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紙の本
逆説の日本史シリーズのテーマで聖徳太子から平城京にわたり冷静、時に熱く「史料至上主義」に対し迫っています
2019/08/22 14:43
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:多摩のおじさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
今年1月に亡くなられた梅原 猛氏の「隠された十字架 法隆寺論」や、関 裕二氏の今から20年以上も前から想像力溢れる自由闊達な今まで
とは異なった古代史論に魅了され、すっかり古代史に嵌ってしまいましたが、著者の逆説の日本史シリーズは、何故か手に取ったことがなく唯一、
足利義満をテーマの「天皇になろうとした将軍」のみで、本書を読んで、もっと早くから出会っていればと後悔ばかりでした。
第1章「聖徳太子編」、第2章「天智天皇編」、第3章「天武天皇と持統天皇編」、第4章「平城京と奈良の大仏編」の4章からなっていますが、
貫かれているものは、逆説の日本史シリーズのテーマである『歴史の宗教的側面を無視ないし軽視し、「サヨナラされたもの」の中から、日本史の
真実を発見しようと思っている』(p.44の要約)であり、各章毎で首肯せさられた主な点は、以下のとおりですが、これは本書で指摘の「史料至上
主義」に対する著者の熱いメッセージなのでしょう。
その中での圧巻は、第2章、第3章の天武天皇の出自の疑問(没年齢不明)、天智天皇の陵墓の書記での記述なしに着目し、天武天皇による
天智天皇の暗殺説(671年12月「扶桑略記」の天智天皇の沓が落ちていたところを山陵とした記述に着目し、両天皇の対百済・新羅への外交
の違い、671年6月天智朝の大宰府長官へのスパイ(栗隈王)着任、11月唐使来日、天智朝と唐の同盟締結の阻止のため暗殺)は、梅原氏や
関氏の上を行った実に説得力ある展開です。
ただ、両氏も指摘の称徳天皇の死により、結果として天武天皇の皇后で天智天皇の娘・持統天皇による天智朝復活(光仁天皇⇒桓武天皇)は、
実に歴史の不思議さ、皮肉さを改めて知った思いでした。
(第1章)
・殯の期間の短い崇峻天皇と藤ノ木古墳のもう一人の被葬者(穴穂部皇子)の比定と聖徳太子陵墓の検証(p.76-131)
・聖徳太子以降の「徳」の諡号をもつ6人の天皇の死の検証(p.131-198)
・「聖」「徳」のもつ意味(p.172,178,188,196,197)
(第2章)
・天智系(天智~光仁~桓武)と天武系(天武⇒称徳)の並列した系図(p.260)と泉湧寺での天武系の排除(-p.270)
・森鴎外の「帝諡考」での天智と天武の中国・殷の紂王とそれを討った周の武王の対比(p.273-288)
・天武の671年の天智暗殺説と三井寺(p.273-371)
・668年反新羅の天智朝から新羅人の道行が草薙剣を盗む(p.313-315)
・壬申の乱以前の天智朝の反新羅(親百済)体制、天武天皇の唐と断交し新羅と友好関係(p.316)
・壬申の乱で近江朝廷を裏切った天武のスパイ(天智朝の筑紫大宰の栗隈覆王)の存在と天智暗殺計画(p.318-338)
(第3章)
・梅原氏の指摘の持統から文武への祖母から孫への譲位と天孫降臨(p.395-397)
・持統が始祖となることで天智王朝の母系で復活(p.400)
・正史「続日本紀」での長屋王の無実(東人による長屋王の誣告)の記述(p.439)
(第4章)
・怨霊信仰の変遷および飛鳥、奈良時代の怨霊信仰の正史記載なしの指摘(p.459)
・藤原四兄弟の死を長屋王、大津皇子等のたたりと聖武・光明皇后の認識とその怨霊封じを目的に奈良の大仏を造営(p.444)
・光明皇后の強い薦めで国分寺、国分尼寺(法華滅罪之寺)建立(p.432)
また他の著者の作品の引用等の明記や的確な小見出し、著者への反対意見の反証も理路整然と語られている点も読み易さに通じています。
なお古代史の場合には、本書に限らず既出箇所の引用や繰り返しが多くなる傾向があり、引用頁や索引、また巻末の年表や系図がもう少し詳しい
と更に良かったですね。
電子書籍
読むと歴史が好きになること必定
2015/08/23 19:35
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:historian - この投稿者のレビュー一覧を見る
厩戸皇子はなぜ聖徳太子と呼ばれるに至ったのか?天智天皇は暗殺されたのか?天武天皇はいかなる血筋の人間だったのか?奈良の大仏が建てられた真の理由は?
学校で日本史を学んだだけでは思いつきすらしない疑問を解きながら、日本史を新たな視点から読み解くシリーズである。史料や引用の使い方がやや雑な面もあるが、斬新な仮説を古今の史料を用いて検証していく内容は大変魅力的で、時が経つのを忘れて読み終えてしまった。書いてあることが100%正しいとは言えないが、全ての日本人に読んで欲しいと言っていいくらいの本である。