現代社会の様々な問題点をテーマに据えつつ、女性キャラクター同士の安心感のある関係を描く
2021/03/31 19:29
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投稿者:3π - この投稿者のレビュー一覧を見る
数ページ読むだけで死にたくなって最高。堀口の言動を読みながら「自分はこんなやつじゃない」と、自分との違いを必死に見出だそうとしてしまう。
ジェンダー規範、虐待、毒親、性暴力、ネオリベラリズム社会、恋愛せよというプレッシャーなどへの違和感・抵抗……が、主なテーマだと思う。武田綾乃らしく、男性は基本的に無力化されるというか重要登場人物にはならず、シスターフッド的な物語にもなっている。ので、多分百合作品として読むこともできると思う。
愛されていると思うこと
2021/04/04 07:28
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投稿者:GORI - この投稿者のレビュー一覧を見る
若い作家がこのようなテーマを書いた小説がたくさんの人たちに読まれているという現実。
何かの書評か売筋を見て、図書館に予約したが、読んでいて辛い物語だ。
親が子供を虐待すると、子供はおやの機嫌を損なわないように振る舞う。そして子供は愛されているんだと思い込もうとする。この生活を続けるために、生きるために、愛されているんだから、当然と我慢し続ける。
物語には3人の同じ大学に通う女学生が登場する。
誰もが自分より不幸な奴はいないと比べて安堵したり、自分の価値を守っているかのような3人。
愛されたい世界から抜け出した二人の生活が物語に光を与えている。
抱えた不幸は大きなものだが、二人にはどこか泰然と受け止めながらも生きていけると思わせる力があった。
そこがこの物語の良さなのだろう。
たくさんの若者に読まれるのは間違いない。
表紙イラストが象徴的
2022/10/14 10:44
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投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
心に何かしらを抱えた貧乏女子大生の共同生活を描いた作品。友達がいなくても、金がなくても、愛されなくても、可哀相に思われたくないと思いながら歯を食いしばって生きる二人組の生き様が良い。自分の幸せは自分で決める、なんて陳腐な言い回しになるけど正しい
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
宮田くんみたいな大学生の同級生いました。家にお金を入れるため、ひたすらアルバイトして……。しかしこのオカーサン、浪費し過ぎだなぁ。で、宮田くん、お金も時間もなかったのに……ある出会いから、……
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胸がヒリヒリする様な感覚でした。
毒親に育てられた3人の子達。
親に身売り迄させられて、親から逃げた江永。
愛されてると思い込み、それを見て見ぬふりをしている陽彩。
愛してるが重いく、束縛される木村。
全員がヒリヒリする感覚がこびりつき、切なくも懸命にそれから逃れようとする姿がやるせなかったです。
それでも、その毒親から解放を望み、自分の意思で縁を断ち切って前へ進んだ江永と陽彩は救いがありそうでしたが、木村はどうなのかなぁ?彼女は自分から縁を断ち切る事は出来ないままな気がしました。
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なんなんだ、このサイテーで最悪のすがすがしさは!!
親に搾取され人生を翻弄されてきた宮田と江永。二人が生き延びていてくれてよかった。「家族」という地獄から逃げ出せてよかった。そして二人が出会えてよかった。
ここに描かれる二人の人生は特殊なものだろう。けれどその一部分ずつは多分どこにでもある、誰もが多かれ少なかれ経験したり考えたりしたもののはず。
自分の人生を自分の足で歩くこと。本当の意味でのその一歩を踏み出すことは、想像以上の苦しみを伴うのだろう。「親」という足かせがある限り。
親は子どものことを心から愛している。だから子どもはその愛を無条件で受け入れ、そして報いなければならない。これが当たり前のこととしてすんなり受け止められる人は、自分が思うよりずっと幸せなのだろう。
当たり前のこととして誰彼なしにそう言ってきた自分を今ものすごく恥じている。苦しいくらい恥じている。
二人が出会い、一緒に暮らし始めてからの日々。それぞれが少しずつ「まとも」になっていく過程がうれしい。
宮田が無茶なバイトをしなくてすむこと、江永の行儀がよくなっていくこと。今までの二人に足りなかった部分が付け加えられていく。そんなささいな変化に小さく微笑む自分がいる。
母親からの呪縛を逃れたい木村との顛末。本当はどうすればよかったのか。何が正解だったのか。
二人からしたら恵まれている幸せな環境にある堀口。彼もまた二人と出会うことで、いや、二人が変化していくことで自分自身の何かが変わったことに気付いているだろうか。
えぐられるような痛みと得体のしれない後悔と行き場のない涙。
それは自分の中の「愛情至上主義」との決別なのかもしれない。
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世間的に言うと、家庭環境が悪い「不幸」な大学生たちの話。
