イスラム世界の英雄とされるサラディンの本格的な評伝です!
2020/03/26 13:14
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、12世紀から13世紀にかけてエジプト、シリア、イエメンなどの地域を支配下に治めたスンナ派のイスラーム王朝であるアイユーブ朝の創始者サラディンについて書かれた評伝です。彼は、現イラク北部のティクリート出身で、アルメニアのクルド人一族の出自ですが、エジプトとシリアを支配下に置き、エルサレム王国を1187年に破り、さらに第3回十字軍を破ったことから、イスラム世界の英雄とされている人物です。同書では、この英雄の生涯を分かり易く解説します。内容構成は、「サラディンの生きた時代」、「修行時代」、「エジプトの若きスルタン」、「カイロからエルサレムへ」、「サラディン以後」といった時系列に記述されており、非常に読み易くなっています。
等身大のサラディン
2024/05/09 20:44
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投稿者:福原京だるま - この投稿者のレビュー一覧を見る
サラディンといえば聖地を奪回したイスラムの英雄、敵の十字軍からも評価される人格といった逸話が有名だが同時代資料からどう読み解けるか実際のサラディンについてよくわかる本。後世の美化されたような完全無欠なわけではないがそこも含めて魅力的な人物と感じた。
ヨーロッパ側からではない視点
2025/03/01 09:52
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投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
アラブが見た十字軍_アミン マアルーフも読んだことがあるが、ヨーロッパ側からではない視点で描きだされた作品である。塩野七生の十字軍物語をもう一度読みながら、この作品を読んでみた。筆力に関しては、歴史学者と小説作家との違いを見せつけられた思いがした。もっともこれは脚色が許されている小説作家と、正確性が生命線の歴史学者とを、読みやすさ 面白さの視点で比較するのは不公正であろう。
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サラディン研究で非常に役に立った。
むっちゃ熱狂して2日で読了。読んでいるのが本当に面白かった。
内容は実に冷静な分析で
英雄視しがちなサラディンを客観的に叙述している。
最後の方ではエピソードを通してサラディンの人間性を垣間見れ
そこを取り上げる著者のユーモアさを感じた。
2011年春に著者・佐藤次高先生が亡くなったとのことで
ご冥福とお祈りすると共に、このような名著を残してくれたことに感謝します。
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塩野七生の十字軍物語3を読んでたので、同時代のイスラム側(というかサラディン)視点で読めて良かった。偉大な英雄も、あちらこちらに気を使いながらぎりぎり政治的なバランスをとって動いてたのね。内容は、ページ数も少なくあっさりしすぎて物足りなかった。読みものとしてはよろしくない。構成がちぐはぐで読みにくい。
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読了。
イスラームの「英雄」サラディン ~十字軍と戦った男~ / 佐藤次高
イスラームの英雄と言われるサラディンを追ったサラディン伝です。
十字軍系の本を読んで、西洋が必ずしも正ではないと知った後に、イスラーム側からの本「アラブが見た十字軍」を読み、サラディンの特化した物語が読んでみたいなと思って買った本でございまして、すごーく長い間積んでありました...w
イスラムからも英雄と呼ばれ、西洋からも英雄と呼ばれる所以などを見たく、
またCivilization4の動画を前にみてて、「絶望サラディン」と呼ばれるくらいサラディンは弱いらしく(Civilization4はやったことはない)
そのイメージを引きずりながらのサラディンとはどんな人かを見たくなった次第です。
サラディンは名前ではなく、尊称でサラーフ・アッディーン(宗教の救い)の西洋訛りらしい。驚きです。
名前じゃなかったのかよ!という思いです。
ユースフらしいですね。
後に確立するアイユーブ朝のアイユーブは父ちゃんの名前です。
サラディンの本名にもミドルネームの何個か目にアイユーブが入ってるはずですね。
シリア国内での戦い、エジプトへの遠征、十字軍との戦い。なかなか人生すべて戦いみたいなど真ん中な地域であり時代でありますね。おつかれさまです。
たいへん面白く読みました。
アルスラーン二世とか名前だけ出てきたので、アルスラーンっていう人いるんだ...と再確認しましたw
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ヨーロッパでも英雄として扱われるサラディンの真の姿に迫ることを目的とした本。伝説や後世の記述抜きで考察している。
サラディンの行動は実際のところ寛容と言えるのか、サラディン独自の性格によるものなのかということに迫っていて興味深かった。
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少年ジャンプの主人公!?のようなサラディンの生涯をエピーソードを交えつつ、当時の社会情勢、文化など多角的な視点で解説した本。
十字軍はキリスト教徒vsイスラム教徒の対立だけでなく、十字軍とムスリムが手を組んで対抗勢力のムスリムと戦ったこと、サラディンがヴェネツィアなどのイタリア諸都市と協約を結んで鉄や木材を調達していたなど、当時一筋縄ではいかない社会状況が戦争に密接に絡んでいることが分かる。
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イスラームの「英雄」と呼ばれるサラディン。エルサレムを奪回し、十字軍と戦った人物という程度の知識しか持っていなかったので、もう少し詳しくその生涯や治績等を知りたかったことから、読んでみたもの。
サラディンは1100年代の人であるが、アラビア語の伝記史料が何点もあり、後半生についてはかなり詳しく記録があるということに先ずは驚いた。そうした史料を元に著者はサラディンの行動を跡付けていく。
メインは、サラディンが指導者、支配者へと駆け上がっていく過程や統治者として行ったこと、また、軍事面での動きが描かれるのだが、それらとともに、生地タクリート、子ども時代を過ごしたバールベック、少年時代から30代始めを父とともに過ごしたダマスクス、政権を取りアイユーブ朝を創設したエジプトの都カイロといった主要な町の様相が簡潔に描かれる。また、イクタ―制や軍団編成といった当時の政治経済、軍事等の状況が説明される。
サラディンは、分裂していたイスラーム世界を統一した訳だが、エジプトとシリア地域の関係、ジハードというものの意義、十字軍国家との単純ではない関係など、いろいろと学ぶべきことが多かった。