最北端に凛と立つ
2023/02/01 00:56
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
男社会の警察小説に、新たなヒロインの誕生を予感させます。釧路の路地裏を駆け回る、真由と片桐のバディものとしても続けてほしいです。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コアラ - この投稿者のレビュー一覧を見る
桜木紫乃の警察小説の第二弾(つまり二匹目のドジョウ)。第一弾の主人公松崎比呂の後輩が主人公。なんか複雑な生まれ育ち。ほんとうに桜木紫乃の登場人物はことごとくわざとらしく不幸な生い立ちだなと関心してしまう。前作「凍原」から「あ,この孝行息子が犯人だな」と思っていたら違っていました。しかしちょっと唐突だし,ミステリとしては成功とはいえないかも。プロットも不自然(いくらなんでも昭和(だよね)の時代にこんな不幸な生い立ちはないでしょう?)だし,犯人(というにはかわいそう)の動機も弱い。そんな理由で殺しちゃう?これって被告人の自白だけで起訴して公判維持できるのかな?と心配になる。評者が検事なら,証拠不十分で不起訴にしちゃいますよ。
まぁ,釧路好きの評者としては楽しめました。また釧路にいって街を散策したくなりました。
投稿元:
レビューを見る
釧路出身直木賞作家初めての桜木紫乃さん。柴咲コウさん主演ABC創立65周年記念スペシャルドラマ原作。釧路の海で老人の水死体が発見される。釧路、札幌、八戸を舞台に、女性刑事を含めた家族の血縁とは。シリーズ第1弾松崎比呂も読みたくなりました。
投稿元:
レビューを見る
TVドラマ版を鑑賞済みだが、原作から随分アレンジされているので新鮮だったし、前作「凍原」の比呂&キリさんも登場で何とも嬉しい誤算。警察小説やミステリー小説の体裁を取りながらも、作品の見所は決して謎解きではない。北海道の冷たい空気と空模様が醸し出す情景と、そこに生きる登場人物の悲哀が創り出す人間ドラマこそが魅力なのだ。桜木作品の女性達は覚悟の重みが違う。筋書き自体は二時間ドラマチックだが、全く陳腐にならないのはこの世界観あっての賜物。年老いた時、何の後悔も無く逝けるだろうか?私にその自信は未だ一欠片もない。
投稿元:
レビューを見る
桜木紫乃・唯一の警察小説シリーズ第二弾。しかも副題の通り、前回の松崎比呂からヒロインが変っている。新ヒロイン大門真由は、父の浮気相手により出産された捨子という奇妙な出生。両親とも元警察官で、父は現在脳出血直後からの入院生活を送っており、母は毎日病院のベッドサイドで一日を過ごしている。とりわけ父は現役時代に真由の職場では腕の良い有名な刑事であったらしい。
前作ヒロイン松崎比呂は彼女の唯一の同性の先輩であり、前作で比呂の相方を勤めた先輩刑事キリさんこと片桐刑事は本作でも真由の相方兼教育係のような立場で事件とその背景を成す壮大な物語に立ち会うことになる。
前作では樺太を舞台にした終戦時の日本人引揚に端を発する壮絶な女性の人生が背景になった北海道作家らしい力作であったが、本書も姉妹編というべき設定で、東北から北海道へ流れ着いてゆく人たちの血脈を背景にした骨太の作品であり、桜木らしく、娯楽小説でありながら、純文学に勝るとも劣らない筆力によって、そのストーリーテリングを支えている。
釧路の海で殺害され発見された老人の正体を追ううちに、大門真由が巻き込まれてゆくのは、青森・八戸と流れゆく女たちの歴史、彼女らの運命の変転の物語である。通常の警察捜査小説ではあり得ないようなリアルな設定に支えられ、真由とキリさんは、時間と経費に縛られた過酷な条件の中で、青森での広範囲な捜査と、印象的な出会いを果たし、殺人の裏に潜む壮大な家族の物語を紐解いてゆく。
現在と過去、釧路とそこに流れ着く前の距離、原罪と宿命。何よりも女たちの強さ、たくましさ、生命力。これらはすべて前作との共通項である。釧路はまるで漂泊の終わる土地とでも言わんばかりの風土である。
夏であるのに寒く、暗い海が深い霧に覆われる港町、釧路。ここに潜んだ人々の風土と時間とを、大河ドラマみたいな題材のように捉え、事件と捜査という形で描いてゆく。
無論、松崎比呂同様に、大門真由も出生や成長の過程で並みではない重荷を背負わされてきた女性であり、捜査官である。彼女の人生と事件とが重層的に重なることにより、この港町に展開する物語たちが響き合う。そんな厚みと深みを味わうことのできる独特の桜木節、三作目も是非あって欲しい貴重なシリーズである。
