馳星周氏の古代史に隠された闇を抉り出した著者初の歴史小説にして会心作です!
2020/07/20 17:12
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、『不夜城』(吉川英治文学新人賞)、『鎮魂歌―不夜城II』(日本推理作家協会賞)、『漂流街』(大藪春彦賞)などの傑作を世に送り出してこられた馳星周氏の会心作です。時は7世紀末で、先の大王から疎まれ、不遇の時を過ごした藤原不比等ですが、彼の胸には、畏しき野望が秘められていました。それは、「日本書紀」という名の神話を創り上げ、天皇を神にすることなのです。そして自らも神となることで、藤原家に永遠の繁栄をもたらすことだったのです。万世一系、天孫降臨、聖徳太子など、すべてはこの男がつくり出したのです。古代史に隠された闇を抉り出した著者初の歴史小説にして会心作です。ぜひ、読んでみる価値ありの大作です!
等しく比べものなき
2020/05/14 09:47
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kotep - この投稿者のレビュー一覧を見る
乙巳の変、壬申の乱以降の天皇家での後継者問題に藤原不比等が関与し、権力を握っていく過程を描いた作品。
この作品を通して女性天皇の成り立ちを理解することができたと同時に藤原氏が天皇家から重きを置かれたことも理解できた。
平安時代の藤原時代の栄華の原点がこの時代にあったような気がする。
不比等と三千代の野望
2021/08/09 20:20
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投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
偽の歴史でも、皆が信じれば正しい歴史となるという不比等の言葉の凄み。父親の鎌足の死後不遇であった恨みを晴らす為、藤原氏だけが栄える為に手段を選ばない様が凄まじかったです。不比等の野望に気が付きながらも自分の子孫だけを皇位につける為に利用した持統天皇の描き方、不比等の妻三千代の辣腕ぶりも興味深いものがありました。元正天皇が主人公の永井路子「美貌の女帝」のような、詳しい系図が出ていると更に良かったです。続編もありそうなので楽しみにしています。
藤原不比等の真実
2021/11/05 21:56
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投稿者:だい - この投稿者のレビュー一覧を見る
記紀は、持統天皇からの皇位継承を正当化するために編纂されたことなど、ノンフィクションならばと思うと、日本の歴史を考えさせられる一冊
聖徳太子が架空の人物ならば、十七条憲法は誰が作った?
法隆寺は誰が創建した?
伊勢神宮は?出雲大社は?
と考えてしまうことが、すでに藤原不比等のフィクサーとしての策略なのだろうか・・・
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彼の名は藤原不比等。自らの野望のために一三〇〇年の間、日本人を欺き続けた男――。ノワール小説の旗手が放つ、衝撃の古代歴史巨編。
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馳星周『比ぶ者なき』中公文庫。
馳星周の初の歴史小説。馳星周よ、ついにお前までもかという怒りを感じた。歴史小説家には失礼かも知れないが、自分はかなり以前から、現代小説から歴史小説に転向する作家は創作のアイディアが枯渇したために過去の事実に脚色を加えた小説世界に走るのだと考えている。
藤原不比等を主人公に、天皇を神格化するために日本書紀という神話を創り上げる歴史の闇を描いた作品である。7世紀末の日本には日本人は天皇家とその取り巻きの30人しか居なかったのかというくらい余りにも狭い世界観。歴史読本を読むかのような人物造形の薄っぺらさ。新たな分野に挑んだ勇気は認めるが、馳星周が手を出すべき小説のジャンルではないと思う。馳星周ならまだまだ現代を舞台にしたピカレスク小説が書けるはずだ。勿体無い。
本体価格860円
★★
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然程、小説作品が多くはないかもしれない、古代史の世界を背景にした物語なのだが、巨大な野心を胸に大胆な活動を展開したという男の生き様という感である。
『比ぶ者なき』(ならぶものなき)という題名であるが、これは本作の主人公の名に由来するものである。「藤原不比等」という、「日本史の教科書で、とりあえずその名を視掛けたような?」という人物が主人公だ。「不比等」という名は「等しく比ばず」ということで『比ぶ者なき』(ならぶものなき)なのだ。
