紙の本
統合型リゾート(IR)=カジノ問題という現代的問題の闇を鋭く突いた内容に喝采。
2020/12/24 09:30
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
統合型リゾート(IR)=カジノ問題という現代的問題の闇を鋭く突いた内容に喝采。多くの国民が統合型リゾート(IR)推進法に対して、何故国が音頭取りするのかという疑問に切り込んだ素早い反応に流石と感心。現在進行形の問題だけに、最終的結末は読者である国民が決めていく問題という含みを持たせた結末も余韻があって良い。標題の「バラ色の未来」とは金の幻想に踊らされ一攫千金を夢見る人間の悲しい性に対する著者から国民すべてに対する問い掛けとも見える。劇毒でも手を出したくなる過疎地域の悲しい現実も垣間見えて来る。そうした意味では、2020年に突然、寿都町や神恵内村が手を挙げた「高レベル放射性廃棄物処分問題」にも類似性が見えて切ない気持ちにさせられる。
蛇足乍ら、本作が執筆されたのは2015年1月~2016年10月だと言う。現在「IR汚職事件」として社会問題化している事件の中心人物:秋元議員は2011年に受け皿企業を設立。2016年の統合型リゾート(IR)推進法成立を受けて、2017年9月には活発な汚職が始まっていたらしい。まさに金に群がる亡者たちの宴会ですね。本作はこうした動きを鋭く察知した上で書かれていたのだろうかと邪推したくなる。人間の欲望が向かう先、こうした問題は尽きることは無いのでしょうね。
紙の本
現代の預言者 真山仁
2019/12/25 23:17
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:はるはる - この投稿者のレビュー一覧を見る
現職国会議員が逮捕され、改めて読んで見た。真山仁の本は、福島の原発事故を先取りしたような「ベイジン」以降、とくに着目している。IRは、日本を幸せにしないのだろうね、きっと。
紙の本
新聞社の記者たち活躍ぶり...その描き方が面白かった。
2019/10/20 21:20
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
ホームレスの老人が代々木公園で倒れそのまま死んだ。そこから素性を追い上げて、数年前のIR誘致の顛末と、失敗。急増したギャンブル依存症患者の存在を隠し通そうする力の存在。あるいは、利権をめぐって多額の賄賂が飛び交ったり...と、現実にもありそうな話が展開。それらを逐一取材して裏をとり原稿にし、紙面にて世に問おうとする新聞記者たちの様子が面白かった。表題の「バラ色の未来」の意味はエンディングで明かされるけど、ジャーナリズムが機能する社会こそ、今の日本にとっては「バラ色...」と思う。ただ、IRが日本を再度豊かにすると信じて動く登場人物を置きながらIRそのものに関して詳しく掘り下げて描かれていないのがやや難点。やっぱギャンブルですよね...としか思えないまま。
投稿元:
レビューを見る
カジノ誘致に失敗し、身を滅ぼした元町長の鈴木一郎は、総理官邸前で「大嘘つき!」と叫んだ。東西新聞社の記者・結城洋子は、彼の境遇を知り、統合型リゾートの暗部を探る。だが、社の内外で無数の壁に阻まれ取材は難航。一方、華やかな表舞台の裏側では、それぞれの思惑を抱えた政治家や外資系企業が蠢いていた。記者たちは矜持にかけて、闇に潜む真相の解明に挑む!
