紙の本
海の都の物語、ローマ人の物語「ユリウス・カエサル」を彷彿とさせる代表的塩野作品
2021/02/09 22:14
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投稿者:NCC1701H - この投稿者のレビュー一覧を見る
女子高生が推しのアイドルを称えるが如き賞賛をもって書いたようなローマ人の物語「ユリウス・カエサル」や海の都の物語のヴェネツィアの続編かと思われる作品。好きなものを讃えられずにはいられない乙女心を感じられる。
読みずらいととらえる人もいるかもしれない独特の表現が、その純真さから湧き出てきた文章に表れている。
過去の作品を引用として宣伝しているところは少し鼻につくが、愛嬌として捉えれ読む。
何より彼女の作品の魅力は、続巻への期待感を前巻の最後に上手に記すところ。
最終巻の終わりに比べ天と地ほどの読者の心を掴んでいると思う。だから下巻は初版で買うしかない。
紙の本
時代は12世紀の中世ヨーロッパ、物語と言うよりも伝記的な記述が中心
2020/01/22 17:06
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投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
長い暗黒の中世の終幕に彗星のごとく現れた皇帝フリードリッヒ。皇帝フリードリッヒ二世が正妻、愛妾ふくめて11人の女性との間に15人(男7人、女8人)の子供をつくっている。彼の場合、欲しかったのは女よりも子供であった気がする。フリードリッヒ2世は幼くして両親と死別し兄弟はおらず、という境遇。育つに連れて「後継者以外にも一門男子が欲しい。たくさん」「娘でもいい。部下と結婚させて一門にすれば忠誠値が減らない」という意識が強まったのだろう。「玉座に座った最初の近代人」(ブルクハルト)と言われていても、まだ「身内の結束」が一番マシな紐帯である中世に生きていたのは間違いない。誰ひとり疑問を抱かないレベルでの「高貴な血筋」に生まれた身であり、金も力もなくすべて「自力で勝ち取った」という精神的なバックボーンがフリードリッヒ2世の強い自負心を支えたのだろう。あの時代に近代人になるには、その両方が必要だったのだろう、と思う。
紙の本
歴史小説と言うよりは史伝
2023/03/18 14:42
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投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
作者塩野七生の作品は初期の段階のいくらかは小説っぽいが(愛の年代史など)、それほどできが良いものとも思えない。むしろ「海の都の物語」に連なる「史伝」にその真価が発揮されていると思う。作者自身もそう思っているようで、その後の作品は史伝系の作品とエッセイばかりである。この作品も作者自身が惚れ込んだ工程を描いており、いわゆる「筆が踊っている」作品である。作者自身の宗教観が、主人公の皇帝を通じて表現されているところも面白い。
電子書籍
反逆者
2023/01/30 18:59
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
次々と続き柄読みたくなりました。一気に読み終えました。下巻は、多分……と、想像すると、よみにくいなぁ……だって、世界史でも習いましたが、反逆者として、よくは書かれていないんですよね……。
紙の本
中世紀行
2020/01/27 08:08
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投稿者:あゆ - この投稿者のレビュー一覧を見る
難しい!歴史、地理に疎い私には難しすぎる。何冊も挑戦するものの、今回も難しすぎて、1巻目でギブアップ。もう少し、万人にも馴染みやすい解説で紐解いて下さればと切望します
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作者は以前からこの本を書きたかったという。
上巻を読んでつまらなくは無いがドラマは無いという印象。個人的にも興味ある主人公なので下巻も購入したがどうだろう?
チェーザレボルジアのようなハラハラは無いかな?
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☆☆☆2020年1月レビュー☆☆☆
フリードリヒ2世は、高校で世界史を勉強した人でもなじみの少ない名前ではないだろうか?
僕も塩野氏の作品に出会う前はほとんど知らなった。
「最初のルネサンス人」と言ったら、興味をそそられるだろうか? 暗黒の中世と言われたヨーロッパにあって、「政教分離」という、今では常識となっている考えを推進した皇帝、と言えるだろうか?
日本で政教分離を推進したといえば織田信長だが、行動力の面でも信長に近い気がする。性格の激しさという点では少し違うかもしれないが・・・。
上巻では、孤独な少年時代から、インノケンティスウス3世の庇護を得てドイツに向かう場面、そして戴冠と、若さと勢いが感じられる内容。彼は10代にして、中世のもつおかしさ、教会が絶対的な権力で世俗に口出しすることに違和感を感じていたようだ。シチリアの風土だけでなく、彼の才能による部分が大きいと思う。
歴史好きなら絶対に外せない一冊。
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文庫化するの待ってました!外交による領地交渉、政教分離、法治国家、市場経済主義、そして後継者である次男との密なコミュニケーション(長男の教訓を経て)。現代にも通ずる統治センスを持つ為政者が暗黒の中世にいた奇跡。ロンバルディア同盟も降し、下巻はいよいよ宿敵・法王との激突!