引き込まれた。
読んでいるこちらが辛くなるような壮絶な過去から、周りから見れば恵まれているのでは、と思われるけど本人はしんどいような子まで。
家族がいない方がいいと思っているのに、かと言って捨てきれない情の部分もあるのがわかり、なんともしんどい。
不幸自慢してしまったり、自分より不幸じゃないからと相手をジャッジするべきでない、というくだりには共感。自分もやってしまいがちだなと思う。
「無償の愛」の搾取に嫌気が差し、「愛されなくても別に」というタイトルに納得感があった。
あと、マイナスをゼロに戻す作業がしんどい、というのにも共感。
最終的に彼女たちが自分たちの居場所を見つけられたのならいいなと思った。
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誰の幸せも不幸も他の誰にもわからないし、誰の幸せも不幸もわからないなら、自分自身の幸せも不幸も何一つわからない。経済的余裕があっても不幸だし貧乏でも幸せだし、誰からも愛されなくても生きていけるし誰かを愛せなくても不幸じゃない。
お前の不幸なんて知らないし私の幸せをお前にわかって欲しくもない。
幸せかどうか不幸かどうかなんてクソほどの価値もないのかも。
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共感できるところかが沢山あったし、こんな風に思っててもいいんだと思えた。
何を以って,不幸かなんてわからないし,相手がどんな生き方をしてきたかなんてわからない。
自分がしてきた苦労や不幸をかざして,私の気持ちなんて他人になんてわからない…なんて思ったり言ったりするのはやめよう(笑)
宮田&江永 出会えて良かったね。
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表紙に惹かれて読みました。
「親」だからというだけで手助けしたりすべてを許さなきゃいけないわけじゃない。
許していないから親を愛していないわけじゃないし否定いるわけじゃない。
合わなければ離れればいい。
親も人間関係のひとつにすぎない。
そう思える本でした。
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自分が如何に安全かつ安心な場所で当たり前のように愛を受けていたか、作中の彼女達のストーリーを読んで、ハッとさせられました。
自分の親は毒親じゃないか…?と疑ったことは何度もあるし、親の言動が自分の今の負の面に全く影響していないかと聞かれると必ずしもそうだとは言えないけれど、結局それはどこの家庭でもありえることで、作中の堀口から語られた薄い苦労談と自分のこれまでの人生とが重なってみえます。
十分な愛を受けることが出来ずに大人になった人は現実世界にも沢山いるのだと思います。
自分が当たり前に受けてきた愛を当たり前に受けられなかった人に自分は何が出来るんだろう…
自分が何かしたら物事が好転する、という考え方自体が当たり前を当たり前に思える自分のエゴなのかもしれない…
そんなことを沢山考えさせられる物語でした。
ストーリーとしての展開もとても読み易くて面白かったです。
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愛の矛先や分量が適切じゃなくて、結果的に子供を縛り付けてしまった毒親。
人が言葉や言い方に含ませる繊細な感情を、筆者は完璧に読解してて、痒い所に手が届くというかなんというか、うまく言語化されていてなんかスッキリした!
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愛の呪縛から逃げようとするおはなし。装丁がすきで手に取ったけど、すごいすき。
以下抜粋
私は、母の愛を疑いはしていない。彼女は私を愛していた。そんなことは分かっている。だが、それが何だというのだろう。愛情は、全てを帳消しにする魔法じゃない。
「許すかどうかの選択は、宮田がしていいんだよ。空気とか社会とかが宮田に謝れって言ったって、宮田はそれを無視していい。怒り続けてもいいし、悲しみ続けてもいい。何を選ぶかは、 宮田の持ってる権利だから」
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「愛されなくても別に
他人から愛されなくてはいけないなんて
呪いみたいなもんだよ」
まさにその通り、愛は呪縛だ。
愛とか幸せとか不幸は
とっても個人的なもの。
他人には痛みは解らない。
親も子供も
必死に生きている
特に子供は
親のために搾取されなくていい
ひどい親は時には捨てていい
愛されなくても不幸じゃない
世の中の幸せの形だけが
幸せじゃない
そんな提案に
勇気を貰える人もいるかも
知れない
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血のつながりが、家族なのか。家族であれば、互いに愛情を持って接するものなのか。であれば、愛情とはなんなのか…。血のつながりを家族と定義する社会、その”ジョーシキ”を社会に強制していた自分にも気づかされます。
登場人物の語り口を通して、繊細に描かれる苦悩。人々の内面を深く丁寧に掘り下げる中で、これまで気付かなかった”愛”の形を知ることができたような気もします。
家族とは、愛情とは。最も根源的な部分に焦点を当て、今一度考えさせてくれる作品です。