投稿元:
レビューを見る
相変わらずスリリングな内容で、500ページ超の大作だが一気読み。現代と過去を行ったり来たりする書き振りで、テンポが心地よい。ただし、しっかり追いかけていないとどの時代の話をしているのか混乱してくるので要注意。
投稿元:
レビューを見る
IRを題材に、政治と金と地方再生の渦の中で、真実を追い求める記者の姿、心の動きが しっかりと描かれています。
どこにでもありそうで決して見えない闇に立ち向かう記者魂に感動しました。
投稿元:
レビューを見る
展開を広げたまま終わったなという印象。出てくる新聞記者=メディアを神格化しすぎたという気もする。スラスラ読めるが、読了後もいまいち腹落ちしない
投稿元:
レビューを見る
かっこいい。ひたすらカッコ良い話です。
断片的な情報を繋げてストーリーを作る編集長。
そういうことできる人ってとても重要だと思います。
投稿元:
レビューを見る
真山仁作品の好きなところは「必ず余韻を味わえる」というところなんじゃないかと思う。調査取材によってまとめられた記事が東西新聞の一面を飾るとき、そのときにどんなことが起こるのだろうか。ストーリーの中で読みたいような気持ちはありますが、そこを読者の想像に委ねてくれるところが、僕にはなんだかとても味わい深さをもたらしてくれているように思うのです。
現実の世界でもIRに踊っているバカどもはたくさんいるけれど、IRによってもたらされる世界が本当に「バラ色の未来」になるのかどうか?想像力を絞り出してよーく考えたらいい。それでも具体的に想像できないのなら…この作品をじっくり精読したらいい。馬鹿な政治家、バブル崩壊にこりていない守銭奴向けの良書です。
投稿元:
レビューを見る
IRを巡って政治家と地方の町長、新聞記者、そしてビジネスとの交錯した攻防。
IRの問題点がよく浮き彫りにされている。いま、日本でもIR候補地が名乗りを挙げ、それに伴って国会議員への不正献金問題で揺れている最中。
2015−2016年に書かれた小説だが、2019年を予感していたかのようだった。
投稿元:
レビューを見る
最近に国会議員が、IRを巡って収賄で逮捕された。
金額は、あまりにも小さく、なんとも微笑ましいなぁと思っていた。
中国人相手で、そのショボさは、日本の貧困を示している。
中国と日本の富裕層の富の格差が明らかになってきている。
小説になると、やはり賄賂の金額のスケールは大きくなる。
IR(カジノつき総合リゾート)の誘致を 青森県円山町のスズキイチロー町長が、熱心に、推進する。
IR誘致で、地方再生になるって、幻想で、誰がバラ色の夢になるわけでない。
結局 スズキ元町長は、ホームレスになって死体で発見される。
カジノつき総合リゾートが、起こす問題は、ギャンブル依存症だけでなく
その利権を巡っての、利益を貪る奴がいるのは明確で、
それを政治家が さらに貪っていく。貪りの構造である。
ここでは、山口県の出身の首相がIRを推進し、首相の嫁がギャンブル依存症になる。
東西新聞の結城洋子がチームを作り、スズキ町長の死から、
ギャンブル依存症夫妻の子供を巻き込んだ無理心中事件など
丹念に、調査して、新聞に アップしようとすると
山口県出身の首相は、憲法改正をぶち上げる。
新聞は、その記事が トップを飾ることに。
始末が悪いのは、新聞社のトップは、
首相のお友達で握りつぶそうとする。
この小説は、日本を支配する悪たちの悪巧みを暴き、
新聞記者は、「権力の監視」をすることが使命だという。
事実を隠蔽する仕組みや文書の改ざんなど平気で行い
マスコミや新聞社のトップをてなづけてしまう時代への警鐘である。
ギャンブル依存症の怖さが、もう少しリアルになるといいのだが。
真山仁らしい 本で、タイムリーな作品だった。
日本の未来は、薄汚れた色に彩られている。
投稿元:
レビューを見る
IR問題をめぐる人間の欲望を描いた。利権があれば人は群がる。それを暴く記者たちが主人公。この続きは描かれるのだろうか。
投稿元:
レビューを見る
今年(2020年)の初めの議員逮捕で、またぞろ世間の耳目を集めたカジノ法案(総合型リゾート/IR整備促進法)。候補地のどこに出来るかまだ未定ながら、例えば大阪にしても、開業は2024年とかなので、なかば忘却の彼方だったけど、そんな事件もあっての今、興味深く読むことができた。