本作の始めの方で、藤原不比等は「史」(ふひと)と名乗っている。寧ろ不遇な状態であるが、大海人皇子(=天武天皇)の後継者と目された草壁皇子に仕えていた。この状況から、『比ぶ者なき』(ならぶものなき)となって行くまでの物語が本作だ。
古代史の世界を舞台とはしているが、理解者や敵対者との色々な交わりの中で「巨大な野心」を燃やす男の物語として、或る程度「普遍性」を帯びているのが面白い。そして、本作の中で明らかになる「巨大な野心」の正体が興味深い。
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馳星周の北方謙三化といえば怒られるか。
藤原不比等という、教科書では父である鎌足や子孫の道長よりマイナーな存在である人物が、実は古代史を塗り替えた張本人であるという説をベースに、物語を構成。とても面白かった。里中満智子「天上の虹」を読み返してみたくなる。
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強烈なリーダーシップで大和朝廷を動かしていった藤原不比等の権謀術策を、見事に描いた一冊。
まるで囲碁将棋のように詰めていく恐ろしさは、一周回って見事と感じさせる。
政治家の見本のような人物。
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歴史小説。歴史が、物凄く苦手な私ですが、小説だと読みやすく感じるので、たまに読みます。鸕野讚良皇女(持統天皇)が、孫の軽皇子を玉座に座らせるために、藤原不比等と手を組む。藤原不比等は、自らの野心を叶えるために利用する。聖徳太子が、不比等により作られた人物だとは、驚きでした。不比等の自身の野心を叶えるために、先々を見て政をする執念は、凄いと思った。あらゆる全てのことを見通す力が半端ない。この後どうなっていくのか、続編も楽しみ
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馳さんの本は初めて読みました。歴史の教科書などで名前だけは知っていた藤原不比等。その人物像を興味深く読ませてもらいました。ぜひ続きを読みたいです。
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ふらっと入った本屋で平積みされてたのを直観で購入。こいつぁ大当たりだった!
読んでて日本史の記憶がふわっとよみがえる瞬間が何度もあり、更に調べたくなる欲求を抑えながら読みました笑
いやぁ、書くのがうまいってことだよね。
読者の知識レベルはバラバラだろうに、それでもあっと言わせる感じは読み応え抜群です。
あとがきの対談で続編書きたいって言ってたけど、こっちこそ続編読みたい!!
特に長屋王、これからどう動くよ。(ざっくり覚えてるけど笑)
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日本史で真っ先に学ぶ時代だし、残された資料が乏しいこともあってか覚える事項も少ないから、比較的記憶に残りやすい天皇黎明期の物語。なるほど、タイトルは不比等由来って訳か。天皇制にとって都合よく捏造されたという日本書紀の解釈も、かなりの説得力あり。そういった常識をひっくり返される爽快感と、テンポの良い展開に、ついつい頁を繰る手が止まらなくなる。それは間違いないんだけど、でも何というか、登場人物たちの薄っぺらさはどうにかならんものか。主役たる不比等も含め、こんなにも裏表のない人たちばかりじゃ、予定調和の展開にしかなりゃしない。ちなみに腹黒さと裏表は別問題で、不比等の腹黒さとかなかなかのものなんだけど、それもとことん腹黒いというだけ。歴史小説である以上、予定調和は当たり前、ではなく、自由度の高い時代を書いているんだから、そのあたりは作者の匙加減一つだろうし、人物像も作者の手一つでしょ。”不夜城”も確か、ちょっと不全感が残ったような記憶があるけど、自分にはこの作風が合わないんだろう。
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藤原不比等…飛鳥の世にもこんな人が。世の中権力者の都合ばかり、自分の一族の繁栄の為に利用できるものはなんでも利用する。しかも騙しのスケールは国家レベル
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歴史小説だけれど、難しい説明文はあまりなく、ストーリーがほぼ会話で進んでいくのでとても読みやすかった。これがハードボイルドの印象の強い馳星周の作品だなんて!この本に出会えて良かった。続編もあるようなのでそちらも楽しみ。