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葉村晶史上、最もせつない事件。
2018/08/21 03:23
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投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
吉祥寺のミステリ専門書店のアルバイト店員でありながら、書店二階が事務所である<白熊探偵社>の専属調査員である葉村晶。単独の調査依頼はなかなかないので、昔なじみの大手調査会社の下請けの仕事を回してもらっている。
ある日、ある老女の素行調査のため尾行していたら、その老女が訪ねた相手・青沼ミツエと喧嘩をはじめ、二人が階段から転げ落ちて晶の上に降ってくる。おかげで晶も怪我をして、青沼ミツエと知り合うことに。彼女の孫・青沼ヒロトは交通事故に遭ってひどい怪我を負いリハビリ中、そして何故その事故に遭遇したのかを含め最近の記憶を失っていた。晶はヒロトから「自分の失っている記憶を埋めてほしい」との依頼を受けるが・・・という話。
帯には「葉村晶史上、最悪最低の事件!」とありますが・・・私としては「葉村晶史上、最もせつない事件」ではないかと。
ヒロトやミツエに対する感情は葉村晶には珍しいというか、いつも対人関係に一歩引いているところがある彼女がつい一歩踏み込んでしまったがためにこうむる痛手がせつないのです。『悪いうさぎ』とは種類の違うたちの悪い事件だということもあり、調査の過程もある程度解明された後もなんだかすっきりしない。
犯人がわかったからって、起きたことは変えられない、という不条理。
そして、彼女の衰えを感じてかなしくなる・・・彼女が衰えたことそれ自体にではなく、彼女自身が自分の衰えを思い知ってしまっていることに。
読者として「こいつがあやしいって!」と結構早めに気づくのに、彼女がうっかりスルーしてしまうなんて!
やはり体力が衰え、満身創痍でろくに食事もできてない状況では頭の働きも鈍るのか・・・。
探偵(調査員)の仕事は体力勝負、いくら生き方や覚悟が備わっていても若さにはかなわないのか。
これからの葉村晶の生活に、心配が・・・続巻よろしくお願いします。
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葉村晶シリーズの長編
2021/05/15 14:55
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投稿者:higassi - この投稿者のレビュー一覧を見る
おなじみの主人公「葉村晶」はもちろん、特徴ある、気になる登場人物たちの描写に夢中になっていると、実は様々な伏線が隠れているのが、シリーズ長編の魅力。次作以降も楽しみですが、それにしてもケガが多いのでお気をつけて。
電子書籍
大好きなシリーズ
2018/11/28 13:15
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投稿者:RASCAL - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヒロインで語り部でもある葉村晶は、吉祥寺のミステリ専門書店のアルバイト店員兼本屋の二階の「白熊探偵社」の唯一の調査員。東都総合リサーチの桜井から、石和梅子という老女の尾行という、桜井曰く「簡単な仕事」を下請けするも、喧嘩してアパートの階段から落ちてきた梅子と青沼ミツエの下敷きとなり流血。今回もいきなり不運な展開で、さすが晶さん、期待を裏切らない。
この怪我がきっかけでミツエの経営する古アパートに移り住むことになった晶。ミツエには光貴という息子がいたが、八ヶ月前にブレーキとアクセルを踏み間違えた老人がバス停に突っ込んできて死亡。一緒に事故に巻き込まれて重傷を負い、事故の前後の記憶をなくした孫のヒロトから、自分がなぜその場所に父といたのか調べてほしいと依頼を受ける。ところがその数日後、古アパートは火事になり、晶はなんとか脱出したものの、ミツエとヒロトは焼死してしまう。
交通事故死と失火による焼死、青沼一家を連続して襲った不幸に不審を抱いた晶の、どう考えても割に合わない調査が始まる。お約束のハードワーク、加齢も手伝って疲労困憊ながら、持ち前の腕前で真相を手繰り寄せていく晶に、犯人の魔の手が迫る。老女の下敷き、アパートの二階からの脱出に続き、またも負傷を追いながらも事件を解決、今回も八面六臂の大活躍の晶さんでした。
このシリーズの探偵役である葉村晶さん、危険を予感しながらも、生活苦とお人好しな性格のため、結局は引き受けて不運な目に遭う、その自虐的でシニカルな語り口がなんとも面白く、小説として読んでいて楽しい。また事件の真相も最後まで目が離せず、ミステリーとしても秀作。
前作の「静かな炎天」は昨年の「このミス」ランキングの2位に入賞、この作品も結構いいセンまでいくと思います。
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シリーズ最新作
2018/09/18 08:51
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投稿者:koji - この投稿者のレビュー一覧を見る
待望の葉村晶シリーズの新刊。
文庫本書き下ろしということは人気があるのかないのかどちらなのでしょう。
私の印象としては今作での葉村晶はそれほど不運でも男前でもありませんでした。
そういう意味ではちょっと残念な一冊でした。
ストーリーは伏線を張りまくりで最後には見事に回収されるのですが、
ただ、その伏線の多さが散漫な印象に繋がってしまった気がしました。
女性を主人公にして現代の日本を舞台にしながら、
こうしてハードボイルドな作品として成立させているだけでも稀有な作品であり
シリーズだと思います。
できれば、マンネリと言われるぐらい毎年新作を書いて欲しいシリーズです。
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久しぶりの葉村晶!!