真山仁作品は『マグマ』に次いで二作目。経済誌の連載の『ハゲタカ』あたりは読んでいたけど、途中でFade outしてしまい結末はしらないが、どの作品も、緻密な取材を重ねた、多岐にわたる情報量に圧倒される感があるのが著者の特徴か。さすが元新聞記者。
その著者が、IRにまつわる経済小説に、新聞記者の活躍という物語を交錯させて描く群像劇。群像劇なだけに、登場人物が多く(特に全国各地に居る記者たち)、最初とっつきにくいのだけど、個々の記者の取材が、有機的に絡んでくると読むスピードにドライブがかかる。後半は一気読みだ。
話のモチーフは、カジノ誘致に政財界が絡む、コテコテのどちらかというと古典的なお話ではあるけど、主人公は“記者たち”というのが、ちょっと新鮮だった。
若手記者に向けての社内研修のような場面から始まって、ベテラン記者からの教えや、新聞社における社内政治などに多くの頁を割いて描いている。帯にあるように“記者たちの矜持と執念が闇を照らす”とあるように、IRは題材に過ぎず、記者のあり方、マスコミの姿勢、調査報道の重要性を分からせてくれる物語かもしれない。
表面的には、カジノ法案を地方再生の切り札として導入した現政権に対する批判が目につくが、マスゴミとも揶揄される、大勢に寄った報道が目立つ今のマスコミに、先輩として「喝っ!」を入れているようだ。
これも帯に抜粋されているが、
「新聞記者の存在意義とは、すなわち、権力の監視 ― それに尽きる」
というベテランの元特ダネ記者の言葉に尽きる。大本営発表を垂れ流すだけでなく、たとえ成立した法律に則ったものであろうと、その適法性を検証し、問題点、不備を指摘し、大衆に知らしめるのが報道機関の使命。偏重報道は困るが、積み上げた事実に裏付けられた全体像を示してくれれば、あとの判断は受け取る側、我々の責任だ。報道と、読み手の関係も改めて考えさせられた。 良書なり。
投稿元:
レビューを見る
『バラ色の未来』真山 仁著
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
1.内容
国内のIR初誘致。
低迷する地方か?それとも総理のお膝元か?
①外資カジノ運営会社②政府③メディア④広告代理店。
この4者が、IR誘致というプロジェクトに対して対峙しあう。
2.真山さんのメディアに対する想い
真山さんは、記者経験のある作家さんです。
真山さんのメディアに対する想いを拝見することができます。
「取材なんて人に教わるもんじゃない。
事件が記者を鍛えるんだ。」
「記事。
社会に伝えるべき事実だと思えば、
躊躇してはならない。」
3.⭐️5この理由
IRがよい、悪いではなく、そのプロジェクトを何の目的でとらえるのか?
地方再生なのか?
インバウンドなのか?
税制面なのか?
小説を通じて、考えよ!の一石はありがたいです。
投稿元:
レビューを見る
総理にIRについて指南し、信頼を得て、地元にIR誘致させようとした青森県の片田舎の町長がホームレスとなり、公園で野垂れ死にする。
総理が態度を翻し、お膝元の山口県に最初のIRを立ち上げたことが背景にあった。
IR推進法を巡っては、アベノミクスの成長戦略の一環として期待される一方、今もカジノに関するギャンブル依存症の懸念が拭いされていない
また、広告代理店、経営会社、政治家などの間で利権の奪い合いが生じる。地方創生の旗印のもと、中央が進めるプロジェクトに踊らされて、地方が利権争いに巻き込まれる危険性も秘めている。
この小説は、そんなIRやカジノがはらむ社会的な問題を関係者の絡み合いや駆け引きを通して、浮き彫りにしていく。
著者は、裏で暗躍する広告代理店に対してギャンブル依存症を糾弾する姿勢で真相を暴こうと対峙する新聞記者の活躍に力点を置いている。 自分としては、それが小気味良く感じて好感を抱いた。
最後に、記者たちが不実や汚職に関する証拠を提示し、総理を追い込む場面は胸のすく思いがしたが、辞任するかどうかまでは描かれていない。「政治家の行動は読めないが、監視を続け、不正があった際は容赦しない」とベテラン記者がラストに胸中を語る言葉に著者が記者出身であることの矜持をお持ちなのだろうと感じた。