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中世ヨーロッパに生まれ、神聖ローマ帝国皇帝として13世紀にかけて中央集権国家を築き、政治の面で神からの解放を進めたフリードリッヒ二世の生涯を塩野先生が書いています。
大きな目標を成し遂げるときは、合理的・現実的な選択の積み重ねで実現していくというのが王道の手段というのは、いつの時代も変わらないのかな、と思いました。
一番印象に残った文章
「法律は、施行しだいで良き法にもなれば悪法にもなる。それを常に意識しているのが統治者の責務の第一になるが、忠実に実施することこそが法の番人の責務と信じて疑わない人々から見れば、これさえも既成の秩序の破壊に映るのだった。」
これとセットで、異端裁判所の話が心に残る。
自分たちのしていることが正しいと信じて疑わない、と偏ることがいかに怖いかは、新型コロナで社会がギスギスしている今だからこそ強く感じる。
(結局、人の心っていつの時代も変わらないんだね)
自分の考えや信念を信じることは大切だけど、もう一人の自分がいかに客観的に自分の偏りを見られるかも大切だと感じた。
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法王と熾烈な闘争を繰り広げたことで知られる、中世きっての知識人であった皇帝フリードリヒリッヒ二世の前半生。
エルサレムを血を流さず手に入れ、南イタリアのイスラム教徒と共存し、ミラノ大学を設立。
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本書の時代は日本では鎌倉時代か。この時代にヨーロッパでこんなダイナミックな動きが進行していたとは全く知らなかった。いや面白い、中世ヨーロッパにこのような君主がいたとは。
歴史上の人物を、現代人に理解できるような文章で魅力的に紹介することが著者の得意とするところなのだろう。
小生は「ローマ人の物語」を読むのが楽しく、あの大部冊を繰り返し愛読した。
本書の主人公は「カエサル」の次くらいにいい男である。著者は惚れた男を描くと文章が光る。
「フリードリッヒ二世」、世界史で名前くらいは出てきていただろうか。日本では業績なぞ全く知られていないのではないだろうか。この時代に法による支配を打ち出し「憲章」を制定するとは。もっと取り上げられても良い君主だと思った。下巻も楽しみである。
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久しぶりに塩野センセイの授業を受けた。
徹底的な時代考証をして、架空の人物によるドラマは無しで、それでも時間を忘れて読み進む面白さ。
感想はほどほどに、下巻を開くこととする。
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「ストゥポール・ムンディ」(世界の驚異)と同時代の人達に畏敬され、公式にはラテン語で「フリデリクス 神の恩寵によって ローマ皇帝アウグストゥス イェルサレムとシチリアの王」と称したというフリードリッヒ2世という人物…なかなかに興味深い訳だが、本作はその人物の生涯を概ね編年式に追いながら語る物語だ。
本作は、“主人公”であるフリードリッヒ2世等の史上の人物達をモデルにした劇中人物達が勇躍し、苦悩し、歓び、怒るというような「小説」ではなく所謂「史伝」という読物である。或いは、日本国内ではやや馴染みが薄いかもしれない欧州諸国の歴史を題材としながら、非常に読み易い感じだ。実は同じ著者の他作品も過去に読んでみた経過が在ったと思う。
俗に言う、欧州の「中世」というようなモノがどういうものなのか?その時代に「忘れられてしまった?」というような概念を実現しようとしていたかのような、皇帝としての行動を説くことで、寧ろ「中世」なるモノの姿が形を帯びるというような感だ。なかなかに興味深い。
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塩野七生先生がずっと書きたかった人物を書いた本が文庫になったということを知り、購入しました。
高校時代に世界史を学んでいましたがあまり記憶に残っていない人物だったので、新鮮な気持ちで読め面白かったです。
ローマ法王の権力が絶大だった中世時代に、法王とどう折り合いをつけて改革を起こしていったのか。ルネサンスに繋がる一大人物の生き方は魅力的でした。
下巻の内容がたのしみです。
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塩野七生先生が描きたかったという、皇帝フリードリッヒ二世。
中世では、異端ともされてしまうくらいの圧倒的な先駆者。神聖ローマ帝国の皇位とともにシチリア王国の王位までももちながら、イェルサレムを無血開城してしまい、ローマ法王に破門されてしまったりもする。彼の信念は貫かれており、「皇帝のものは皇帝に。神のものは神に。」であった。だからこその、イスラムのスルタンと学問での友達にもなれたのだろう。
時代が時代ならば、もっと名君として君臨できたのではないだろうか。
彼の一生を描くには、ローマ人の物語やヴェネツィアの物語、十字軍の物語などなどの前段階がないと書けないような濃厚な作品に感じられた。