長編だなんて嬉しすぎる!!
相変わらずツイてない探偵だけど、面白かった。
色々ほどけた時はなるほどーと。
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【仕事はできるが不運すぎる女探偵・葉村晶シリーズ最新長編!】尾行中の老女梅子が怪我をさせたミツエの持ち家のアパートに住むことになった晶。ミツエの孫ヒロトは交通事故で記憶を一部失って…。
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今回も葉村晶がひどいめに合いっぱなし。。。
でも、負けない晶がかっこいい。
引っ越しは余儀なくされるは、上から人は降ってくるは、本当に災難続き。
あの子、あの調子のいい子、いい子だと思ったのにな。
調子よく晶に近付いちゃって。
依頼された調査の結果が痛ましい。
しかし、瑠宇さんの恋の相手って、そうなの?!
いやー、びっくりした。
晶の、体を張った探偵稼業。
続きがあるならぜひ読みたい。
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「仕事はできるが不運すぎる女探偵・葉村晶」シリーズ長編。
今回も面白かった。
吉祥寺のミステリ専門書店のアルバイト店員をしながら、本屋の二階を事務所としている〈白熊探偵社〉の調査員でもある葉村晶。
尾行していた老女・石和梅子と青沼ミツエの喧嘩に巻き込まれ・・・。
登場人物の自分勝手さと都合よく使われる葉村晶にイライラし、とにかく葉村晶をゆっくり寝かせてあげてと思いながらも、展開が気になって後半は一気読み。
真相も扱っているネタも面白かった。
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私にとっては4冊目の葉村晶シリーズ。
今回は“初版限定付録・シリーズガイド”が付き、作者の文章も載っていて、なかなか面白い。
このシリーズ、通勤電車で細切れに読むには手強すぎるというイメージがあり、じっくり一気に読もうと、今回もまた夏休みをあてにして購入。帰省の新幹線の中だけでは読み切れず、帰った家の布団の上で読了。
色んな話が入り混じり、色んな人が登場し、164頁まで読み進めば唖然とした展開になるお話は、全てに因縁があり、読み終えた時には無駄な描写はなかったと気付かされる仕掛け。今回はそれなりに堪能できた。
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日本一不運な探偵葉村晶シリーズ最新刊。
いろいろあって古本屋兼探偵の葉村晶が尾行中の女性の揉め事に巻き込まれることから始まるストーリー。
相変わらず、不運でタフではあるのだけど、昔に比べて丸くなっていてクールでありながら情深くなっているよう。前は鉄仮面というか硬質な感じだったのが、年齢による体力の衰え、身体への負担等と共に人間らしくなっていってるよう(というと以前の葉村さんが人情がなかったかというとまた違うのだが)
それでいて周りからは一向に大事に扱われない感じがウェットになりすぎない、
お話は読んでいてカチリカチリとはまっていくのでテンポよく読めた。
話の中にミステリ好きをくすぐる書名が出てきたり巻末の富山店長の解説もいつも通り楽しませてくれる。
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女探偵・葉村晶は尾行していた老女・石和梅子と青沼ミツエの喧嘩に巻き込まれる。ミツエの持つ古い木造アパートに移り住むことになった晶に、交通事故で重傷を負い、記憶を失ったミツエの孫ヒロトは、なぜ自分がその場所にいたのか調べてほしいと依頼する―。大人気、タフで不運な女探偵・葉村晶シリーズ。
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概要のみ。
タフで不運な女探偵・葉村晶史上、最悪最低の事件が幕を開ける!
