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名訳者の嬉しい配慮と素晴らしい挿絵に溢れた新訳『高慢と偏見』
2022/05/26 21:17
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:永遠のチャレンジャー - この投稿者のレビュー一覧を見る
多少英語が読める素人が19世紀初めの原作小説を英文で読むのが如何に無謀な試みだったかを、私は心理描写の粋を極めたこの英文学作品から痛感させられた。
例えば、原作の英文では第三巻第45章にこう記されている。
While thus engaged, Elizabeth had a fair opportunity of deciding whether she most feared or wished for the appearance of Mr Darcy, by the feelings which prevailed on his entering the room; and then, though but a moment before she had believed her wishes to predominate, she began to regret that he came.
領地ペムバリーで偶然再会したダーシーを想うエリザベスの胸中の葛藤が描写された一節と判ったが、私の拙い読解力では作家の表現の妙を把握して愉しむゆとりが、全然なかったのだ。
そこで本書の訳文登場である。 「こうして皆が一斉に口を動かしていると、そこへミスター・ダーシーが入って来た。これはエリザベスにとって、その人の出現を願う気持と恐れる気持のどちらが本心かを決める絶好の機会であった。そのときの自分の気持で決められると思ったのだ。ところが、その姿を見た瞬間こそ、嬉しさが込み上げて来て、願う気持が本心だったのだと思い込んだものの、次の瞬間には、来てくれない方がよかったような気がし始めた」(453~454頁)。
日本語新訳で味わうと、乙女心の振幅激しい感情のもつれが全身に染みてよく解る。英語はやはり外国語だから、「ミス・エライザ」も「リジー」もエリザベスに呼び掛ける愛称だと知らぬと戸惑ってしまう(「ベス」や「リズ」なら何となく判るけども)。
人物呼称や愛称について、本書訳者が「訳者序」で親切に解説してくれている。英文学者らしい配慮だが、手紙文の作法も大変勉強になった。受取人払いなので余白を生じさせぬよう表裏にびっしりと文字を連ねる当時の書簡慣習やマナーなどは、手紙の文章をナレーションで済ませてしまう映画やドラマからは気付けぬ事柄だけに、まことに有益だ。
文庫本一冊に全三巻61章を収めた装丁の手際の良さも見事だが、大英帝国の揺籃期とも呼ぶべき時代を偲ばせる挿絵(イラスト)が載る頁が多く、気分転換や場面理解の一助となるこのお得感が一番嬉しかった。
【追記】 惜しむらくは、二箇所に誤植(語句不足と植字ミス)を見つけた。
一つ目は366頁二行目「エリザベスとマライア滞在」は「~マライアの滞在」でなければおかしい(マライアは地名ではなく人名だから)。
二つ目は657頁五行目「ミスター・ダーシーには云わないどいて下さい」は明らかに「~云わないでいて下さい」の筈。まさか急にここだけ関西弁の「云わんといて下さい」でもあるまい。関西生まれの評者は、一瞬そう読んで首を傾げたんやけども…。
出版社には誠意をもって改訂時の訂正をお願いしたい。
18世紀から19世紀のイギリスの作家ジェイン・オースティン氏の心和らぐ傑作です!
2020/07/20 09:34
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、18世紀から19世紀のイギリスの小説家ジェイン・オースティン氏の作品です。同氏は、当時のイングランドにおける田舎の中流社会を舞台として、女性の私生活を結婚を中心として皮肉と愛情を込めて描き、近代イギリス長編小説の頂点とみなされている方です。また英語における自由間接話法(描出話法)の発達に大きく貢献したことでも有名です。『分別と多感』、『エマ』、『マンスフィールド・パーク』、『ノーサンガー・アビー』、『説得』などの名著があります。同書もその中の名著の一つと言われており、内容は、「幸福な結婚にはどんな人が理想の相手だろう?」、「経済的理由で好きでもない人と結婚していいものだろうか?」といった女性の永遠の悩みがテーマとなった小説です。皮肉屋で誤解されやすいが誠実なダーシーと賢いようでいてそそっかしいエリザベスの、誤解からはじまるラブロマンスなのですが、著者のみずみずしく優れた人間観察に基づく細やかな心理描写は、ときおり毒もはらむが示唆に富み、幸福な気持ちにさせてくれます。ぜひ、この古典を読んでみてください。心が解き放たれるような気持にないります!
英国ロマンス小説の王道。
2020/08/30 18:55
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nako - この投稿者のレビュー一覧を見る
ちょっと長いけれど面白い。ロマンス小説の王道です。これを読んでいたら、イギリスで放映されたテレビドラマをもう一度見てみたくなりました。
皮肉に満ちたユーモアと見事な人物描写
2020/04/22 19:59
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゲイリーゲイリー - この投稿者のレビュー一覧を見る
約200年前の作品なのに未だに多くの人に読み継がれている本作。
200年も前なので時代背景はもちろんのこと、結婚に対する考え方や男女に対する考え方など多くの事柄が現代とは異なる。
にもかかわらず、本作が未だに不朽の名作と言われ続けるのは、人間の変わらぬ本質を見事に描写しているからだと思う。
見栄や虚栄心などよりも誠実さや謙虚さ。
お金目当ての結婚よりも愛があふれる結婚。
これら全ては現代に生きる私たちにも至極当然の様に納得できるであろう。
本作は時代を超えて人間の持つ普遍性を描いているため、今なお読み継がれているのである。
本作の魅力はそのテーマだけに留まらず、巧みな人物描写と軽快な文体にもあると思う。
主人公であるエリザベスやダーシーの心理描写や、互いの偏見の為すれ違っていく描写などは見事としか言いようがない。
個人的に最も素晴らしい人物描写と感じたのは、ベネット夫人やミス・ビングリーの様な無自覚な自己中心的人物である。
自己の利益を他人のためとすり替え恩着せがましくする描写、外聞や見栄などを何よりも気にする描写など「現代にもこういう人いるなぁ」と思わずにいられなかった。
また、その様な嫌な人物に対する皮肉に満ちたユーモアや会話劇などの軽快な文体が本作をとても読みやすくしていた。
今まで名作といわれてきたものを毛嫌いする傾向があったが、本作と出会い考えを改めた。
本作は、名作にはそれなりの理由があって読み継がれているのだと認識させてくれた。
今後も世界的名作を読んでいきたい。