの陥落というタイトルで、既に結末を言っているわけですが、それだけに読んでいてぞくぞくするものがあります。登場人物がどう頑張ろうが、結末は変えられません。この本は、結末を勝手に変える歴史小説ではないからです。
コンスタンティノープルの陥落は、学校の授業ではそういったことがあったということだけ教えられるので、具体的に何があったかは知りませんでした。歴史の勉強をするなら、こういう本を読まなければなりませんね。
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東ローマ帝国の最期
2017/06/08 13:24
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投稿者:サラーさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
塩野先生の地中海戦記3部作の一つ。東ローマ帝国の最期とはいえ、注目されているのはヴェネツィア商人たち、それと今回の先生の推しメンであるメフメット2世です。この3部作はヴェネツィアが地中海における主導権を失っていく過程の物語でもあるので従来の同じようなタイトルの本とも少し違った切り口になっていて面白いかと思います。
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滅び行く帝国と勃興する帝国
2015/08/21 16:49
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:historian - この投稿者のレビュー一覧を見る
1000年に渡る歴史を誇る東ローマ帝国の首都・コンスタンティノープルも新興国・オスマン・トルコの攻撃の前に1453年5月29日、ついに最後の時を迎えた・・・地中海世界の歴史を変えた大事件を舞台に、滅亡を悟りながらも最後まで戦って都と運命を共にしたビザンツの皇帝と臣民、二百年間築いた権益を守るために立ち上がったイタリア商人たち、新興の機運に燃えるメフメト2世とトルコ人の生き様を、同時代に生きて記録を残した人々の目を通して描く。
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最盛期に向かうオスマン・トルコ帝国
2023/03/18 15:04
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投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
滅びゆくローマ帝国という見方より、最盛期に向かうオスマン・トルコ帝国という見かたの方が面白いかもしれない。なぜトルコがローマを滅ぼしたか という問題への解は、両国の歴史のふるさによる、政治制度 軍事制度 などなどの柔軟性があるが、特に宗教の寛容性によるところが大きいと作者は述べている。現代でも十分に通用する考えだと思う。
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魅力ある歴史上の登場人物たち
2012/11/27 00:25
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コーチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
コンスタンティノープルが陥落したのは1453年だが、ビザンツ(東ローマ)帝国はそれまでに実質上消滅していた。なぜならば、一方は海に、また他方は難攻不落の強力な城塞で守られた、ボスフォラス海峡に突き出た半島の先に位置するこの首都だけが、彼らの領土であったから。それより以前のスルタンは、この城塞都市周囲の広大な土地を占領しながらも、あえてこれを陥落しようとはしなかった。宰相カルリもビザンツとの共存を望む立場であったという。だが、これを奪い、帝国の統一を完成させることだけが若き王マホメッド2世の望みであった。
1000年以上もの間、ビザンツ帝国の都として栄えたコンスタンティノープルが、オスマン帝国によって滅ぼされる最後の1年の攻防を描いた本書においては、攻防戦に関わったさまざまな人々が「現場証人たち」として、小説の登場人物のように、語り、考え、行動している。
小姓トルサンによって語られた君主モハメッド2世は、冷静かつ冷酷に事をなしとげる指導者である。彼は、ビザンツの要人が見向きもしなかったハンガリー人ウルバンが売りつける大砲の威力を見抜き、それをコンスタンティノープル攻城戦で使用し、最終的に勝利をおさめる。戦いにおいては冷酷無慈悲だった彼はまた、征服した領地におけるキリスト教徒をまとめる役として、修道士ゲオルギオスを選び、ギリシア正教会の総主教に据えるなど寛容の政治を行う術も知っていた。塩野は、宗教的信条を越えて征服者モハメッドへと歩み寄ったゲオルギオスの行為が、その後の歴史の大きな灯となったことを示唆して、次のように言う。ここでいうイシオドスとは、ビザンツ帝国を守るため、カトリックとの合一を主張した修道士である。
「しかし、十九世紀に至って、それまでの四百年にわたるトルコの支配を脱して独立した、ギリシア人をはじめとするギリシア正教徒の根強さは、国を救うためならば宗教上の妥協はいたしかたないとしたイシオドロスの考えよりも、信仰の純粋と統一を保つためには、国が滅びることさえ甘受するとしたゲオルギオスの考えの方が正しかったことを証明してはいないだろうか。…ただ、トルコ支配下のギリシア正教徒は、殉教の喜びをより重視して猛獣の餌食になった初期キリスト教徒や、踏み絵をこばんで死んでいった日本のクリスチャンとはちがって、信仰にとって重要でないことは妥協し、他はただただ耐えつづけることで、彼らの信仰を守りぬいたのであった。」
臣下のフランゼスによって語られたビザンツ帝国最後の皇帝、コンスタンティヌス11世の高貴さにも、その悲劇的な最期の姿とあいまって涙を誘われる。トルコが、あれだけ冷酷な君主のもとで、着実に強大化していく一方で、どうして滅び行く国家の最期の元首には、このように能力はないものの人間的にはすばらしい人格者が多いのだろう。支配階級の貴族化は人格の高潔さを促進するが、為政者としての統治能力はむしろ減退させるものなのかもしれない。
本書にはこれ以外にも、魅力的な登場人物が描かれている。ある者は従軍した医師であり、またある者は同じキリスト教徒を攻めることに苦悩するセルビア人将軍である。ヴェネツィアやジェノヴァの商人もいる。さまざまな立場から眺められた、一国の滅亡のドラマが冷徹に描かれる、若き日の塩野七生、渾身の一作である。