晶は尾行していた老女・石和梅子と青沼ミツエの喧嘩に巻き込まれる。ミツエの持つ古い木造アパートに移り住むことになった晶に、交通事故で重症を負い、記憶を失ったミツエの孫・ヒロトは、なぜ自分がその場所にいたのか調べてほしいと依頼する——。
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<葉村晶>シリーズの待望の新刊。
日本一不運で、同じくらいタフな女探偵の物語。
さて、今回は、どんな不運に見舞われるのか…。
で、やはり、のっけから不運をひっかぶり、ああ、いつもの葉村シリーズだと、妙に安心してしまった。
ホント、裏切られない。
これまでは、冷笑を浮かべ、皮肉たっぷりの目で周囲を見ていた葉村だが、最近少々、変化してはいませんか。
なんだか、ここのところ、体もメンタルも弱ってきていそうな。
それに、愚痴も多くなっている。
タフな女探偵も、もう、四十過ぎ。
仕方ないとはいえ、とんがったところだけは、
失ってほしくない。
それに、この作品でも感じたのだが、
葉村は結局のところ、かなりのお人好し。
彼女の周りには、常に、人の都合などお構いなしの人間が登場してくるのだが、彼らに心の中で毒づきながらも、ムチャぶりでもなんでも、つい、手を貸してしまう。
さらに、前々作と同様、今回も登場した当麻警部にもいいように動かされている感あり。
さて、葉村は、石和梅子という老女の尾行という下請け仕事を、付き合いのある「東都総合リサーチ」社から受けた。
梅子が訪問したアパートで張り込んでいたところ、突然、彼女と、訪問した相手、青沼ミツエがアパートの階段から転がり落ちてくる。
葉村は、その二人に巻き込まれ、ケガを負ってしまうのだ。
ミツエとの妙な縁がきかっけで、彼女の孫、ヒロトとも知り合う。
八カ月前、ヒロトは父親と一緒に交通事故にあい、父親は死亡、ヒロトは重傷を負った。
さらに、事故の前後の記憶をなくしている。
そんなヒロトから、父親と自分が事故現場にいた訳を調べてほしいと頼まれる。
調査を進めるうち、大麻、鎮痛剤の横流し、密売といった事実が浮かび上がり、事件は複雑化していく。
そして、ミツエとヒロトが住むアパートから火が出て、二人は…。
葉村シリーズの登場人物たちは、富山店長を始めとし、いずれも、一癖も二癖もあるしたたかな人間で、個性的といえば、そうなのだろう。
あまりにもキャラ立ちし、葉村がかすんでしまいそうだ。
それにしても、葉村晶という女性は、活字を追っていると、圧倒的存在感で迫ってくるのだが、どういうわけか、うまくイメージできない。
実写化されたら、ふさわしい女優は誰だろうと、想像してはみるのだけれど…。
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相変わらず不運をしょい込む四十路の女探偵・葉村晶。
今回も金持ちの老女の尾行のはずが、次から次へと思わぬ道へ流され、因縁めいた錆びた歯車に巻き込まれてしまう。
葉村自身、仕事に対して手加減しないが、不運の方もまた葉村に対して一切手加減しない。
けれど葉村シリーズを読破している私は、そんな葉村を見ても全く驚かない。
いつものことだ。
葉村には悪いがこうでないと面白くない。
いくら面倒なことに巻き込まれようと、常に冷静に洞察し対処するクールな葉村。
そんな葉村だからこそ追いかけずにはいられないのだ。
今回も
「飛べなくてもブタはブタだが、歩けない探偵は探偵ではいられない」
「ぬくぬくとした環境に長くいるとえぐみがでる。コーヒーも、人も」
等々の名言と苦笑いを残し読み手の元を颯爽と去る葉村。
私も顔をしかめる程のえぐみが出ないよう気を付けなければ。
次回作で葉村がどんな不運に巻き込まれるのか楽しみである。
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女探偵・葉村晶は尾行していた老女・石和梅子と青沼ミツエの喧嘩に巻き込まれる。ミツエの持つ古い木造アパートに移り住むことになった晶に、交通事故で重傷を負い、記憶を失ったミツエの孫ヒロトは、なぜ自分がその場所にいたのか調べてほしいと依頼する―。大人気、タフで不運な女探偵・葉村晶シリーズ。
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葉村晶ももう若くはない。それなのに、相変わらず不運で、巻きこまれ体質で、いつも身体中に傷を負っている。そして、その割に報われない。なんとも効率が悪くて、やるせなくなる。だが、目のつけ所、引っかかったことをうやむやにしない執念深さ、さらには若い時ほどではないとはいえ、そのフットワークの軽さと、なんだかんだで周りを巻きこみつつ情報を得る能力で、いくつも散らばっている謎を一本に束ね、最後には解き明かしてしまうのだから、もっと尊敬されてもいいのではないかと思ってしまう。今後もこの調子で探偵業を続けていたら、身体が先に音を上げるのではないかと心配してしまう。とはいえ、今回もまわりまわって真実に辿り着く過程を存分に楽しませてもらった一冊である。