投稿元:
レビューを見る
少しずつ紐解かれていく被害者の過去と最後に出会った女性生い立ち。
どこにも逃げ場のない釧路の町で生きている人と過去の悔恨から行動を起こした老人の考え方、価値観の違いが悲しかった。
どちらの言い分も分かる。お互いがお互いの考えを譲らないゆえの悲劇。
桜木作品はどれも北海道の底冷えする温まることのない寒い長い冬を連想する。
どんなに凍えるような冬を過ごすことになってもそこで生まれ育った人はそこで生きていくしかないという諦観をおぼえる。
投稿元:
レビューを見る
テレビで見かけ、昔関係があった人物を訪ねたことが遠因となって殺されるというシチュエーションは、松本清張著『砂の器』を連想させる(テレビと映画の違いがあるが)。
だからといって、もちろんこの小説の質を貶めるものではない。
主人公の女性刑事の家族環境が、事件関係者のそれと重層的に設定されることで、彼女たちを同一線上に立たせる。
殺人事件の捜査が主筋となるミステリー仕立てだが、釧路の気候と登場人物たちの背景が見事にマッチング。
北原白秋の詩が、被害者の心境を映すかのように全編に通奏低音の如く流れ、馥郁とした文芸作品となっている。
投稿元:
レビューを見る
釧路市の千代ノ浦海岸で発見された老人の他殺死体。孤独だった被害者が人生の最後に、恋心と悔いを加速させすがろうとした縁。直木賞作家唯一の長編警察ミステリー最新作。
人間は年齢を重ねると、自己中心的な考え方が自分の中で正論化される。他人の気持ちよりも自己満足が優先されるため、所謂お節介が過ぎてしまう。誰も悪くないのに起きた不幸…やりきれない思いが残る作品。
投稿元:
レビューを見る
絡み合った人間模様。
拭いきれない過去。
そうだったんのか。と思ったところもあるが、淡々と進む内容に若干の物足りなさを感じました。
過激さ?を求める自分がいます。
投稿元:
レビューを見る
桜木紫乃の釧路を舞台にした女性刑事シリーズの第二弾。第一弾に登場の松崎刑事の後輩が主人公。釧路〜札幌〜八戸とつながる昭和30年代的な親子別れの悲しい物語と刑事自身が養子であることの母との葛藤がギリギリうっとおしくない程度に微妙に絡まる。
前作よりも釧路らしさは薄まり家族とか親娘とか父娘がミステリーのサイドストーリーかな。
桜木紫乃の作品でよくある話が複雑すぎてメインストーリーに迷ってしまうのは相変わらず。塩谷省三の解説が良かった。
3.5
投稿元:
レビューを見る
血の繋がりに固執する人間と、情が薄く、それを意識もしないで生きていく人間。戦後の混乱期に離れ離れになった人々を調べていく過程で、また、自らの出自にそれを重ねざるを得ない主人公の心情。深いです。ドロドロです。
釧路という舞台。夏がなく、濃霧や曇天が極端に多い土地。これが、この物語の背景にピッタリはまっています。
氷原と比べると、プロットがしっかりしていて、完成度の高い1冊になっています。
投稿元:
レビューを見る
良質なミステリーです、言葉の一つ一つや文章全体から発せられるものは、桜木紫乃さんの作品に間違いありません。
投稿元:
レビューを見る
良かれと思い行動に移すことが時として、他人を傷つける。
結果として、独り善がりとなる。
人の性とは なんとも やりきれない
投稿元:
レビューを見る
殺害されてしまった彼は、けして悪い人では無いし何なら良いこと善意で動いていたのだけど。善意が時として悪意と変わらない、というのが辛いですね。
北海道を舞台としており、戦中戦後の話も混じるので、令和の時代にピンと来ないこともあるのですが、こうやって歴史というのは繋がっているんだなと感じます。
私はミステリーが好きなので、それ以外の作品は読むか分かりませんが、良い作者でした。
投稿元:
レビューを見る
「詩」と「親子」がモチーフで思い出すミステリーといえば「人間の証明」なのだが、この作品もまさにそれ。
過去は過去として忘れられはしないけど、今の生活が平穏なら今を大切に生きていこうとする人と、
なんとしてでも昔のことをはっきりさせよう、親子の対面を果たそうとする人の、
悲しい結末。
どちらも悪者ではないし、前者が薄情なわけでもないし後者だって善意。
さまざまな人間模様に、ページをめくる手が止まらなかった。
やっぱりたまには読みたくなる桜木紫乃。
文章がとっても好き。